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テリーヌの謝罪

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 パーティーに同行することは許されなかった。
 代わりにヴィオラはテリーヌの力を借りてパーティーに行くことに決めた。もちろんルーカスはこのことを知らない。
 主催者は夫の浮気相手だとかいう公爵令嬢の父ーーつまり公爵様は、自分の娘とルーカスの仲は知らないのか快く受け入れてくださった。
 彼に挨拶を済ませたヴィオラとテリーヌは、共に壁の華となり、ルーカスに見つからないように気をつけながら二人で会話をしていた。

「まさかテリーヌにお世話になるなんて」
「あんた私のこと嫌いだものね」
「気づいていたの?」
「ええ、もちろん。だって嫌われることしかしていなかったもの」

 あっけらかんと言ってのけるテリーヌ。

「自覚してるのね」
「昔は……ただあんたのことが嫌いだったのよ。私と同じような境遇のくせして可愛いし、気がきくし」
「あれ、なんか褒められてない?」

 テリーヌってこんな性格だっただろうか。
 やっぱり彼女は変わった。
 ヴィオラが不思議そうにテリーヌを見つめれば、彼女はワイングラスを揺らした。

「でもあんたも意外と不幸な女よね。夫に浮気されるなんて」
「あんた?」
「私はあんたより幸せになることが目標だったけど……」

 テリーヌが向ける目線の方を見れば、彼女の夫は女性と親しげに会話している。こんな人に見られるところで堂々と。

「テリーヌ……」
「結局、後ろ指を刺されるのは私もなのよ。可哀想な女に成り下がるなんて最悪だわ」

 テリーヌも私と同じだったのね。
 だから親身になってくれたわけだ。別に何か企んでいたわけではなく。

「悪かったわ、あんたに長い間嫌がらせして。許して欲しいとは言わないけど……私がもうあんたに何もしないってことくらいは知っといて欲しいわ」
「テリーヌ……。成長するのに時間かかりすぎだわ、あなた」
「うるさいわね、私も色々学んだのよ」

 彼女の顔はよく見れば憔悴している。
 きっと私と同じで、彼女も夫と色々あったのだろう。その気持ちはわかる。

「……まぁでも今回の件は助かったし、私はテリーヌの憧れの存在らしいから許してあげるわ」
「何よそれ」
「あなた素直じゃないものね。憧れと嫉妬を間違えただけよ」
「あんたそういう性格だっけ?」
「私も変わったのよ。それに今のあなたはそんなに嫌いじゃないわ。今までのことは水に流して……はあげないで弱みとして握っておくから安心して」
「何も安心できないじゃない!」

 はーあ、と私は一息ついて言う。

「流石に子爵と婚約させられそうになった時はムカついたけどね」

 すると、テリーヌはとんでもないことを言い出した。

「あれはあなたの夫に頼まれたからよ。あの方、あなたと近づくために私と子爵を利用したのよ」
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