幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

文字の大きさ
25 / 72

第十六夜(1)

しおりを挟む
「ちょっと、待て待て……っ痛え!」

 玄関ドアが閉まり切るよりも前に、恭介は床に押し倒されていた。まだお互い靴も脱いでいない状態だ。
 視界の端でドアが閉まったのが見えて安堵する。

 覆いかぶさるように海斗が馬乗りになってきて、焦点を合わせるかのように瞳をじっと覗き込まれると、どうしたらいいのか分からない。

 顔を逸らしたいのに、できないでいると、
ゆっくりと海斗の顔が近づいてくる。

 またキスをされるのだと分かって、目をぎゅっと瞑って身構えていると、何も唇に触れてこない。
 恐る恐る目を開けると、動きを止めていたらしい海斗と至近距離で目が合った。

「嫌なら、言って。今のうちだぞ」

 そう告げられ、恭介は先ほどのキスを思い返していた。
 触れるだけの軽いキス。たったそれだけなのに、恭介の胸は甘く痛んだ。
 その先を、知るのは恐い。でも、知りたくないと言ったら嘘になる。

「……よし、バッチこいっ」

 覚悟を決めて言うと、噴き出した海斗が恭介の首筋に顔を埋めて笑ってきた。
 肩を震わせるたびに、栗色の髪の毛が頰に当たってくすぐったい。恭介もつられて笑ってしまう。

「突然の野球部やめろよ。色気ねえなぁ」

「え、俺に色気を求められても困る。そんなのないぞ」

 笑い尽くしたらしい海斗がのろのろと顔を上げる。さっきよりもずっと距離が近かった。お互いの吐息が当たる。

「……恭介が知らないだけで、あるよ、色気」

 何を考えているのか、クスッと微笑む海斗の方が、よっぽど色っぽい。
 ふと恭介は、芽衣にもそんなようなことを言われたのを思い出した。けれど、2人に言われたからといって、そんなものがあるわけないのだが。

 余計なことを考えていると、海斗の手が恭介の左頬に伸びてきた。

 顎から耳までの線を往復しながらそっと撫でられ、恭介は自分でも気づかないうちに、まるでそうすることが当たり前かのように、その手に頬擦りをして受け止めていた。
 
 海斗の指先が顎で止まる。
 上を向かせるように持ち上げられて、すぐに唇を唇で塞がれた。

 二度目のキスは軽いものではなかった。かぶり付くように唇を貪られ、わずかに開いた隙間から分厚い舌が入ってきた。
 歯列を、口蓋を、舌の表も裏も、恭介の咥内を隅から隅まで、海斗の熱い舌が這い回る。

「んんっ……」

 否応なく注がれる唾液を全部は飲み干せなくて、溢れたものが恭介の口の端をだらしなく濡らした。
 
 キスだけでもう恭介は、すっかりのぼせ上がっていた。

 海斗の手が、恭介のジーンズの前を撫でた。
 硬いジーンズ生地の上からでは分からないだろうが、恭介は自分のものがしっかりと昂っていることを知っていた。

 ウエストのボタンを外され、そのままファスナーを下げられそうになって、恭介は海斗の手を掴んで止めた。

「いやだ……っ」

 堪らずそう漏らすと、海斗がピタリと動きを止めた。そして、苦しそうに舌打ちをする。

「もっと早く言えよ。俺の好きは、こういう意味の好きなんだ。ほら、お前は、やっぱり、無理なんだろ」

「ち、違うっ」

 恭介は慌てて首を横に振った。
 無理なんかじゃない。認めたくないし、頭は追いつかないが、恭介の身体はもう完全に海斗を求めているのだ。
 よく分からない涙で滲んだ目で、海斗を見る。

「ここじゃ、いやだって、意味」襟ぐりを引っ張り耳元で言う。顔を見て言うのが恥ずかしかったからだ。
「……ベッドがいい」蚊の鳴くような小さな声になってしまったが、聞こえたらしい。

「お前は……」ぐしゃっと前髪をかきあげる男らしい仕草にさえ、恭介は情欲を掻き立てられた。

 ぼんやり見惚れていると、手を引っ張って起こされ、靴を脱がされる。そして、次の瞬間には、海斗の肩に担がれていた。

「ひゃ!」目の前に逆さまの海斗の背中がある。
 米俵のように運ばれる恭介の身体は、くの字に折れていた。支えてくれている海斗の手が、腿裏の際どい部分に触れている。
 たったそれだけで、恭介の身体は甘く疼いた。

 そのまま連れて行かれたのは、海斗の部屋だった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...