付与術師は聖剣を作りたい……。

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乙女?の意地は……。

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「すみません、取り乱しました。」
 顔を真っ赤にしながらそう言ってアルフレッドから離れるアリス。
 しっかりしているとはいえ、まだ成人に満たない子供だ。
 役割の重さに加え、魔族という自分ではどうしようもない存在が現れたのだから、取り乱したりするのは当然だ。
 むしろ、これだけの短時間で立ち直る方がおかしいと言える。
 実際、アリスは立ち直ったわけでなく、ただ生来の生真面目な性格と、神託を受けた姫巫女としての役割を全うしなければという使命感で、気力を奮い立たせているだけに過ぎなかった。

「気にするなよ、それよりこの部屋とあっちの部屋を調べよう。出来るだけ金目の物を優先でな。」
「金目の物って……。」
 ミリアがジト目で睨んでくる。
「金がなきゃ宿に泊まれないぞ。それとも今夜も野宿でいいか?」
「アリス!隠されているものないっ?よく探すのよっ!」
 野宿と聞いて、ミリアは即座に手のひらを返し、アリスを伴って部屋中を調べ出す。
 部屋の中は二人に任せ、アルフレッドは本棚を調べる。

 初級の魔術書に錬金術の手引書、各種魔法陣の解説書に調合書など、各種方面にわたっているが、それ程珍しい物はない。
 一通り本棚を調べ、大した物が無い事だけ確認してから奥の部屋へ向かう。
 ガイナックスがいたと思われる部屋だ。
「まぁ、先を越されたわけだから碌な物はないだろうけどな。」
 呟きながら部屋の中に入る。
 パッと見た感じは、先程の部屋と遜色ない。
「ん?」
 アルフレッドは、足元に本が転がっているのに気づき、その本を手に取る。
「召喚術……?」
 アルフレッドはその本を収納バックに入れ、他にないか本棚を探す。
 そして、何冊か気になる本を手に取り、収納にしまっていく。

「アルー、そっちはどう?」
 本棚の後、机回りなどあらかた調べ終えたところで、ミリアから声がかかる。
「一通りは確認した、後は隠されたギミックがないかだけど……。」
「んーっと、この部屋には特に隠されているものはないですよぉ。ただ……。」
 部屋に入ってきたアリスが一通り眺めてからそう言う。
「何か気になるのか?」
「気になるというか……なんか、こう、遠くの方で引っかかる感じが……気のせいかもしれないけど……。」
「まぁ、取りあえずは街に戻ろうか。」
 アリスの何か引っかかるという事が気になるが、このまま調査を続けるより、一度ゆっくり休んでから仕切り直した方がいいだろう。

 ◇

「えっと、一部屋なんですかぁ。」
「お金ないから仕方がないでしょ。」
「でもぉ……お姉さまはいいんですかぁ……そのぉ、男の人と同じ部屋って……。」
「いつもの事だし、今更でしょ。」
「そ、それは、そうなのですが……。」
 顔を真っ赤にして俯くアリス。

 アルフレッドがギルドで手続きしている間に、ミリアとアリスで今夜の宿を決めに来ているのだが、ミリアが普通に一部屋で話を進めているのでびっくりしているのだった。
「大体いつも……って、あ、そうか、三人で宿に泊まるのは初めてよね。」
 ミルトの街を出てからかなりの日数が過ぎているが、まともに宿に泊まるのが初めてだったことにミリアが気付く。
「そうなのですよ。だから……。」 
「心配しなくても大丈夫よ。」
 ミリアは安心させるように声をかける。
「いえ、心配はしていないのですが、ただ、その……やっぱり初めては二人での方が……三人でというのはちょっと不安で……はぐぅ。」
 真っ赤になりながらそう言うアリスの頭に拳骨をおとす。

