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第四章 孤独
閻魔の苦悩
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清香は昨日は怖いと思った蝋燭の一杯ある暗い仏壇のある部屋で合掌して居た。
不思議と今何も怖いと思わない。
「死後のことは私には解らないけれど、 きっと……生きとし生けるものは魂が抜けても心を残して居るんじゃないのかしら。 その心は関わった人の心の中に有る……。 怖さも、 思慕も、 全ては人の心から生まれるもの。
私が彼らにできるとしたら、 人知れず誰にも供養されなかった哀れな魂を弔うことよ……」
そんな純粋な清香の一部始終を見ていたモノが居た。 九尾の狐である。
九尾の狐は清香にとり憑くつもりだったが、 仏壇に合掌して弔う姿を見て、 何もせず又姿を消した。
「何をして居るんだ俺は」
その深夜に九尾の狐は人里にフラフラと出た。
敏感な感覚で今度は彼氏を取られた嫉妬から彼氏を奪った女へ呪いの丑の刻参りをする女を発見した。
「バカめ。 迂闊に呪いなんて掛けるもんじゃない。 ”人を呪わば穴二つ” ってな。 ……懲らしめてやろう」
九尾の狐は丑の刻参りをする女にとり憑いて精神を病ませた。
九尾の狐に憑かれたその女は病院送りになったと言う。
呪いを掛けた女の夢枕に立った九尾の狐は、 教訓を忘れさせない様に、
「人に酷い悪さをしたり、 人の道から外れ呪えば己に帰るのだ。 地獄に落ちたくなければ、 ……覚えておけ」
それを告げると九尾の狐は女から離れた。
女は退院後も九尾の狐の夢を忘れられず、 呪うのを止めると自然と次の新しい彼氏ができた。
茅葺屋根の家で奇妙な”仕事”に慣れて来た清香。
”仕事”と言ってもパソコンと墓地の管理をする住職と応対、 家の周りを箒で掃除したり、 厠にバキュームカーを
呼んだり家の簡単な掃除ぐらいしかなかった。
相変わらず曼珠沙華は切ない程に美しい庭だった。
この頃になると知らぬ間に将虎と清香は恋仲になっていた。
互いを慕う心や、 愛おしい思いや心と言うモノは自分に嘘をつくにも限界があり、 誰にも止められないのだ。
将虎と清香は寄り添い、 互いの手を握っていた。
「清香、 これ程近くにいつも居てもこれ以上近付けない。 俺はこの世の者ではないからな。
願いが叶うならば人に生まれ変わり、 人間界でお前と共に仲睦まじく寄り添い、 年を取りたいものだ……」
今迄将虎は、 恋心を抱かぬ様に自制してわざと清香を名で呼ばなかったが、 最近は清香、 清香と名を呼ぶ様になっていた。
清香は将虎の手に掌を置いた。
「私もよ……。 将虎さんと共にずっと傍に居たい……」
将虎はいつもと違い弱々しく見えたが瞬時にいつもと変わらぬ無表情になった。
「戯言(ざれごと)だ……。 受け流せ」
清香が家に帰ると将虎は暗い部屋でぼんやりと座っていた。
「閻魔である俺が人間の女に恋をするなど……あってはならぬことだ。 清香に対する愛おしいこの思いをどこに持って行けば消えると言うのだ? 俺が孤独なのは今に始まったことではない。 これも己の因果。
俺はずっと孤独だったんだから……今更何を」
そういうと将虎は目を閉じ、 立ち上がって部屋をでた。 そこに九尾の狐が居る。
「俺が思った通りだな。 どうするんだよ閻魔。 あの女は人間でお前は永久(とわ)に地獄を輪廻する身だ。
あの女なら人間界を輪廻するだろう。
住む世界に違い過ぎる。 この家が人間界から消滅する時、 人間のあの女はお前への思慕で心を痛め続けることになるだろう。 俺達にただ一つ未来永劫であるのは地獄のみ。 それでも良いのか」
九尾の狐に背中を向ける将虎。
