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さようなら
「それでは、お世話になりました」
ヴィオラとルーカスの離婚が成立してから数日後の朝。
荷物をまとめ終わったヴィオラは、朝食も取らず、横にマルを従えてさっさと玄関を後にした。
今の挨拶は勿論目の前に立つ忌々しい男とその母親にではない。その後ろで綺麗にお辞儀しているジズルを筆頭とする使用人たちに向けてのものだ。
「あー、ヴィオラ、やっぱり少し考え直してくれないか?僕も反省したんだ……」
「ヴィオラさん、そろそろ許してあげてくれない? その~、私も少し言いすぎてしまったところはあるけれど、貴方を心配してのことなのよ。だから……」
「せ、せめて食事だけでも最後の晩餐……というか朝食だけど……」
機嫌取りに必死なルーカスとお義母様の声が後ろから聞こえてくるが、慰謝料が惜しくて今更ヴィオラを手懐けようとしているのだろう。
そんなものは時間の無駄だと、後から追ってきた二人を無視して淡々と馬車に乗り込む。
もう挨拶なら済ませたし、交わす言葉は何もない。この数日で、屋敷の使用人にも一人一人感謝の言葉を伝えた。皆申し訳なさそうな顔で「お力になれず申し訳ございません」と謝ってきたけれど、彼らに非など一つもないので、毎度慌てて否定するのが大変だった。むしろ彼らがいたから辛うじて踏ん張れていたようなものだ。彼らに困ったことがあれば次の就職先を探す手助けをしようと決めている。
「出してちょうだい」
「畏まりました、お嬢様」
従者はよく分かっている。
もうヴィオラは奥様でもなんでもない。
傷物令嬢になってしまったが、ここにいるよりずっと良い。
「待ってくれ……ヴィオラ!そんな簡単に僕を捨てるのか!? 君と愛し合った時間は無駄ではなかったはずだよ!」
「薄情だわ……ヴィオラさん。こんなに冷たい方だとは思わなかったわ」
「ほ、ほんとに行くのか!?まだここに残っても……」
離婚した元夫の家で暮らす女がどこにいる。というか、やっぱり最後は自分のところに戻ってくるという甘えが、ルーカスからは見て取れた。
ここで彼の手を取っても失敗することは目に見えているというのに。
お義母様もお義母様だ。優しい言葉をかけているつもりらしいが、どうにかヴィオラに非を与えたいという汚らしい意志が透け透けだ。
もはや何を言っても白々しい。
最後に一言くらい盛大に嫌味を浴びせてやろう……と思ったがいっそ存在を無視することに決めた。
動き出した馬車の中、一度も窓の外を振り向くことなく、ヴィオラはただじっと前を向いていた。
ヴィオラとルーカスの離婚が成立してから数日後の朝。
荷物をまとめ終わったヴィオラは、朝食も取らず、横にマルを従えてさっさと玄関を後にした。
今の挨拶は勿論目の前に立つ忌々しい男とその母親にではない。その後ろで綺麗にお辞儀しているジズルを筆頭とする使用人たちに向けてのものだ。
「あー、ヴィオラ、やっぱり少し考え直してくれないか?僕も反省したんだ……」
「ヴィオラさん、そろそろ許してあげてくれない? その~、私も少し言いすぎてしまったところはあるけれど、貴方を心配してのことなのよ。だから……」
「せ、せめて食事だけでも最後の晩餐……というか朝食だけど……」
機嫌取りに必死なルーカスとお義母様の声が後ろから聞こえてくるが、慰謝料が惜しくて今更ヴィオラを手懐けようとしているのだろう。
そんなものは時間の無駄だと、後から追ってきた二人を無視して淡々と馬車に乗り込む。
もう挨拶なら済ませたし、交わす言葉は何もない。この数日で、屋敷の使用人にも一人一人感謝の言葉を伝えた。皆申し訳なさそうな顔で「お力になれず申し訳ございません」と謝ってきたけれど、彼らに非など一つもないので、毎度慌てて否定するのが大変だった。むしろ彼らがいたから辛うじて踏ん張れていたようなものだ。彼らに困ったことがあれば次の就職先を探す手助けをしようと決めている。
「出してちょうだい」
「畏まりました、お嬢様」
従者はよく分かっている。
もうヴィオラは奥様でもなんでもない。
傷物令嬢になってしまったが、ここにいるよりずっと良い。
「待ってくれ……ヴィオラ!そんな簡単に僕を捨てるのか!? 君と愛し合った時間は無駄ではなかったはずだよ!」
「薄情だわ……ヴィオラさん。こんなに冷たい方だとは思わなかったわ」
「ほ、ほんとに行くのか!?まだここに残っても……」
離婚した元夫の家で暮らす女がどこにいる。というか、やっぱり最後は自分のところに戻ってくるという甘えが、ルーカスからは見て取れた。
ここで彼の手を取っても失敗することは目に見えているというのに。
お義母様もお義母様だ。優しい言葉をかけているつもりらしいが、どうにかヴィオラに非を与えたいという汚らしい意志が透け透けだ。
もはや何を言っても白々しい。
最後に一言くらい盛大に嫌味を浴びせてやろう……と思ったがいっそ存在を無視することに決めた。
動き出した馬車の中、一度も窓の外を振り向くことなく、ヴィオラはただじっと前を向いていた。
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