幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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番外編③ ─清彦side─

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 下唇を噛み締めていると、頭上からクスッという嘲笑が聞こえてきて、睨むように顔を上げる。

「一番高い朝までコースなのに、チェンジでさらに金払うんすか」

「うるさいな。いいから早く出てってよ」

「外雪降ってきてるし、次のヤツ見つからないと思いますよ」

「じゃあもうキャンセルでいい。ちょっと、こっち来ないで……」

 そんな会話をしながらもじりじりと言い寄られ、避けるように距離をとっているうちに、清彦の膝裏が、ベッドのふちに当たった。

──あ、まずい。

 押し倒され、無理やり襲われる情景を思い浮かべて顔を青くしていると、ゆっくりと伸びてきた大きな手にさえ、びくっと怯んでしまった。

 でもその手は、思いのほか優しかった。

 そっと肩を押され、ベッドに座らされる。翔太は清彦の足元に跪いた。

「俺じゃだめですか?」

 手を取られて、その甲に唇を押し当てられる。

 まるでおとぎ話の王子様のしぐさだ。現実世界でそんなクサイ行為をする奴がいるなんて、笑ってしまう。……なのに今、ちっとも笑えないのはなぜだろう。

 口から心臓が出てきそうなほどドキドキしているのは、単に清彦にこういう経験がないせいだろうか。

 唇が離れると、きゅっと包み込むように手を握られた。

「いきなりキスしてすみませんでした。……先輩が可愛すぎて、我慢できなかった」

 後半、彼はなんと言ったのか、ほとんど独り言のように呟くから清彦には聞こえなかった。

「俺とのキスいやでしたか?今こうしてるのも気持ち悪い?」

 清彦の気持ちを慎重に伺うように、上目遣いで尋ねてくる。返事を急かす様子はない。
 真摯な瞳でじっと見つめられ、しぶしぶ清彦も視線を合わせる。

 翔太は整った顔をしているほうだと思う。

 ずっと異性愛者だと思っていたから、清彦はそういう対象として翔太を見たことがなかった。
 でも、翔太目当てに女子たちが練習を見に来るくらい、当時から人気があったことを覚えている。
 それから、サッカー馬鹿の気さくでいい奴だということも。

「気持ち、悪くはないけど……」見ていられなくて、顔を逸らす。横顔で視線を受け止めながら、清彦は続けた。

「知り合いとは、そういうことしたくないから」そうはっきりと口にする。

「誰にも言いませんよ。俺だってこんな仕事してるし、お互い様です」

 つーっと、円を描くように、翔太の指先に手のひらを撫でられる。くすぐるようないやらしい手つきに、思わず目をぎゅっと瞑る。

「ね、先輩、嫌じゃないならよくないですか?せっかくだから、一緒に気持ちよくなりましょうよ」

 なんて上手い、そして、なんて甘い誘惑だろう。
 翔太の言葉や行動の端々から、こういうことに慣れているのだということがよく分かる。

 先輩後輩ではない、今だけは客とホストなのだ。

「………………」

 どうせ、今日限りだ。

 知り合いだろうが、他人だろうが、一度抱かれるだけ。それで終わりだ。

 清彦がこくりと頷くと、翔太は優しく微笑んだ。

「脱ぎましょうか」

 清彦の小さな頭を撫でながら、耳元でそう囁く。

 命令をされたわけではないのに、清彦の手は言われるがままに動いた。
 ゆるゆると部屋着のパーカーとズボンを脱ぐ。丁寧に畳んで床に置く。

 下着も脱いでしまっていいのか分からなくて翔太を見上げると、彼はもうすでに一矢纏わぬ姿になっていた。

 息を詰めて俯く清彦に、翔太の声がかかる。

「俺がパンツ脱がしてもいいですか?」

 脱がされるのと、自分で脱ぐの、一体どちらが恥ずかしくないのだろう。
 分からない。もうどうにでもなれ、と思う。

 頷くと裸姿の翔太がベッドに膝をついた。清彦のボクサーパンツを脱がすと床に放った。

 生まれたままの姿で向き合う。

 こういう時、まず何から始めるんだろう。目のやり場さえ分からない。

 身構えていると、翔太の両腕にやんわりと引き寄せられた。
 胸板に顔を預けるかたちになると、規則正しい心音が聞こえてきた。
 その音に耳を澄ませているうちに、不思議と清彦は身体の強張りが解けてくる。

「大丈夫ですか?」

 気づかうような柔らかい声。まるで本当の恋人同士のような気分になってしまう。これがホストの力らしい。ハマってしまう人の気持ちが分からなくもない。

「……平気」

 本当は翔太とは比にならないくらいドキドキしていたし、抱きしめられた時の手の置き場所も、呼吸の仕方さえも分からなくなっていた。
 けど、見栄を張ってなんとかそれだけ言う。
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