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番外編① ─清彦side─
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間接照明だけを灯した、雰囲気満点の薄暗い室内。
相庭清彦は自身のベッドの上でカチコチに固まっていた。彼の2つの拳は膝の上でぎゅっと握られている。
──早まったかもしれない。
もう何度そう思ったか分からない。
時刻は間も無く22時──予約の時間になろうとしている。
今日は清彦の21歳の誕生日だった。
ついこの間ハタチになったばかりなのに、もう1年がたってしまった。つまり今日、彼氏いない歴も21年になったのだ。
清彦は高校時代からゲイを公表している。
それなりに告白もされてきたが、残念ながらどの男もタイプではなく、全てを断ってきた。
が、今思うと、選り好みをしすぎたように思う。
また、ロシア人の祖父を持つ清彦は、容姿も整っているほうだと随分昔から自覚していたが、どうやらそれも自惚だったかもしれない。
大学に入ってからと言うものの、ろくに告白された試しがないのだ。
それに、高校時代のほとんどをずっと片想いに費やしていたのも、いけなかった。時間のロスだった。
そう思えるのは、とうに吹っ切れた今だからだが。
そんなことを考えているうちに、無性に寂しくなってしまったのだ。人肌が恋しいと思った。
交際経験がないから、正確な人肌の温もりは知らないが、生まれてはじめて寂しさというものを実感した。
そして同時に、もう今更、誰でもいいやと思った。
ドラマみたいな恋愛は、きっとごく一部の限られた人間にしか与えられないのだ。その証拠に、待っても待っても、清彦のもとには清彦を好いてくれる理想の男は現れないではないか。
そうして辿り着いたのが、出張ホストだった。
ちょっとタイプであれば、見ず知らずの男でいい。抱かれよう。抱いてもらおう。
そのままの勢いで、ネットで見つけたサイトからホストを買い、さっそくその日の夜に手配した。
出会い系サイトや、そう言う場所よりも、ずっと安全だろうと考えてのことだった。
夜、いつもよりシャワーを念入りに浴びて、綺麗にした身体で男を待った。
サイトには簡単なプロフィールと、顔から下の上半身の写真しかなかったが、程よく筋肉のついた身体は好みだった。
──それに……。
時間ぴったりにインターホンが鳴る。
急いでモニターで応答すると、画面には、細身のパンツにダウンジャケットを羽織っているキャップ姿の男が映った。画質が荒く、外の暗さも相まって、顔までははっきりと分からない。
『カイトです』
プロフィールどおりの名前を、男が言った。
それは、清彦が片思いに終わった、高校サッカー部時代の先輩と同じ名前だった。
そう、正直、ほとんどこの名前で選んだと言っていい。体つきはタイプだが、もし名前が違ったら選んでいなかっただろう。
なぜなら、カイトは大きすぎた。
サイトにはご丁寧に、各ホストの勃起時の大きさまで記載されていたのだが、なんとカイトは16.5センチらしい。デカすぎる。
夜な夜な愛用している清彦のおもちゃは、測ってみたら12センチしかなかった。
だが、それを差し引いても、最中に『カイト』と呼べるのは魅力的で、つい選んでしまった。
こんな女々しいことをして、知り合いにバレたら余裕で死ねるが、今日限りの自分だけの秘密だ。墓場まで持っていく覚悟だ。
「今開けます」
覚悟を決めてそう答えると、すぐに玄関に向かった。
念のため、覗き穴からも見てみるが、勿論モニターと同じ人物がいる。やっぱり顔まではよく見えない。
緊張した。今からついに抱かれるのだと思うと、開錠する手が震える。
でももう、逃げることはできない。想像以上に不細工で無理だったら、ひたすら謝って帰ってもらおう。
そんなことを考えながら、清彦は玄関ドアを開けた。
180センチとプロフィールには書いてあったはずだが、もっとあるんじゃないだろうか。目線を上げながらそんなことを思った。
「はじめまして!カイトです」
男がキャップを取り、それを見上げた清彦は息を呑んだ。
薄い唇、すらっとした高い鼻、お人好しが滲み出たような垂れ目、男らしい太い眉、そしてなによりその右目の泣きぼくろ。
間違いなく、知り合いだった。
あんぐり口を開けると、男も同じような顔をして驚いている。
「アイ先輩……」
懐かしい呼び方をされ、そこでやっと我に帰る。
「な、なにがカイトだよ……!?勝手に先輩の名前を名乗るなよ!お前は、田口翔太だろうが!!」
