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3、婚約者の裏切り
私はティアナ様に向き合うと言った。
「私を捕らえても良いですが、その前にその腕のあざが偽物かそうでないのか確かめてからにしましょう」
「……っやめて!嘘よっ。そんなの私に近づくための口実に過ぎないわ。助けて、危害を加えられる!」
ティアナ様の終わりの動揺っぷりに、なかには彼女のことを不審に思う者も出て来る。
「あそこまで動揺するってあやしくないか?」
「アンジェリカ様を前にしていた時は、それほどでもなかったのに」
「レイラ様の仰っていることが事実だから慌てているんじゃないのか?」
形勢逆転。不利になった自分に気づいたのか、ティアナ様がギリリと歯を鳴らす。そんな彼女を見て、王太子の顔が驚きに満ちた。それでも私はまだ話を続けた。
「別に私でなくても、誰かしら他の方がティアナ様の腕の痣に水をかけてみれば良いのです」
「痛いから嫌だわ!」
「では、濡れたハンカチを当ててみては?木綿のハンカチーフならば柔らかくダメージも少ないでしょう?」
……もし、本当に怪我をしているのでしたら。
ティアナ様は周りの視線を忘れ、完全に私を睨みつけてくる。
「~~っ!」
「そうです! ダリル王子が拭って差し上げたら?彼だったら、ティアナ様も安心でしょう?」
「そ、そうだな!私がやろう。まさかティアナが嘘を吐くなんてことないしな。大丈夫だ。きっと、大丈夫」
濡れたハンカチは、それまでずっと黙っていたアドルフ様がそそくさと用意をしてくれた。しかもメイク後がわかりやすい白色。
それを王子に手渡すと、彼は「大丈夫、大丈夫」と呪文のように唱えながら、ティアナ様の腕を取る。
「嫌、やめてっ」
「痛いのは一瞬だから我慢してくれ。俺がお前の疑いを晴らしてやるから!」
ティアナ様は口ではそう言うものの、さすがに王子相手には手を出せないのか大人しい。
王子はティアナ様の腕に優しくハンカチを当てると、それをゆっくりと擦らせた。
「なんだ、これは……」
「まぁ、ハンカチが青くなっているわ!」
「やっぱり、メイクだったってことよね」
「そうだとしたら自作自演をしたのか」
「何て最低なの」
ハンカチを見ても、ティアナ様の腕を見ても、彼女の自作自演はバレバレだった。
「どういうことだティアナっ!」
慌てて王子がティアナ様に詰め寄ると、彼女は王子から視線を逸らした。
「……くっ、まさかこの俺が騙されるなど!」
膝から崩れ落ちる王子に、アドルフ様が得意げに言い放つ。
「これでアンジェリカ様の無実は証明されましたね」
アドルフ様は満面の笑みで私を見ます。
……まるでアドルフ様がことを解決したように言っていますけれど、これはほぼ私の手柄ではないでしょうか?
「レイラ嬢、ありがとう。君の協力に感謝します」
「?ええ」
……それにどうしてそんな他人行儀なのでしょうか。婚約者なのだからそこまで固くならなくても。
アドルフ様の様子がおかしいと首を捻るが、その理由はすぐに判明することとなる。
なぜなら、アドルフ様がアンジェリカ様の前で片膝を付いてこう言ったから。
「アンジェリカ様、この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
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