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晴れやかな日常
「なかなか美味しいわね」
ティーカップをソーサーに戻しながら、テリーヌは清々しい表情でそう言った。
「良かったわ。それ、昨日わざわざ並んで買いに行った、ティーフラワーの新作なのよ」
「あの人気店にわざわざ買いに行ったの!?暇ねぇ~」
「そういう貴方も、このチョコレートケーキ、わざわざ買いに行ったんでしょう?」
「それ、スウィートバブルの限定品よ。貴重なんだから味わって食べなさいよ!」
「はいはい」
ヴィオラが実家に戻ってからしばらく経った。社交界ではもっぱら話題の今回の不倫騒動。両親はどう反応すれば良いのか分からないらしく、怒ることも慰めることもなく、少し気まずい関係が続いている。
しかしヴィオラが傷心していないとが分かったのか、食事の席などでは他愛のない話をすることも徐々に増えて来た。
テリーヌもヴィオラの協力の元、無事離婚を成立することが出来た。しかも彼女らしく、たんまり慰謝料をぶんどっていった。
彼女の夫は遊び癖が激しかったため敵が多く、評判が地に落ちるのはあっという間だった。
社交会ではヴィオラとテリーヌがよく一緒にいることもあって、傷物令嬢仲間と揶揄されることもあるが、それ以上にルーカスやテリーヌの元夫に厳しい目が向けられていた。それに誰かが突っかかって来ても、テリーヌの気の強さの方が圧倒的に優っており、今ではそういうことも無くなった。
「……そういえば、あなたの元義母、懲りずにまた貴方の悪口言いふらしていたわよ。悪女だとか、息子は騙されただけだとか」
「そんなの放っとくとが一番よ」
「まぁそうね。こっちが何もせずとも、勝手に評判は急降下だもの。……だって、貴方のところの場合は公爵様が絡んでいるのよ? 貴方を非難することは、遠まわしに公爵様の判断が間違っていると言っているようなものだというのに」
「そうよねぇ。あの方、あんなに頭悪かったかしら」
社交界では爪弾きにされていると聞く。
「ダリア様も婚約破棄されて、反省するまで修道院送りのようよ。不倫は重罪だもの。よくある事だけれど……バレたら終わり。公爵家の名誉より真実を優先した公爵様は尊敬に値するわ。愛妻家として有名なお方だから、不倫なんて許すまじき事だったのでしょうね」
「あのお方には感謝しかないわ。丁寧にお断りしたけれど、慰謝料も払うと言ってくれたし。……むしろその誠実さが今では評価されていると聞くわ」
「ええそうね。でも、もし評判が少し落ちても、一筋縄ではいかないあのお方なら、あっという間に元通りよ」
「それもそうね」
ふっと笑ってケーキを一欠片、口に入れる。
舌の上であっという間に溶けて無くなったそれは、甘さも口溶けもこの上なく極上だ。
「そうそう、ヴィオラ。あなた、良い人出来た?」
「そんな人がいれば、ここで貴方とお茶なんて飲んでないわよ。……そういうテリーヌは?」
「バカね。私は今の生活を気に入っているのよ。モテモテだけど、全て断っているわ」
「モテモテって……年上ばっかじゃない」
「っ!私の魅力は人生経験の浅い人にはわからないのよっ!」
プイッとそっぽを向いたテリーヌに、ヴィオラはコロコロと笑う。
そして「私ももう少しくらいこの生活を楽しんでも良いかな」と心の中でテリーヌに同意した。
ティーカップをソーサーに戻しながら、テリーヌは清々しい表情でそう言った。
「良かったわ。それ、昨日わざわざ並んで買いに行った、ティーフラワーの新作なのよ」
「あの人気店にわざわざ買いに行ったの!?暇ねぇ~」
「そういう貴方も、このチョコレートケーキ、わざわざ買いに行ったんでしょう?」
「それ、スウィートバブルの限定品よ。貴重なんだから味わって食べなさいよ!」
「はいはい」
ヴィオラが実家に戻ってからしばらく経った。社交界ではもっぱら話題の今回の不倫騒動。両親はどう反応すれば良いのか分からないらしく、怒ることも慰めることもなく、少し気まずい関係が続いている。
しかしヴィオラが傷心していないとが分かったのか、食事の席などでは他愛のない話をすることも徐々に増えて来た。
テリーヌもヴィオラの協力の元、無事離婚を成立することが出来た。しかも彼女らしく、たんまり慰謝料をぶんどっていった。
彼女の夫は遊び癖が激しかったため敵が多く、評判が地に落ちるのはあっという間だった。
社交会ではヴィオラとテリーヌがよく一緒にいることもあって、傷物令嬢仲間と揶揄されることもあるが、それ以上にルーカスやテリーヌの元夫に厳しい目が向けられていた。それに誰かが突っかかって来ても、テリーヌの気の強さの方が圧倒的に優っており、今ではそういうことも無くなった。
「……そういえば、あなたの元義母、懲りずにまた貴方の悪口言いふらしていたわよ。悪女だとか、息子は騙されただけだとか」
「そんなの放っとくとが一番よ」
「まぁそうね。こっちが何もせずとも、勝手に評判は急降下だもの。……だって、貴方のところの場合は公爵様が絡んでいるのよ? 貴方を非難することは、遠まわしに公爵様の判断が間違っていると言っているようなものだというのに」
「そうよねぇ。あの方、あんなに頭悪かったかしら」
社交界では爪弾きにされていると聞く。
「ダリア様も婚約破棄されて、反省するまで修道院送りのようよ。不倫は重罪だもの。よくある事だけれど……バレたら終わり。公爵家の名誉より真実を優先した公爵様は尊敬に値するわ。愛妻家として有名なお方だから、不倫なんて許すまじき事だったのでしょうね」
「あのお方には感謝しかないわ。丁寧にお断りしたけれど、慰謝料も払うと言ってくれたし。……むしろその誠実さが今では評価されていると聞くわ」
「ええそうね。でも、もし評判が少し落ちても、一筋縄ではいかないあのお方なら、あっという間に元通りよ」
「それもそうね」
ふっと笑ってケーキを一欠片、口に入れる。
舌の上であっという間に溶けて無くなったそれは、甘さも口溶けもこの上なく極上だ。
「そうそう、ヴィオラ。あなた、良い人出来た?」
「そんな人がいれば、ここで貴方とお茶なんて飲んでないわよ。……そういうテリーヌは?」
「バカね。私は今の生活を気に入っているのよ。モテモテだけど、全て断っているわ」
「モテモテって……年上ばっかじゃない」
「っ!私の魅力は人生経験の浅い人にはわからないのよっ!」
プイッとそっぽを向いたテリーヌに、ヴィオラはコロコロと笑う。
そして「私ももう少しくらいこの生活を楽しんでも良いかな」と心の中でテリーヌに同意した。
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