ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー?~

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腹の探り合いとか……ムリっ!

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 停戦及び和平交渉……アシュラム王国第王女、アイリス=イリアーノの名の下にグランベルク王国に申し入れがあったのは、国境付近での先端が開かれてから10日後の事だった。
 最初は、偽報を疑ったグランベルク王国側だったが、時を同じくして届けられたグランベルク第一王女であり、姫将軍と名高いクリスティラ王女からの知らせが届くと、がぜん真実味が帯び、国境での争いは一時停戦、軍を国境手前まで戻した後、王宮では連日御前会議が繰り返されていた。

 「かような申し入れを受ける必要はありませんぞ!魔王とやらが居なくなったのであれば好機!この勢いで王都に攻めあがるべきです!」
 「その通りだっ!最初に攻めてきたのは向うだ。和平交渉とやらは王都を押さえてから行うべきでありましょう。」

 「待ってください。姫様からの手紙にはこうあります。『これ以上の戦乱は国を疲弊させる。アシュラムにもまだ戦力が残っている、我が国が有利なうちに手を結ぶべし。』と。」
 「さよう!それに、彼のアシュラムの事だ。我らの知らぬ技術を隠し持っている事を忘れてはならない。」

 グランベルク王国の内部は、このまま押し切る派と停戦を受け入れ有利に交渉を進める派に別れて紛糾し、その為交渉そのものが停滞することとなっていた。

 ◇

 「お姉ちゃ……いえ、姉上、グランベルク王国から返答はありましたか?」
 「ダニエル……国王様、返答はまだでございますが、こちらの内容についてご決済をお願いします。」
 「……分かりました……これで。」 
 ダニエルは手渡された書類に目を通すと、しばし考えた後に指示をつけて返してくる。
 そして側近たちを部屋から追い出すと、雰囲気を和らげてアイリスの方へ向き直る。

 「姉上、グランベルク王国は和平に応じてくれるでしょうか?」
 アイリスはダニエルの傍によると、その震える肩に優しく手を置く。
 「大丈夫ですよ。あなたには重荷を背負わせて申し訳ないと思っているわ。だからこそ、今回の事については私達が何とかしますから、あなたはこの国の将来さきの事だけ考えて。」
 「姉上……ぼ……私には魔王が悪だったとは思えないのです。彼は、私に色々な事を教えてくれました。この国を取り巻く情勢と国の在り方、家臣たちの各々の考えとガズェルの台頭が成し遂げたモノ……その成り立ちと意味などについて……。彼の言う事は全てが清廉潔白なものではありませんでしたが……彼はこういったんです『清濁併せ飲み、その上で自身における決断が必要だ』と。」
 「……あの魔王サマは9歳の子供に何を……。」
 アイリスが頭を抱える。
 「姉上、子供扱いはやめてください。」
 アイリスの呟きを聞き咎めたダニエルが文句を言う。
 「そうね、ゴメンナサイ。……まぁ魔王の事はともかく全ての元凶はガズェルにあります。後始末は任せて置けば大丈夫ですよ……結局、彼に甘えることになってしまいましたが。」

 アイリスは、今はここに居ない彼を想い遠くを見つめる。
 「はい、信じています。彼なら姉上を泣かせるような真似はしないって事をね。」
 ダニエルが笑って言うと、アイリスの顔が一瞬にして真っ赤に染まる。
 「お姉ちゃんを揶揄うんじゃないの、もぉー。」
 アシュラム王宮の執務室には、ここの所なかった暖かく柔らかい雰囲気と、笑い声に包まれた。

 ◇

 「……『シンジ様お任せすれば、全て解決ですわ』……とか言ってるんじゃないの?あのお姫サマは。」
 「あー言ってそうですぅ。ついでに『私もついて行きたかったですわ』とか言ってるかもぉ?」
 エルとリディアが、ここに居ないアイリスをネタにして笑い合っている。
 「リディアには、アイリスを手伝ってもらいたかったんだけどな。」
 「いやですぅ。アイリスには悪いけど、シンジさんと一緒にいる事を選ぶのですよ。」
 リディアがしがみ付いてくる……が、俺の手元に目をやり、そちらに興味を移す。
 「シンジさん、それって……。」
 「あぁ、魔王の遺してくれたモノ……厄介なものを押し付けやがって。」
 「どういうものなの?」
 俺の言葉に、エルも興味を示したようで、それを見つめながら訊ねてくる。
 「一言でいえば宝箱……いや、びっくり箱かな。」
 
