ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー?~

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政治家って本当にタヌキだよね……って、なんでタヌキなんだろう?

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 ……解せん。
 なんでこうなった。
 周りではにこやかな顔で俺を見てくるエル、リディアアイリスの顔がある。
 グランベルグ国王の横に座るクリスを見ると、「してやったり!」と言わんばかりの微笑みを投げかけてくる。

 「では、反対意見も無い様なので、これで合意という事でよろしいかな?」
 国王が交渉の場を治めようとする。
 「ちょ、ちょっと……むぐっ。」
 俺は反対の声をあげようとするが、その口をリディアが手で塞ぐ。
 (言いたいことはわかりますけどぉ、今は黙っててくださいねぇ……それとも、唇で塞がれる方がお好きですかぁ?)
 小悪魔のような笑顔でそう言われては、黙るよりほかなかった。
 
 結局、俺が反対の声をあげられずにいるまま、和平交渉は恙無く終わり、両国の間に平和が戻る事になる。
 「じゃぁ帰りましょうか?」
 アイリスが俺達の方へ戻ってくる。
 「そうそう、新しい領地の名前どうしますか?考えておいてくださいね。」
 あなたの領地ですからね、とアイリスがにこやかに告げる。
 
 そう、俺はこの時点をもってして、アシュラム王国の西側に位置する広大な領地の領主となったのだった。

 ◇ 

 「お前ら、知ってただろ?」
 アシュラム王国の王宮の中にある中庭に面したテラスで、俺はアイリス達に問いかけた。
 
 和平交渉は、グランベルク側の国境近くを治める領主の館で行われた。
 王都では距離があり過ぎる事と、アシュラム国の近くで行う事でグランベルク側なりの誠意を見せたという事らしい。
 
 俺がクリスを送るという名目で、根回しをしに行ってから、和平交渉の席が設けられるまでに3週間ほどの時間が必要だった。
 草案の内容で揉めていたという事もあったが、重臣や貴族たちが何者かに襲われるという事件が相次いで起きた為、それらの後処理に時間を要した為だ。

 襲われた貴族たちは、最初は何もなかったと言い張っていたが、王宮に匿名で、物資の横領や国内での悪事の証拠など、握りつぶしたはずの情報が証拠と共に届けられたことで事件が明るみに出たのだった。

 まぁ、襲われた重臣や貴族たちが、揃って諸々よからぬことを企んでいた事が後処理に時間を要することになった原因なんだが、グランベルグにとってしてみれば、思わぬところで国内の掃除が出来たから良かったのではないかと思う。

 会談に先立って、その事を報告してきたクリスの眼が、何か聞きたそうにしていた気もするが、きっと気のせいだろう。
 結局、和平交渉の内容としては以下のように決まった。

 『今回の戦争に於いては、双方に非があると互いに認めたうえで、お互いに責任の有無や賠償責任を問わないことにする。』
 『今後の両国の絆を深めるためにも、関税の見直し、技術交流などを積極的に見直すものとする。』
 『お互いの主義主張を認め、軍事においては不可侵・同盟の条約を結ぶ事とする。』
 『戦時に於いてアシュラム国が接収した西側領土は一度グランベルグに返還。その後、自治領として、戦争終結における一番の功労者に与えるものとする。』
 『西側自治領においては、アシュラム・グランベルクの両国が最大限の援助を行い、得られる利益においては、自治領の代表と話し合いの上取り決めをする。』

 これだけ見れば、アシュラム国にとっては大変満足のいく結果になったと思う。
 戦後グランベルクの対応に嫌気を指し、帰順を求めてきていた西側の領土に関しても、元々はグランベルクのものであるので返還することに問題はない。
 ただ、その地に暮らす人々の気持ちが問題だが、これも援助を行うという一文があるうえ、新たなる代表と話し合えば済む事だけなので、何の問題もなかった。
 ……そう、グランベルクの国王が、次の事を言い出すまでは。

 「では、これより終戦における功労者の発表を行いたいと思う。この場で行うのは西側領土に関係してくる為、アシュラム王国としても気になる事だと思うのでご理解いただきたい。」
 フォーマルハウト国王の言葉に、ダニエルやアイリスを始めアシュラムから来た者たちが頷く。
 「Aランク冒険者シンジをこの戦争終結における最大の貢献者として、グランベルク国王フォーマルハウトの名に於いて認めるものとする。尚冒険者シンジには今回の功により子爵の位を授け、西側領地を与えるものとする。」
 国王がそう告げると、場は突然騒がしくなる。
 一部懸念の声があったが、殆どは賞賛と羨望、後はどう近付くかを相談している声だった。
 「ちょっ、ちょっと……むぐっ。」
 俺の声はリディアによって止められ「詳細は後程」と言うクリスの言葉に、俺は引かざるを得なかった。

