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第十五夜(2)
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恭介が、芽衣とバイト終わりに向かったのは、スーパー裏手にあるファストフード店だった。
公園のような2人きりになってしまう場所よりは、人目もあって明るい店のほうがいいだろうと、恭介なりに気を利かせたつもりだ。
夕飯時とあって店内はそれなりに混んでいる。ちょうど空いていた、窓際のカウンター席に並んで座る。
幹線道路に面していて、地下鉄の出入口もすぐ近くにあるため、車も人も交通量が多いのがガラス越しに見て分かる。
「ごめんね、奢ってもらっちゃって」
両手でハンバーガーを頬張る芽衣は、本当にリスのようだ。「いや、いいよ」と答えながら、恭介はまたそんなことを考えてしまう。
別れたあともこうして、芽衣とは今まで通り会話をする仲だ。喧嘩別れではなかったからだろうか。世間一般的には珍しい例なのかもしれない。
芽衣は、相変わらず愛嬌があって、見ていてとても可愛らしい。
──でも……。
今ならはっきりと分かる。それだけなのだと。
確かに芽衣は可愛いが、でもどうしたって、それだけなのだ。恭介の気持ちはこれ以上、何をしたって膨らむことはないだろう。情はあるが、愛情ではなかったのだ。
「それで?」
横から食い入る様に見つめられ、恭介は小さく笑みを零した。
「なんか楽しんでるだろ」
「そんなこと………………す、少しだけ」
否定しかけた芽衣が、申し訳なさそうに白状する。親指と人差し指で1センチほどの隙間を作って示してきた。
「だって恭介くん、好きな人できたんでしょ?わたしもう気になっちゃって気になっちゃって……あ、大丈夫、変な意味じゃないからねっ」
興奮した様子で一方的に言われ、恭介は目をぱちぱちと瞬いた。
「……はっ?ちがうちがうっ!いないってそんなの!」
瞬時に海斗が頭に浮かぶが、それは間違いだ。海斗が恭介を好きなのだ。逆である。
「え、そうなの?だってほら、最近恭介くん綺麗になったじゃない。だからわたしてっきり……」
「だからそれ、意味分かんないんだけど……!全然嬉しくないんだって」
「んー、綺麗っていうか、色気……?セクシー度合いが、なんかこう……」
わなわなと、芽衣が自分の両手を動かす。
平凡で凡庸な自分とはまったく無関係な言葉を浴びせられ、恭介はハンバーガーを喉に詰まらせそうになった。慌ててコーラで流し込む。
「っおい、揶揄うなって、頼むからもうやめてくれっ」
「えー、揶揄ってるんじゃないよー?」と笑いながら言われても、信じることができない。
訝しげな視線を送り続けると、やっとそこで芽衣は話の軌道を修正してくれた。
「じゃあ、恭介くんは何に悩んでるの?」
「それは……」
そこでもまた少し躊躇して、恭介は慎重に、自身の置かれた現状を説明した。
友達が恭介に想いを寄せていることを、ひょんなことから知ってしまったこと、勝手に気まずくなってどう接したらいいか分からないこと、それから、その友達に想いを寄せる後輩から協力を頼まれてしまったこと。
登場人物が全員男だということは言わなかった。
数分前まで饒舌だった芽衣は、静かに恭介の話に耳を傾けてくれた。
しかし、恭介が話し終えると、彼女は「え?」と不思議そうに小首を傾げるから、
「え?」と恭介も思わず傾げる。
「それで終わり?」と尋ねられ、こくり頷く。
恭介本人がどうしたらいいか分からないのに、他人に分かるわけがなかったのだ。
申し訳ないことを相談してしまったな、と思っていると、芽衣が驚くことを口にした。
公園のような2人きりになってしまう場所よりは、人目もあって明るい店のほうがいいだろうと、恭介なりに気を利かせたつもりだ。
夕飯時とあって店内はそれなりに混んでいる。ちょうど空いていた、窓際のカウンター席に並んで座る。
幹線道路に面していて、地下鉄の出入口もすぐ近くにあるため、車も人も交通量が多いのがガラス越しに見て分かる。
「ごめんね、奢ってもらっちゃって」
両手でハンバーガーを頬張る芽衣は、本当にリスのようだ。「いや、いいよ」と答えながら、恭介はまたそんなことを考えてしまう。
別れたあともこうして、芽衣とは今まで通り会話をする仲だ。喧嘩別れではなかったからだろうか。世間一般的には珍しい例なのかもしれない。
芽衣は、相変わらず愛嬌があって、見ていてとても可愛らしい。
──でも……。
今ならはっきりと分かる。それだけなのだと。
確かに芽衣は可愛いが、でもどうしたって、それだけなのだ。恭介の気持ちはこれ以上、何をしたって膨らむことはないだろう。情はあるが、愛情ではなかったのだ。
「それで?」
横から食い入る様に見つめられ、恭介は小さく笑みを零した。
「なんか楽しんでるだろ」
「そんなこと………………す、少しだけ」
否定しかけた芽衣が、申し訳なさそうに白状する。親指と人差し指で1センチほどの隙間を作って示してきた。
「だって恭介くん、好きな人できたんでしょ?わたしもう気になっちゃって気になっちゃって……あ、大丈夫、変な意味じゃないからねっ」
興奮した様子で一方的に言われ、恭介は目をぱちぱちと瞬いた。
「……はっ?ちがうちがうっ!いないってそんなの!」
瞬時に海斗が頭に浮かぶが、それは間違いだ。海斗が恭介を好きなのだ。逆である。
「え、そうなの?だってほら、最近恭介くん綺麗になったじゃない。だからわたしてっきり……」
「だからそれ、意味分かんないんだけど……!全然嬉しくないんだって」
「んー、綺麗っていうか、色気……?セクシー度合いが、なんかこう……」
わなわなと、芽衣が自分の両手を動かす。
平凡で凡庸な自分とはまったく無関係な言葉を浴びせられ、恭介はハンバーガーを喉に詰まらせそうになった。慌ててコーラで流し込む。
「っおい、揶揄うなって、頼むからもうやめてくれっ」
「えー、揶揄ってるんじゃないよー?」と笑いながら言われても、信じることができない。
訝しげな視線を送り続けると、やっとそこで芽衣は話の軌道を修正してくれた。
「じゃあ、恭介くんは何に悩んでるの?」
「それは……」
そこでもまた少し躊躇して、恭介は慎重に、自身の置かれた現状を説明した。
友達が恭介に想いを寄せていることを、ひょんなことから知ってしまったこと、勝手に気まずくなってどう接したらいいか分からないこと、それから、その友達に想いを寄せる後輩から協力を頼まれてしまったこと。
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しかし、恭介が話し終えると、彼女は「え?」と不思議そうに小首を傾げるから、
「え?」と恭介も思わず傾げる。
「それで終わり?」と尋ねられ、こくり頷く。
恭介本人がどうしたらいいか分からないのに、他人に分かるわけがなかったのだ。
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