「君は保留だった」らしいです

カレイ

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不穏な影

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 ヴィオラとルーカスが結婚して三年が経った。
 夫婦が熱々なのは三年が限界というけれど、ヴィオラは未だにルーカスのことを愛していたし、ルーカスも一途にヴィオラのことを好いてくれていると思っていた。
 でもある時、突然屋敷を訪ねてきたテリーヌは誇らしげに言った。

「あなたの夫、浮気してるわよ」

 初めは、いつものテリーヌの冗談だと思った。
 幸せの絶頂にいるヴィオラを恨んで、ロバートとの仲を引き裂こうとしているのだと。
 だから冷静に返事を返す。

「心配には及びません」
「良いの?相手は公爵令嬢よ?あなたの敵う相手ではないのんじゃないかしら」
「そうなんですか、分かりました。……では要件が済んだのなら帰ってください」
「まったく冷たいわねぇ。幼馴染のあたしがこうして直々に伝えにきてあげたのに。まぁ、でも痛い目見たら、指差して笑うくらいはしてあげるわ」

 テリーヌは不満げな様子で帰っていった。
 それからいつものように夫の帰宅を出迎えて、一緒に食事をとった。
「愛してるよ」と言ってくれる夫は今までと何ら変わりはない。
 やはりテリーヌの言葉は嘘だったのだと、ヴィオラは眠りについた。


 異変が起こったのは、それから二週間後くらいのことだった。
 パーティーがあると言って一人で出席した夫が帰宅した時、ほのかに甘い香水の香りがしたのだ。明らかに女物。
 しかもその夜から、ルーカスはだんだんとヴィオラに対して態度が変わっていった。

「ねぇルーク、今夜もまた遅くなるの?少しくらい早く……」
「君は良いよね、何もしなくても良くて。僕だって少しくらいは休みたいのに。僕が疲れているの知っているんだから、君にはもう少しくらい僕を気遣った言葉言ってほしかったよ」
「……ごめんなさい」
「ああ、別に君が悪いんじゃなくて。僕もちょっと強く言いすぎてしまってごめん。何せ仕事がたてこんでいて。……ごめんね、ヴィオラ。愛してるよ、行ってきます」
「……行ってらっしゃい、ルーク」

 ヴィオラは去っていくルーカスの背中を見送りながら、深いため息を吐く。

 やっぱり、変わってしまった。
 
 それに毎日毎日こんなに帰りが遅いなんておかしすぎる。ちょっとそこをつっこんだだけで怒られた。

「テリーヌの言っていたことは事実だったの……?」

 真摯に愛しているのは私だけで、向こうの気はもう変わってしまったのかもしれない。
 そう思うと、胸を抉られるように無性に苦しくて。
 ヴィオラは思わず玄関で座り込んでしまった。
 
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