 魔王とミィからもらった魔石……それに刻み込まれた魔法陣を解析すると出てきたのは、簡単に言えば情報だった。
 正確に言えば情報が刻み込まれた魔石……魔力を流すと頭の中に膨大な情報のインデックスが浮かび上がり、知りたい情報のインデックスを選択することで、その情報が流れ込んでくるというものだ。
 ただあまりにも膨大な情報なので、一つの情報を精査するのにも、膨大な魔力と精神力、時間を消費するのが難点だ。
 一応必要な情報だけを紙に書き出したり、別の魔石に封じ込める術式が合ったので、それらを駆使して今回の件に関する情報だけでもと、纏めている所なのだが……。

 「私も最初は信じられませんでしたのよ。」
 クリスが会話に加わってくる。
 「あんなことが公表されたら、グランベルク軍の受ける被害は戦争で被る被害の比ではありませんわ。」
 「どういう事?」
 「今回の件は、グランベルク側にも非があったって事だよ。」
 疑問符を頭の上に浮かべているエルとリディアに、書類を渡しながら説明する。
 
 今回のガズェルのの暴走の原因は、グランベルグにいた頃非道な実験を繰り返していたという事で国を追放、逆恨みしたガズェルがグランベルグに仕返しをするために、アシュラム王国を乗っ取り利用した、と言うのが定説になってはいるが、魔王にもたらされた資料によれば、そのガズェルを唆し、資金や技術提供をしていたものがグランベルク内にいたという事だった。
 しかも、単独ではなくかなりの数に上り、その中にはかなり高位にいる貴族達も含まれていた。 
 この資料では実名までは記載されてはいないが、見る者が見れば、すぐに誰かという事が判明するらしい……事実、クリスが一見しただけで、誰を指すのかがすぐにわかったという事だった。

 「つまり、どういうことですかぁ?」
 リディアには難しかったみたいだった。
 「つまり、グランベルクの一部の者たちがガズェルを使って、アシュラム攻め入る口実を作らせていたって事だよ。」
 「えぇっ!じゃぁ、アイリスがあんな悲しい目に合ったのは、元々はグランベルグの所為だって言うの?」
 「全部がそう言うわけではありませんわよ。」
 リディアの責めるような言葉に、クリスが冷静に返している。

 「そう、ただ要因の一部であることには間違いない。」
 俺はリディアを宥めつつ、その場にいる皆に聞こえる様に話す。
 「どれだけ優秀だったかは知らないが、ガズェル個人の力だけでは、あんな短時間でアシュラム国内に入り込みのさばる事なんかできなかった。誰が見ても、協力者がいたと考える方が自然だろう?」
 俺はそう言いながらクリスの横に座る人物に目を向ける。
 「ある意味自業自得ってわけね。」
 エルも同じ方に視線を向ける。
 「あ、知ってますぅ。『マッチポンプ』って言うんですよねぇ。」
 リディアが止めを刺すように言う。
 ……うーん、リディアの場合、天然なのか計算づくなのか分からないところが怖いんだが?