「何考えてるのよっ!」
「夜の事ですよぉ。私は初めてなので、最初はお姉さまが遠慮してくださるとぉ……って痛いですぅ!」
「そう言うのはないからっ!」
 再度拳骨を落とすミリアの顔も赤く染まっている。
「でも、でもぉ、男の人と一緒なんですよぉ?それともアル様は女の人に興味がないんですかぁ?」
「そ、そんな事はない……と思うけどぉ……たぶん。」
「お姉さまはそれでいいんですかぁ?」
「そ、それは……まぁ、私だって、たまには手を出してくれてもとか思うけど……でも私胸ないし……。」
 アリスの反撃に、タジタジと成りつつも、つい本音を漏らすミリア。
「豊穣の女神のミルファース様もおっしゃっています。『愛する男性の全てを受け止め、愛を捧げる事に尽力しなさい』と。つまり、愛の為ならあらゆる手段が正当化されるのですよぉ。」
「えっと、それはちょっと違うんじゃぁ……。」
「違わないのですよ!よーぉし、今夜アル様を攻め落としますよ、お姉さま。」
「あ、あのね、ちょっと、アリスちゃん、落ち着いて、ね、ね?」
 何故かおかしな方向に全力で向かおうとしているアリスを宥めるミリア。

「アンタらさぁ、ヤるだのヤらないだのはいいけど、そこで騒がれると迷惑なんだけどね。」
 宿の女将さんにそう言われて、ここが入り口のカウンターだという事に気づくミリアとアリス。
 周りには宿泊や食事に来ている客がして、ミリアとアリスを遠巻きにしながら興味深そうに見ている。
「えっと、あの、その……部屋に行きますね。」
 注目されて恥ずかしくなったミリアとアリスはその場から逃げ出す事に決める。
「あいよ。あと防音結界はいるかい?銅貨10枚だけどね。ウチは壁が薄いからねぇ。」
「いりませんっ!」
 ニヤニヤしながらグッズを売りつけようとする女将さんと、周りの客の視線から逃げるように部屋へ急ぐミリアとアリスだった。

「はぁ……お前らアホだろ?」
 宿に戻り、事の顛末を聞いたアルフレッドが、溜息と共にそう言う。
「だって……。」
「こんなのに銅貨10枚って、明らかにボッタクリだろ?」
「って、ソッチっ!」
 防音結界の魔道具を弄びながら言うアルフレッドに思わずツッコむミリア。
「大体防音結界なら山ほどあるんだぞ。」
 そう言いながら収納から幾つかの小石を取り出すアルフレッド。

「まぁ、いいか。それより明日からの事について相談だ。」
 折角なので、と防音結界を作動させながら話し出すアルフレッド。
「街中で幾つか噂話を集めて来たんだけどな……。」
 アルフレッドは、そう前置きをして、集めてきた話とそこから導き出される推測を二人に語る。


「はっきりしない話ね。」
 アルフレッドの話を聞き終えた後ミリアがそう言う。
「まぁ、あくまでも噂だからな。」
 アルフレッドも、ミリアの言葉に素直に頷く。
「つまり、私達は明日からその情報の裏付けを取ればいいって事ですね。」
 アリスが確認してくる。
「そういう事だ。ただ、さっきも言ったように隣りの領主の息がかかった者たちが入り込んできているから、気をつけてな。」
「それは大丈夫だと思いますぅ。ガルドの手のものかどうかは、多分見ればわかると思うのですよぉ。」
 アリスは自分の瞳を指しながらそう告げる。
「そんなことまでわかるの?」
「えぇ、表立って出てきてないって事は、ガルドの関係者という事を『隠して』いる訳ですから条件の定義としては成立するのですよぉ。」
 訊ねてくるミリアに対し、少し自慢げに話すアリス。
「はぁ……もう、何でもありね。」
「だからと言って過信しないようにな。」
 がっくりと肩を落とすミリアの頭を「まぁまぁ」と言いながら嬉しそうに撫で回すアリスの姿にほっこりしながらも、一応釘を刺しておくアルフレッド。

「じゃぁ、明日からはそう言う事でぇ、私達湯浴みしてきますねぇ。」
 話が一段落したところで、アリスはそう言って、ミリアと共に部屋を出て行った。
 アルフレッドは二人を見送ると、近くのベッドに横になる。
 反対側にもベッドがあるから、ミリアたちはそっちを使えばいいだろう。

