幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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番外編⑩ ─翔太side─

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 部員の誰よりも小さく、なんならマネージャーの女子よりも華奢なその男は、だけど誰よりも男らしくて、1番かっこよかった。

 ポジションは守備の要、ディフェンダー。

 足の速さもさることながら、コートを走り回る持久力は誰よりも長けていた。
 頭の回転も早く、相手選手の位置を正確に把握し、さらにその先を予想したプレーは、まるで一つ先の未来が彼にだけ見えているかのようだった。

 そんな小さなヒーロー、相庭清彦は、1年次からレギュラーメンバーだったらしい。

 田口翔太がサッカー部に入部したとき、彼は既に2年だった。

 そこからほんの4ヶ月弱。翔太は清彦と同じレギュラーに選ばれて、何度も一緒に試合に出た。

 忘れもしない、あの暑い夏の日、翔太の小さなヒーローはコート上で倒れた。
 選手生命に関わる、右膝の怪我だった。

 もう、以前のようには走れないらしい。

 それからしばらくたったある日、顧問と話しをするため久しぶりに清彦が登校したらしいと聞いて、翔太はいてもたってもいられなかった。

 後先考えずに部活を抜けて、とにかく職員室に向かった。
 ちょうど清彦は校舎から出てきたところだった。その両脇は松葉杖によって支えられている。

「先輩……」

 かける言葉なんて考えていなかった。思わず呼びかけて、でもほとんど同時に、もっと大きな声が被さってきた。

「アイ、辞めんのかよ?」

 そう声を荒げたのは、もちろん翔太ではない。思わず水飲み場の陰に隠れる。
 そっと覗けば、声の主は同じくレギュラーで3年の内田海斗だった。

「辞めんなよ。お前誰よりも好きだろ、サッカー。どういう形であれ、俺はまだお前とプレイしたいよ」

 海斗は涙ぐむ清彦の頭をポンと撫でて、着ていた自身のユニフォームでその顔を雑に拭った。

「痛いし、汗くさいんですけど」

「うるせ。……とにかく、辞めんなよ」

 もう一度海斗が言うと、しばらくして清彦はこくりと小さく頷いた。
 俯くその横顔は海斗からは見えなかっただろう。でも、翔太にはよく見えた。

 夕陽に照らされているせいだけではないだろう。朱に染まる小さな頰から、翔太は目が離せなかった。
 人が恋に落ちる瞬間を、生まれて初めて眼の当たりにしてしまったのだ。
 それも、自分が好意を抱いていた相手が、別の誰かに心奪われる瞬間をだ。

 あともう少し早く声を掛けていたら。でも、果たしてあんなセリフが自分に言えただろうか。

 自問したところで、翔太は目を覚ました。懐かしい昔の夢を見ていたようだ。嫌な夢だ。

 カーテンの向こうの窓の外は、もうほんのりと明るい。

 目を擦りながら身をよじって、思わずうわあっと情けない声を上げる。

 寝そべった清彦が頬杖をついてこちらを見ていたのだ。

「すんごいうなされてたけど、変な夢でも見たの?」

 くすくすと楽しそうに笑う姿はとても愛らしいが、今回ばかりはちっとも笑えない。
 夢の中でさえ昔の繰り返し。海斗には勝てないのだ。

「超イヤな夢でしたよ」

 慰めてほしいと言わんばかりに顔を胸に寄せると、ぽんぽんと後頭部を撫でてくれた。

 清彦と付き合いはじめて、もうすぐ2ヶ月になる。

 再開してまず思ったが、大学生になって清彦は色気が増した。間違いない。
 本人はモテなくなったとぼやいていたが、それは単に声が掛けづらいだけだろうと翔太は踏んでいる。

 でもそんな清彦は今はもう翔太のものなのだ。海斗よりも自分を選んでくれた。それが嬉しくてたまらない。

 我慢できずに、目の前のピンク色をした乳首に舌を這わす。

「ん、ちょっと、翔太」

 昨晩そのまま眠ってしまって、お互いに下着さえ身につけていなかったため、丁度いい位置にぷくっとした小さな突起があったのだ。

 感じないと言っていたはずのそこは、翔太の手によって、どこよりも敏感に育てあげられた。

 舌で転がして、歯を立てて甘噛みすると、清彦は震えながら甘い吐息を漏らした。

「ぁ……もうっ、昨日もしたのに……」

「いい?」

 すっかり火が灯ったらしい。潤んだ瞳で見上げられ、分かってはいるのだがつい聞いてしまう。

「ん、はやく……ほし、ぃ」

 その言葉が聞きたくて。

 幸せすぎる現実に、夢で見た過去はあっという間に霧散した。

 
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