幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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番外編⑦ ─清彦side─

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 あの夜から1週間ほどが経ったその日、清彦は都内の居酒屋にいた。

 サッカー部上京組の飲み会だ。知った顔も知らない顔もあって、20人ほどが集まっている。
 マネージャーをしていたこともあって、清彦が幹事を任されている。

 だから、参加者に翔太の名前がないことは最初から知っている。清彦を避けているのか、予定があったのか、例のバイトか、とにかく今日翔太は来ない。

「おーい、のんでるかよ?」

 不意に肩を組まれ、ため息をつく。声だけで誰だか分かってしまった自分自身に呆れてしまったのだ。
 どかっと隣に座った男から清彦は無理矢理ビールジョッキを取り上げる。

「弱いくせに飲み過ぎですってば」

 今日これを言うのはもう2回目だが、言われた本人である内田海斗は、知らん顔で楽しそうに笑っている。

「返せし。今日は飲んでいいって言われてんの」

 誰に?と問う必要はない。例の幼なじみの彼氏に決まっている。

 高校時代、海斗が幼なじみの同級生に想いを寄せていることに気づいたのは清彦ただひとりだった。それは、清彦がずっと海斗を見ていたからだ。
 好きだった。
 相談に乗るふりをして、応援するふりをして、いつも隙あらばと虎視眈々と狙っていた。

 結局、清彦のほうは報われなかったけれど。

「最近どうよ?彼氏できた?」

 後半部分だけ声を落として、海斗がそんなことを聞いてくる。内緒話をするように近づけられた顔に、不思議とドキリとはしなかった。
 むしろ一瞬脳裡によぎった顔にムカついた。すぐに急いでそいつを消し去る。

 険しい顔になりそうだったが、なんとか笑顔を貼り付ける。

「彼氏なんていなーい。理想が高いんですぅボクは」

 好きだった時の名残りで、今でもまだ海斗の前では猫を被ってしまう。

「は?」と地を這うような低い声が聞こえたのは、そのときだった。声の主は、隣の海斗ではない。後ろから聞こえた。

 ぞくりと、背筋が震える。一方で心臓はドクドクと鼓動を速める。

 背後を振り向こうとして、腕を掴まれ海斗から強引に引き離される。
 顔から硬い胸板に飛び込むかたちになったが、知ってしまったその匂いが香ってきて、何故だか泣きそうになる。
 翔太だ。でも、なぜここにいるのか。

 ぽかんと見上げていると、鋭い視線に射竦められた。

「彼氏いないってなんですか?俺が先輩の彼氏じゃないの?」

「……え……?な、なんでそうなる……!」

「は?だってセックス……」

「うわああっ!!」

 とんでもない単語が飛び出してきて、慌ててその口を塞ぐ。海斗に、周囲に、聞かれていないだろうかとおろおろしていると、

「なんだよ、お前らなあ、いちゃつくなら帰れよ」

 ちゃっかりビールジョッキを手にした海斗が、しっしっと払い除けるジェスチャーをしてくる。

「ち、ちがう……っ」

「じゃあ、この人持って帰りますね」

 腕を掴んだまま翔太が立ち上がるから、必然的に清彦もそれに従わされる。

「いや、待って、俺幹事だし」

「会計はもう済んでるんでしょ?」

「でも……っ」

 強い力で腕を引かれて、どうすることもできずにそのまま店を出る。
 ぐんぐん大股で進む翔太に、ほとんど小走りでついて行くしかない。

「ちょっと翔太……っ!なんなのお前?」

 大通りを抜けると人通りは減り、急にあたりは静かになった。アパートやマンションが立ち並ぶエリアだ。知ってる道なのか迷っている様子はない。

「……先輩こそなんなんですか?俺のこと好きって言いましたよね?」

「はあ?言ってない……!絶対言ってない!」

 掴まれた腕を振り上げようとしたが、びくともしなかった。

「セックスしてる時に、俺が好きって言ったら先輩何度も頷いてたじゃん。それに、翔太翔太ってめっちゃとろ顔で気持ち良さそうに良がってたじゃないですか」

「セッ……、とろ…………、こ、こんなところでやめてよっ……!」

 外で、それも、静まりかえった夜の住宅街でする話ではない。
 それでも一瞬であの夜の情景を思い出してしまって、かあっと頰に血が上る。

 あの日の甘言はすべてそういう演技なのだと思っていた。違うのなら、一体どこまでが本音で、どこからが営業トークだったのだろう。

「どうせ、客にはいつもああいうこと言ってるくせにっ」

「んなわけないだろ。あー、もう」

 煩しそうにがしがしと片手で頭を掻き毟る。
 敬語が剥がれ落ちたその口ぶりは、どうしてもあの夜を思い起こさせる。セックスのときだけ、翔太は清彦に敬語ではなくなるのだ。

 先ほどよりも急ぎ足で手を引かれて、連れて行かれたのはマンションだった。
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