 ベッドに横たわったまま、アルフレッドは遺跡での事を思い出す。
 ガイナックスは、あの様子からすると独自の目的がありそうだ。
 ガルドに力を貸しているのは、その目的とガルドの目的が一致するか、もしくは目晦ましに使えると考えているのだろう。
 ガルドだけに注目し過ぎていると、ガイナックスの本当の目的が誤魔化されるかもしれない。
 だから視野を広くしておかないと……等と考えているうちに段々と瞼が重くなってくる。
 そういえば野営続きで余り寝ていなかったなぁ、等と考えながら襲い来る睡魔に身を委ねるアルフレッドだった。

 ◇ ◇ ◇

「あぁ!なんて人ですかぁ!乙女の湯浴みを待たずに寝ちゃってますよぉ!」
「アリスちゃん、しぃーっ。アルが起きるでしょ!」
「起こせばいいんですぅ……いえ、これはこれでアリですねぇ。」
 ニヤリと笑うアリスの顔を見て思わず後ずさるミリア。
「こんな魅力的な乙女と同宿しておいて何もないなんて、女神様が許してもこのアリスちゃんが許さないのですよ。」
「イヤイヤ、女神様が許すならそれでいいじゃない。ね、アリスちゃん落ち着こ?」
「落ち着いてますよぉ。まずはお疲れのアル様を起こすのは忍びないのでぇ……天にあまねく女神様。彼の者に安らかなる眠りを……『スリーピング!』」
 アリスの神聖魔法の光がアルフレッドの身体を包み込み、深い眠りへと誘う。
「フッフッフ……これで朝まで目覚めませんよぉ。アル様、覚悟してくださいねぇ、私とお姉さまを大人の階段に誘ってもらうのですよぉ。」
「アリスちゃん、怖い顔になってるよ。無理矢理なんてよくないよ。ね、ねっ。」
「お姉さま今更何を言ってるんですかぁ。早くそっちを脱がせてくださいよぉ。」
 グズグズいうミリアに対してテキパキと指示を出していくアリス。

 実は彼女は少し怒っていた。
 アルフレッドと同じ部屋で寝泊まりする事に不安が無いわけがなく、いくらミリアがそう言うことは無いと言っても信じられるものではなかった。
 ただ、その不安の内容はアルフレッドに襲われるという事に対する不安ではない。
 アリスはアルフレッドとならいいとも思っていたからだ。
 これまでのことで、アルフレッドの人と成りは理解しているし、信用に足る人物だと言うことも理解した。
 それに何より、優しく、何があっても守ってくれるという安心感と居心地の良さ。
 離れたくない、ずっと一緒にいたいと言う想いが、ここ最近のアリスの心を占めている。
 だから同じ部屋で寝泊まりすると聞いて、不安と期待が入り交じった妙な気分になり落ち着かなかった。

 貴族の常として、閨での行為におけるレクチャーを受けてはいるが、果たしてそれで満足してもらえるのか?特に胸の大きさはミリアよりやや小さめであり、ミリア自身の様子や、魔族との会話等から推測するに、アルフレッドはミリアの胸に満足していないのではないかと伺える。
 果たして大丈夫なのだろうか?

 アリスの不安は、つまりアルフレッドに満足してもらえるか?と言う一言に尽きるのだった。
 そんな期待と不安に苛めながら、体の隅々まで念入りに磨いて来たというのに、当の本人はすでに眠っていたという……これは普通に怒っていい案件だとアリスは思う。

「えっとね、アリスちゃん。こういうのは良くないと思うなぁ。」
「お姉さま、何言ってるんですかっ!期待させておいて先に寝てるんですよ!乙女の純情を弄んでいるのですよ、この男はっ!」
「でもいつものことだし……。」
「お姉さまがそんなんだから、世の中の男共がつけあがるのですよっ!」
「っていわれてもぉ……それに力づくは無理だと思うよぉ……。」
「いえっ!これぐらいじゃ諦めませんよぉ。本気のアリスちゃんの怖さを骨の髄まで叩き込むのですよぉ。」
「……無理だと思うけどね。」
「乙女パワーを舐めないでよねっ!」
 こうして、アリスによるオトナの階段チャレンジが一晩中続けられるのだった。
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