 その後も、新しい領土についての諸々の些事に追われ、ようやく落ち着いて文句が言えるようになったのが、アシュラムに戻ってきた今と言うわけである。

 「だって、シンジが知ったら絶対止めようとするでしょ?」
 「当たり前だっ!」
 「だからクリスさんにも、バレない様にって念押しされていたのですよぉ。」
 リディアが申し訳なさそうにそう言った。
 どうやら、俺がグランベルク国内の掃除をしている間に、クリスはクリスで色々と根回しをしていたみたいだった。

 「シンジ様も、あの町の事は気にかけておりましたから……ダメでしたか?」
 アイリスが目を潤ませて俺を見上げてくる。
 クッ……例え計算だと分かっていても、そんな顔をされては文句が言えない。

 「……お前ら、絶対後悔するぞ。」
 俺はそう告げるのが精一杯だった。
 「「「後悔なんかしませんよ。」」」
 三人の声が揃う。
 その顔がとても嬉しそうだったので、まいっか、と思う事にする。
 領地経営などやった事はないが、みんな手伝ってくれるとのことだったので、面倒な事は押し付けようと心に誓うのだった。

 ◇

 『ノイエ・ミーアラント自治領国』
 それが俺に与えられた領地の名前だ。
 立場上はグランベルクに所属する一領地ではあるが、完全自治権が認められ、領内の事に関しては国王と言えども内政干渉に抵触するなど、殆ど1国に対する扱いとなっている。

 「シンジ様の国ですわ。我が国とも良好なお付き合いをお願いしますね。」
 アイリスが笑いながらそう言ってくる。
 アシュラム王国はダニエル王子が王位を継ぎ、アイリスはその補佐として復興に努めている為、近くに俺の拠点があるのが嬉しいのだという。

 「国と言われてもなぁ……。」
 俺は急ピッチで建築が進められている屋敷を見ながら言う。
 「屋敷よりも先に街の復興の方が大事だと思うんだが?」

 俺の言葉を、通りがかった工夫が聞き咎める。
 「御館様、バカ言っちゃいけませんぜ。御館様の住む所がないのに、どうして我々が安穏と暮らせると思うんですか?」
 男が言うには、領主たる俺が屋敷を構えて居座る事により、初めて安心して生活できるのだという。
 領主が不在=見捨てられると同義らしい。
 「そんなものか?」
 「そんなもんですよ。」
 男は笑いながら作業に戻っていった。

 勿論、屋敷の建築と同時に街の中の復興が進められている。
 指揮を執っているのは、復興した村にいた筈の兵士達と、ニナやオルカをはじめとする、あの村の人々だった。
 グランベルグとの先端が開かれる前、アイリス達が避難を呼びかけた村には、当然あの村も入っていた。
 村人たちはすすめに従って避難してきたのが、偶然にもこの西側の土地だった。
 戦争が終わり、村に戻れるようになったが、この西側を俺が収めると聞いて、村人たちはこぞって移住を懇願してきた。
 
 どうせ復興しなければ暮らせないのだから、同じ作業をするのなら、俺の下で働き、暮らしたいとのことだった。
 それを聞いたアイリスは他の村人たちの意見を取りまとめ、希望するものには移住を認め、残留する者達には復興における優遇措置を与えるなど、為政者として申し分のない働きをしていた。

 ◇

 俺が領主の座に収まって2ヶ月が過ぎた。
 「ふぅ……ここは落ち着きますね。」
 エルが居れたお茶を飲みながらアイリスがそう呟く。
 最近、エルはお茶に凝り始めて、こうして自らお茶を入れてくれる。

 「アイリス、暇なの?」
 お茶を運んできた後、エルはアイリスの横に座り、撫で回している。
 ここの所、俺も忙しくて構ってやれないから、たまにこうして遊びに来るアイリスは、エルにとってちょうどいい相手だったりする。
 普段はリディアが犠牲相手になっているのだが、今日はベルグシュタットに行っているのでここにはいない。

