幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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第二十三夜(1)

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 人は予期せぬ事態に遭遇すると、たとえ自分が悪くなくても謝ってしまうらしい。

 早くに目が覚めて、早番でもないのにいつもより1時間早くバイト先のスーパーに来たのが行けなかった。

 そう大きくない地元のスーパーだ。早番は2人。人件費削減のため、そこから1時間おきにスタッフが出勤してくるシフトになっている。

 今日の早番は店長と誰だったか。
 そんなことをぼんやり考えながら、休憩室のドアを2回ノックして、開ける。

 いつも通り、中からの返事を待ったりはしなかった。
 休憩室の奥にはドアが2つあって、それぞれ男子と女子の更衣室となっている。

 だけどこの日ドアを開けると、恭介の目にはとんでもないものが飛び込んできた。

「!?す、すみません……っ!」

 ちっともこちらに非はないのだが、慌てて謝ってドアを閉めて入るのをやめる。

 頭の中には無数のクエスチョンマークしかない。

 見間違いだろうかとも考えたが、しばらくして中から店長が出てきて、現実なのだと理解する。

「悪いね、変なもん見せて。面倒臭いからパートのおばちゃんらには言わないでよ」

 それだけ言って、店の中へ消えていく。

 店長は30代前半くらいの独身男性だ。いつも休憩中に外の喫煙所でタバコを吸っている、というイメージしかない。
 無精髭が生えている時がほとんどで、どちらかと言えば野性的で清潔感はほとんどないと言ってもいいだろう。

──そんな人と何でまた……。

 もう一度休憩室をノックすると、中から「はい!どうぞお入りください!」と面接官のようなセリフが返ってきた。相当動揺しているらしい。

「おはよう」と中の人物──芽衣に声を掛ける。

「ごめん!本当に!」

 ぱん!と手のひらを合わせて謝ってくる理由は勿論ひとつしかない。

 先ほど恭介が見てしまったのは、店長と芽衣の濃厚なキスシーンだった。

 店長の手が芽衣の服の中をまさぐっていたような気もするが、一瞬でドアを閉めたので、気のせいだろう。気のせいということにしたい。
 元カノのそういった場面ほど見て気まずいものはない。

「もしかして、店長と付き合ってんの?全然気づかなかった」

「う、うん……。2週間前から。あの、お願い!パートのおばさま達には言わないでっ」

「ふ。それ、さっき店長も言ってた」

 お喋りな彼女達の耳に入れば、こんな話題は一瞬で拡散されるからだろう。

「そ、そうなの……?あはは。そ、それより、恭介くん来るの早すぎだってー!なんなのさー!」

 冗談まじりに早く来すぎたことを指摘されてドキリとする。
 眠れなくて、家にも居づらくて、出てきてしまったのだ。

 自分から襲い返すと宣言しておいて、もう何日も理由をつけてひとり自分のベッドで眠っている。
 さすがにそろそろ海斗も怪しんでいるだろう。

「……いいな芽衣は、ラブラブそうで」

 ぽつり漏らしたそれは、嘘偽りの無い正直な気持ちだった。

「え、恭介くんはラブラブじゃないの?付き合う事になったって言ってたよね」

「時間大丈夫か?早番だろ?」

 曖昧に笑って話を濁す。
 何か言いたげだった芽衣だが、「いつでも聞くからね!」と急ぎ足で休憩室を出て行った。

 1人きりになり、はあとため息をつく。

 もし、海斗が恭介に満足していないのなら、いずれ別れる事になるのだろうか。
 また普通の幼なじみに戻れる気はしない。そうなると、ルームシェアも解消して、この先もう一生会うこともなくなってしまうのだろうか。

 なんとかそれだけは避けたいと思う。ずっと隣にいることが当たり前だった。いつの間にか海斗をこんなにも好きになっていて、自分でも驚いてしまう。


 淡々と仕事をこなし、退勤時刻まであと1時間となった頃、つい今しがた先に上がったばかりの芽衣が、私服姿で戻ってきた。

「裏に来てるよ!」と小声で耳打ちしてくる。さらに「なによう、ラブラブじゃんかあ」と肘で突かれ、意味が分からない。

 その理由が分かったのは、1時間後に仕事を終えて裏口の扉をくぐってからだった。

「わっ」と思わず声をあげる。フェンスにもたれるようにして海斗が立っていたからだ。芽衣はこのことを言っていたのだろう。

「海斗、何して……」

 尋ねかけて、あるおかしな点に気づく。

 アドバイスをもらったこともあって、芽衣には恋人ができたことを報告したが、それが男──一緒に暮らしている海斗だとは一言も言っていないのだ。

 
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