幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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番外編⑧ ─清彦side─

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 エレベーターを6階で降りて、1番手前の部屋に入るや否や、清彦は強い力で抱きしめられた。

「信じてくれるまで何度でも言うよ。俺はずっと先輩が好きだった。あん形だったけど偶然再会して、やっぱり諦められないと思った」

「……え……」

 それではまるで、あの日の睦言すべてが本気だったと聞こえる。

「あの夜、俺の気持ちを受け入れてくれたのかと思ったんだけど、違った?」

 どこか自嘲気味に翔太が首を傾げる。自信なさげな弱々しい表情に、胸の奥がちくりと痛む。

「……けど、俺は別に、お前のこと好きじゃなかったし……」

「知ってるよ。だから、好きになってもらいたくて、全力で抱いたんだけど。ダメだったかあ」

 あーあ、と小さく零しながら、するりと翔太の腕が離れていく。

 気がつくと清彦は、服の袖をくいっと引っ張って引き留めていた。

「あ……」

 何をしているんだとハッとする。慌てて手を離すが、その指先はすぐに大きな温かい手に捕まった。

「付け込んでいい?」

 顔を覗き込まれて、どう言う意味だろうと首を傾げる。

「お試しでいいから、俺と付き合ってよ。先輩、嫌じゃないでしょ、俺とこういうことするの」

 空いていたほうの手が、清彦の背中の溝をなぞり上げれば、正直な身体はぞくりと震えてしまう。

「やめ……て」

「それ、自分がどんな顔で言ってるか分かってる?」

 形の整った唇が近づいてきて、思わず目を閉じそうになったが、咄嗟に両手で壁を作ってキスを拒む。

「なんでダメ?」

 翔太は不服そうだが、清彦にはまだ小さな何かが、胸の奥に引っかかっているのだ。

 ずっと好きだったというのが本当かどうかは分からないが、とりあえず、身体の相性は良かったように思う。
 そこまでどうしてもと言うのなら、別にお試しで付き合ってやらないこともない。

──でも……。

 どうしてこうも思ったままを言ってしまうのだろう。それでも翔太は黙って清彦の話に耳を傾けていた。

「でも、お前、連絡するって書き置きしたくせに、1回もくれなかったじゃん」

 胸のわだかまりはそれだ。あんなメッセージを残してくれたせいで、何日も悩む羽目になったのだから。

「それは……ごめん。あの日俺超浮かれてて、うっかり携帯水没させちゃったんだよね。今もまだ修理出してて……。だから連絡できなかった。でも、今日の飲み会の場所は覚えてたから、行って説明しようと……」

「ねえ、ちょっと」

 話の途中で遮ったのは、説明の途中からなにやら翔太の顔がにやにやと緩みはじめたからだ。

「何ふざけてんの?こっちは真面目に聞いてるんだけど」

 修理に出していようと、自分のパソコンや大学のパソコンからラインにログインすれば連絡は簡単にできるはずだ。まさかそんなことも知らないのかと、これまた思ったままを口にする。

 苛立ちは増すばかりだが、翔太の顔は中々元に戻らない。口元を押さえふるふると震えている様は不気味でしかない。

「キモいんだけど」

 我慢できずに舌打ちをしてから翔太を睨み上げると、突然腕を引かれてもう一度抱きしめられた。

「な、なんだよもうっ」

「あのさ、それ、連絡なくて寂しかったって言ってるようにしか聞こえないんだけど」

 そう言われて、殴ってやろうと握りしめていた拳をピタリと止める。

「は!?そ、そんなんじゃない……っ!!だってお前が……」

「何を玄関で話し合ってるんだろうね。上がって」

「あ?ああ。……え、わっ、翔太っ?」

 従って靴を脱いですぐ、ふわりと身体が宙に浮く。お姫様抱っこで糸もたやすく持ち上げられ、部屋の奥へと運ばれていく。

「なんなんだよ!」

「今までろくに連絡取ってなかったし、1週間なんて許容範囲内だと思ったんだけど……。そうかそうか、寂しかったかあ」

 独り言のように呟いて、にやにやを通り越してにまにましている。

「だから違うんだってば……っ!」

「続きはベッドで話そ」

 まるで王子様のようににこっと優しく微笑みかけられたが、清彦の背筋には冷たいものが流れた。
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