 「ひまひゃないでふぅ……。」
 ほっぺをムニムニされながら答えるアイリス。
 どことなく嬉しそうなのは……まぁ、いまさらか。

 「難民が流れ込んできて大変なんですよ。後、山脈の問題とか、南の結界の件でグランベルクへの対応とか……シンジ様、助けて下さぃぃぃぃぃーーーー。」
 ようやく解放されたアイリスが、赤くなったほっぺたを擦りながら、半べそになって訴えてくる。
 「しらねぇよ。こっちも忙しくて手伝う暇なんかないんだよ……領主なんてやって無ければ手伝えたかもしれないけどな。」
 俺は少し意地悪く言ってみる。
 
 「うぅ……私のバカ……あの時の判断は人生で二番目の英断だと、何があっても後悔だけはしないと判断した事を後悔してますぅ。」
 アイリスが涙目になって訴えてくる。
 ちなみに、アイリスの人生における一番の英断は、俺と出会った時に総てを話して協力を求めた事だそうだ。
 「よしよし、私がついてるからねー。」
 エルがアイリスを抱きかかえ、頭を撫でている。
 「エルさんが手伝ってくださるのですか?」 
 「それは、イヤ。めんどくさそう。」
 「何でですか!今の流れなら「任せて!」と言う所でしょう。」

 エルとアイリスがじゃれ合っているのを見ながら、俺はお茶に口をつける……平和だなぁ。
 仲良くじゃれ合っている二人だが、アイリスも最近は成長が著しく、以前は抱きかかえると微笑ましい感じだったのが、今ではどことなく背徳的な百合百合しい雰囲気になるので、出来れば控えて欲しいと思うが口には出さない。
 アイリスがアシュラムで頑張っているのはよく知っている。
 きっと気を抜く暇などなく、常に張詰めているのだろう。
 だからこそ、ここでの時間はアイリスにとっても安らげる時間なんだろうと思う。

 「まぁ、似たような問題をこっちも抱えているから、取りあえずこっちに回してくれ。こっちの問題とまとめて振り分けてみるから。」
 アイリスは一瞬きょとんとした顔になり、俺の言った事を理解すると、極上の微笑みを見せる。」
 「ハイ、分りました。やっぱりシンジ様は優しくて頼りになります。」
 エルの拘束から抜け出し、俺の横に来てすり寄ってくる。
 「あー、アイリス抜け駆け禁止!」
 「エルさん、向こう側が空いてますわよ?」
 エルの言葉を軽く受け流すアイリス。
 エルも、アイリスに対抗するよりは空いている方を取った方がいいと判断して、逆側の俺の横に来て腕を絡めてくる。

 最近はこんな感じで狡猾さを身に着けつつあるのが、成長したと喜ぶべきなのか、素直なアイリスはどこに行ったと嘆くべきなのか……。
 「後、南の結界については全部ガズェルと魔王の所為にして置け。今解析中だけど暴発の危険もあってヘタに触れない。危険が大きすぎるのでグランベルク軍は近づかない様にって、適当に言っておけばいいよ。」

 南の国境沿いの結界は、実際に魔王かガズェルが仕掛けたものだ。
 アシュラムを結界で守り、一方的に他国への侵略をする……そんなことを考えていたのだろうが、結局は結界が作動する前に戦争は終わってしまった。
 ……まぁ、それを見つけて作動させてしまったのは俺なんだが。

 どうせ結界が作動するなら、と双方向での行き来を制限しておいた。
 これによって、この結界が作動している限り、アシュラムとグランベルグは互いに兵を送ることが出来なくなり、ある意味『相互不可侵』に助力してると言っていいかもしれない……と勝手に思っておく。

 「東の山脈の件は、今リディアがベルグシュタットに交渉に行っているから、明日にでも解決するよ。」
 俺はそう言ってアイリスの頭を撫でてやる。
 「やっぱりシンジ様は優しいですね。」
 「まぁ、山脈は俺の土地だからな。」
 
 「だからと言って、全て丸投げは酷いと思うのですぅ。」
 突然背後から声を掛けられる。
 「お帰り、リディア。早かったな。」
 「もぉー、大変だったんですからねっ。」
 リディアは、無理矢理俺の膝に上り甘えてくる。
 「ハイハイ、ありがとうな。」
 俺はリディアの頭を撫でて労う。
 
 「本当にもぉ―、シンジさんは私の話を聞く義務がありますぅ!」
 そう言ってリディアは、苦労話を始めるのだった。

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