今さら救いの手とかいらないのですが……

カレイ

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4話

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 その日オデットは、食堂の二人席で一人、ランチを食べていた。
 いまだにオデットの肩を持ってくれる人々もいたけれど、彼らに迷惑はかけられないとオデットの方から歩み寄ることはやめたのだ。
 

 ーーねぇ、オデット様だわ。
 ーーオデット様って、シェリーシア様へ当たり散らしたって有名の方よね。
 ーー今も裏で嫌がらせされてるみたいよ。
 ーーテオドール様って、なかなか学園生活に慣れないシェリーシア様のために、いろいろ教えてあげてるんだよな。
 ーーオデット様もそれくらい許してやれば良いのに。

 居心地は決して良くない。
 背筋を伸ばしていないと潰れてしまいそうなほどに。
 

 テオドールは、どうしてあそこまでシェリーシア様のことを気にするのかしら。やはり特別な感情を持っているから……?だとしても、婚約者として私はシェリーシア様に注意しなければならないのに。

 自分の胸の内を誰にも打ち明けられず、溜まりに溜まった不満がオデットを包みこむ。
 そんな時だった。

「オデット、ここ変わってもらっても良いかな?」

 頭上から聞きなれた声が降りかかる。
 オデットが顔を上げると、やはりテオドールの姿が。その横に、さも当然のようにシェリーシアが立っている。
 テオドールはオデットの機嫌を伺うように、申し訳なさそうな顔でこちらを見てきた。

「どうしても空いている席が見つからなくて……悪いけど、オデットはもう食べ終わりそうだし、早いこと変わってもらえないかな」

 シェリーシアを早く座らせてあげたいーーと呟いたテオドールに、オデットは何も言わずに立ち上がる。

「使いたければ、お好きにどうぞ」

 感じが悪いのは自分でもわかる。
 でも文句を言うだけ聞き入れてはくれないのは分かっていたし、かといって、笑顔で譲るのもテオドールとシェリーシアに負けたと言ったようなものなので出来なかった。

「あ、ありがとう」

 何も言ってこないオデットに、テオドールは驚きながらも素直に礼を言った。
 食べ途中の食事をのせた盆を持ってオデットは席を立つ。
 他に空いている席が確かに見つからなかったが、そんなオデットに声をかけてきたのはルイーズだった。
 食べ終わるから使ってくれーーとオデットのために席を空けてくれたルイーズに、オデットは疑問を覚えた。
 今のオデットと付き合っても何ら利益はなく、むしろマイナスになってしまうことは、聡いルイーズならよく理解していると思うのだが……。
 しかし食べ途中の盆を下げることにならなくて良かったと、オデットは礼を言ってありがたく座ることに。
 それを見て、ルイーズは満足気に去っていった。
 
  あの時は、貴族なんて皆利益絡みで親しくしているものだと思っていたな。ルイーズがそうじゃないって今なら分かるけど。……ルイーズには随分と助けられたなぁ。

 そんな感じの日々に終止符が打たれたのは、数ヶ月ほど前のことであった。
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