「君は保留だった」らしいです

カレイ

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離婚届

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 パーティーの翌日。
 ヴィオラは放心状態の夫と罵倒し続けてくる義母を無視しながら、公爵様の到着を待っていた。

「浮気なんてルーカスちゃんがそんなこと!そもそも、そんくらいのこと見逃してあげるべきだわ!!」
「………」
「貴方なんかじゃルーカスも満足できないの当然よ。それを公爵様までたらし込んで私たちを陥れようとするなんて!」

 昨日、パーティーから帰ったヴィオラと呆然とする夫を見て、異変に気づいたらしい義母。
 ヴィオラが「離婚します」と笑顔で一言いっただけで昨日からずっとこの調子だ。

「公爵様がご到着になりました」

 執事のジズルは冷静に公爵様の到着を告げる。

「わざわざ足を運んでいただき、ありがとうございます。本来ならばこちらから伺わせていただくところですのに」
「いえいえ」

 公爵様の隣にはダリア様もいる。不貞腐れた顔で誰とも目を合わせようとしない。
 お二人を客室へとお通しすると、侍女のマルが紅茶を淹れる。
 その間誰も言葉を発さない。さっきまで散々ヴィオラのことを責め立てていた義母も、流石に公爵様の前だと萎縮して黙りこくってしまっている。
 やがてティーカップを手にした公爵様が沈黙を破るように口を開いた。

「今日、なぜ私がここに来たのかもうお気づきだと思います」
「…………」
「さっさと始めましょう」

 そうして彼は離婚届とペンをテーブルに置く。見届け人はもちろん公爵様だ。
 ヴィオラはペンを手に取りスラスラとそれを紙の上で走らせた。

「次はルーカス君だね」
「……はい」

 ルーカスはゆっくりとペンを取ると、それを慎重に記入していく。
 そしてある記入欄で目を止めた。

「慰謝料……?」
 
 慰謝料請求の欄を見て彼は目を見開く。このまま普通に離婚できるとでも思っていたのだろうか。

「あんまりですわ、公爵様。うちのルーカスがどうして……」
「当然の結果です。貴方の息子は奥方がいながら私の娘に手を出した。娘も同罪ですので公爵家への慰謝料は要りませんが、奥方への慰謝料はどう考えてもないとおかしい」
「そんな……!同意なんて出来るわけ……」
「同意できなければ、私の権限で侯爵家を潰すだけです」
「「……っ!」」

 サラッと言ってのける公爵様。 
 義母と夫の顔はどんどん血の気が引いていく。

「その額ならば払えないことはないでしょう?屋敷の使用人たちの給料が減ることもない」
「……くっ」

 逆らう術はなかった。
 慰謝料か権威失墜か、などと言われれば、答えはもう出ているようなものだ。
 とうとうルーカスは離婚届に同意の判を押した。
 
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