人差し指を使って指差すその先には、間違いなく、どう見ても、サッカー部時代の1年後輩──田口翔太がいた。
相庭清彦は自身のベッドの上でカチコチに固まっていた。彼の2つの拳は膝の上でぎゅっと握られている。
──早まったかもしれない。
もう何度そう思ったか分からない。
時刻は間も無く22時──予約の時間になろうとしている。
今日は清彦の21歳の誕生日だった。
ついこの間ハタチになったばかりなのに、もう1年がたってしまった。つまり今日、彼氏いない歴も21年になったのだ。
清彦は高校時代からゲイを公表している。
それなりに告白もされてきたが、残念ながらどの男もタイプではなく、全てを断ってきた。
が、今思うと、選り好みをしすぎたように思う。
また、ロシア人の祖父を持つ清彦は、容姿も整っているほうだと随分昔から自覚していたが、どうやらそれも自惚だったかもしれない。
大学に入ってからと言うものの、ろくに告白された試しがないのだ。
それに、高校時代のほとんどをずっと片想いに費やしていたのも、いけなかった。時間のロスだった。
そう思えるのは、とうに吹っ切れた今だからだが。
そんなことを考えているうちに、無性に寂しくなってしまったのだ。人肌が恋しいと思った。
交際経験がないから、正確な人肌の温もりは知らないが、生まれてはじめて寂しさというものを実感した。
そして同時に、もう今更、誰でもいいやと思った。
ドラマみたいな恋愛は、きっとごく一部の限られた人間にしか与えられないのだ。その証拠に、待っても待っても、清彦のもとには清彦を好いてくれる理想の男は現れないではないか。
そうして辿り着いたのが、出張ホストだった。
ちょっとタイプであれば、見ず知らずの男でいい。抱かれよう。抱いてもらおう。
そのままの勢いで、ネットで見つけたサイトからホストを買い、さっそくその日の夜に手配した。
出会い系サイトや、そう言う場所よりも、ずっと安全だろうと考えてのことだった。
夜、いつもよりシャワーを念入りに浴びて、綺麗にした身体で男を待った。
サイトには簡単なプロフィールと、顔から下の上半身の写真しかなかったが、程よく筋肉のついた身体は好みだった。
──それに……。
時間ぴったりにインターホンが鳴る。
急いでモニターで応答すると、画面には、細身のパンツにダウンジャケットを羽織っているキャップ姿の男が映った。画質が荒く、外の暗さも相まって、顔までははっきりと分からない。
『カイトです』
プロフィールどおりの名前を、男が言った。
それは、清彦が片思いに終わった、高校サッカー部時代の先輩と同じ名前だった。
そう、正直、ほとんどこの名前で選んだと言っていい。体つきはタイプだが、もし名前が違ったら選んでいなかっただろう。
なぜなら、カイトは大きすぎた。
サイトにはご丁寧に、各ホストの勃起時の大きさまで記載されていたのだが、なんとカイトは16.5センチらしい。デカすぎる。
夜な夜な愛用している清彦のおもちゃは、測ってみたら12センチしかなかった。
だが、それを差し引いても、最中に『カイト』と呼べるのは魅力的で、つい選んでしまった。
こんな女々しいことをして、知り合いにバレたら余裕で死ねるが、今日限りの自分だけの秘密だ。墓場まで持っていく覚悟だ。
「今開けます」
覚悟を決めてそう答えると、すぐに玄関に向かった。
念のため、覗き穴からも見てみるが、勿論モニターと同じ人物がいる。やっぱり顔まではよく見えない。
緊張した。今からついに抱かれるのだと思うと、開錠する手が震える。
でももう、逃げることはできない。想像以上に不細工で無理だったら、ひたすら謝って帰ってもらおう。
そんなことを考えながら、清彦は玄関ドアを開けた。
180センチとプロフィールには書いてあったはずだが、もっとあるんじゃないだろうか。目線を上げながらそんなことを思った。
「はじめまして!カイトです」
男がキャップを取り、それを見上げた清彦は息を呑んだ。
薄い唇、すらっとした高い鼻、お人好しが滲み出たような垂れ目、男らしい太い眉、そしてなによりその右目の泣きぼくろ。
間違いなく、知り合いだった。
あんぐり口を開けると、男も同じような顔をして驚いている。
「アイ先輩……」
懐かしい呼び方をされ、そこでやっと我に帰る。
「な、なにがカイトだよ……!?勝手に先輩の名前を名乗るなよ!お前は、田口翔太だろうが!!」
人差し指を使って指差すその先には、間違いなく、どう見ても、サッカー部時代の1年後輩──田口翔太がいた。
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