「お前に言われるまでも無い。 ……人間界からこの家が消滅する時は、 あの女から俺達の記憶を全て消す」
そう言って将虎は九尾の狐から離れ縁側に向かった。
不思議と今何も怖いと思わない。
「死後のことは私には解らないけれど、 きっと……生きとし生けるものは魂が抜けても心を残して居るんじゃないのかしら。 その心は関わった人の心の中に有る……。 怖さも、 思慕も、 全ては人の心から生まれるもの。
私が彼らにできるとしたら、 人知れず誰にも供養されなかった哀れな魂を弔うことよ……」
そんな純粋な清香の一部始終を見ていたモノが居た。 九尾の狐である。
九尾の狐は清香にとり憑くつもりだったが、 仏壇に合掌して弔う姿を見て、 何もせず又姿を消した。
「何をして居るんだ俺は」
その深夜に九尾の狐は人里にフラフラと出た。
敏感な感覚で今度は彼氏を取られた嫉妬から彼氏を奪った女へ呪いの丑の刻参りをする女を発見した。
「バカめ。 迂闊に呪いなんて掛けるもんじゃない。 ”人を呪わば穴二つ” ってな。 ……懲らしめてやろう」
九尾の狐は丑の刻参りをする女にとり憑いて精神を病ませた。
九尾の狐に憑かれたその女は病院送りになったと言う。
呪いを掛けた女の夢枕に立った九尾の狐は、 教訓を忘れさせない様に、
「人に酷い悪さをしたり、 人の道から外れ呪えば己に帰るのだ。 地獄に落ちたくなければ、 ……覚えておけ」
それを告げると九尾の狐は女から離れた。
女は退院後も九尾の狐の夢を忘れられず、 呪うのを止めると自然と次の新しい彼氏ができた。
茅葺屋根の家で奇妙な”仕事”に慣れて来た清香。
”仕事”と言ってもパソコンと墓地の管理をする住職と応対、 家の周りを箒で掃除したり、 厠にバキュームカーを
呼んだり家の簡単な掃除ぐらいしかなかった。
相変わらず曼珠沙華は切ない程に美しい庭だった。
この頃になると知らぬ間に将虎と清香は恋仲になっていた。
互いを慕う心や、 愛おしい思いや心と言うモノは自分に嘘をつくにも限界があり、 誰にも止められないのだ。
将虎と清香は寄り添い、 互いの手を握っていた。
「清香、 これ程近くにいつも居てもこれ以上近付けない。 俺はこの世の者ではないからな。
願いが叶うならば人に生まれ変わり、 人間界でお前と共に仲睦まじく寄り添い、 年を取りたいものだ……」
今迄将虎は、 恋心を抱かぬ様に自制してわざと清香を名で呼ばなかったが、 最近は清香、 清香と名を呼ぶ様になっていた。
清香は将虎の手に掌を置いた。
「私もよ……。 将虎さんと共にずっと傍に居たい……」
将虎はいつもと違い弱々しく見えたが瞬時にいつもと変わらぬ無表情になった。
「戯言(ざれごと)だ……。 受け流せ」
清香が家に帰ると将虎は暗い部屋でぼんやりと座っていた。
「閻魔である俺が人間の女に恋をするなど……あってはならぬことだ。 清香に対する愛おしいこの思いをどこに持って行けば消えると言うのだ? 俺が孤独なのは今に始まったことではない。 これも己の因果。
俺はずっと孤独だったんだから……今更何を」
そういうと将虎は目を閉じ、 立ち上がって部屋をでた。 そこに九尾の狐が居る。
「俺が思った通りだな。 どうするんだよ閻魔。 あの女は人間でお前は永久(とわ)に地獄を輪廻する身だ。
あの女なら人間界を輪廻するだろう。
住む世界に違い過ぎる。 この家が人間界から消滅する時、 人間のあの女はお前への思慕で心を痛め続けることになるだろう。 俺達にただ一つ未来永劫であるのは地獄のみ。 それでも良いのか」
九尾の狐に背中を向ける将虎。
「お前に言われるまでも無い。 ……人間界からこの家が消滅する時は、 あの女から俺達の記憶を全て消す」
そう言って将虎は九尾の狐から離れ縁側に向かった。
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