 「……という事なんですが、いかがでしょうか?」
 俺はそう言ってクリスの横に座る人物……グランベルク王国、フォーマルハウト国王に声をかける。
 「……お嬢さん方、余り年寄りを苛めないでくれ。」
 国王は、とりあえず俺の言葉をスルーしようとしたが、エルとリディアだけでなくクリスにまで睨まれて、しゅんと押し黙る。
 国王の後ろに座っている重臣達の間からも騒めきが大きくなる。

 「……交渉に入ろうか。」
 しばらくして、落ち着きを取り戻した国王が声をかけてくる。
 「国王様、間違えてもらっては困りますよ。私はアシュラム国とは何の関係もない一介の冒険者です。交渉は後で王族同士でやっていただきたいですね。」
 「ぬけぬけと、よく言う……では其方は何しにここへ来た?」
 国王の視線を躱しながら俺は答える。
 「クリスを送ってきたついでに、ちょっとしたお節介かな?」

 詭弁だって事は分かっているが、ここでは建前と言うのが必要らしい。
 そして、その建前だけを振りかざされると、アシュラム王国がかなり困窮することになるが、それは俺の本意ではない。
 だから、交渉の為の材料を集めて根回しにした。
 アイリスが下出に出なくて済むように、あくまでも対等な交渉の場を整えるために。

 「本当に甘い人ですわね。」
 俺の本音を知っているクリスが、ぼそっと呟く。
 「ほっとけ。俺はただ泣かせたくないだけだよ。」
 クリスに言い返しながら、別の書類を渡す。
 「これは?」
 「アイリスから預かった、交渉内容の草案だよ。」
 「……成程。流石はアイリスさんですわね、正直舐めていましたわ。」
 クリスは書類に目を通すと、そう言いながら書類に何かを書き込み国王へと回す。
 
 「『一つ、互いの責を相殺するとして、互いに賠償を求めず国境は今まで通りとする事。』
 『一つ、西側領地に関して、アシュラムに帰順を望む声も多い為、相応の代価をもってして譲渡を望む。』
 最後に今回の事に関しては不問とし、今後もより良き関係を望む……か。」
 「単純明快でいいだろ?」
 俺の言葉に、王国の重臣たちの騒めきが大きくなる。

 「何を勝手な!大体攻めてきたのはアシュラムからだろ。それの賠償もせずに無かったことにしましょうとは、虫が良いにも程が有る!」
 重臣の一人がそう喚く。
 ……アレは、クリスからもらったリストの中に入っていた奴だな。
 「アシュラム側から言わせれば、グランベルクの姦計により国王夫妻が殺され、更に内乱を煽った挙句に戦争を仕掛けざるを得ない状況に追い込まれた事を不問にするという、最大の譲歩をしていると思うんですがね?」
 俺の言葉にその男は黙り込み、他に数人の重臣達が顔を背けている。

 「まぁ、そう言う事だからよく考えてくれよ。」
 俺はクリスに視線を向けて、この場から退出することを告げる。
 クリスはやれやれと言う様に、呆れたような視線を向け、部屋のドアを開けてくれる。
 「あ、そうそう、ヘンな事は考えないほうがいいぞ。……命が惜しかったらな。」
 俺はそれだけを言い残して部屋から出ていく。
 
 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 「ふぅ……厄介な問題を残してくれたな。それに、あれほどの威圧感……以前の彼からは考えられないな。」
 「仮にも魔王とやり合ったわけですからね。」
 「しかし、本当に魔王は存在したのか?いや、お前の言う事を信じないわけではないんだが……。」
 「アレは間違いなく魔王でしたわ。……もし、彼らがいなければ遠からずこの国は灰燼となっていたでしょうね。」 
 私はちらりと、背後の重臣達を見る。
 制御できない力は身を亡ぼすというのは本当の事だわ。

 「そう言う意味ではアイリス王女に助けられましたわね。……元が彼女の責任感から来ているものだとしても、私達は彼女に最大の敬意と礼を尽くすべきだと思いますわ。」
 「フム……そうだな。」
 お父様も、今回の件で色々考える事があったらしく、彼らの出してきた草案をそのまま受け入れるつもりみたいです。
 ただ、このまま彼らの思惑通りというのは面白くないですわね。
 「お父様、こういうのはどうでしょうか……。」
 だから私は、ある案をお父様に進言する。
 「フム、成程な……それは面白いかもしれぬ。」
 お父様がニヤリと笑う。
 私も微笑みで応える。

 シンジ様、世の中あなたの思い通りになるとは思わない事ですわ。

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