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3.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、家族が破滅フラグを立ててしまうみたいです。
神はまだ俺を見放していなかったーーーーーー!!
しおりを挟む硬直しながら、走馬灯のように流れる俺のバッドエンド(ヒーローらがハッピーエンドを迎えるエンディングで流れる、俺の断罪後の画像)を思い起こしていると、急にふわりと身体が暖かくなった気がした。
あ、そうだ。俺は平民聖女ユリアーナにバックドロップされるんじゃなかったのか? ならこの幸せな浮遊感は、俺の身体が宙を舞ってる感覚なのか――
「はいっ。癒しの、ぽかぽかハグ魔法完了ですぅ!」
ぐはぁっ!! 密着しながらの上目遣いに、頬を桃色に赤らめてのペロリと舌出し!! なんて三段攻撃だ!! しかも肉体攻撃を受けるかと身構えていたところに、俺みたいな陰キャには抵抗力もなく、受け止めることも出来ない精神攻撃を仕掛けてくるとはぁぁぁ!!
昨日の仕返しなのか!? 王妃様の恰好をして、夜中の筋肉の育成に必要な睡眠を邪魔したのが、俺だと分かっていての報復なのか!? おっ……恐ろしい娘だ!
「なっ……! ユリーナ様っ、何度言ったら分かるんですの!? 聖女の立場にありながら、そのように婚約者でもない殿方に馴れ馴れしくなさるなんてはしたないですわ!」
俺が戦慄いていると、いつも通りの攻略対象女子が更に近付いてくる。見ずとも分かる、この世界の主人公『あああ』の婚約者であり、魔術師団長の娘ソルドレイドだ。破滅フラグ回避のため、メイン攻略対象には極力近付きたくない俺に、彼女らは何故か魔境に踏み入る戦士の如く近付いてくる。くっ……、これも悪役を排除せんとする世界の強制力ってやつなのか!? この世界はどうしても悪役の俺に破滅フラグを乱立させて、俺を潰したいのか!?
「クリスティアナ姫だってしてたですぅー!」
平民聖女ユリーナと魔術師団長の娘ソルドレイドが、次々に手を伸ばして俺の上腕二頭筋を掴もうと迫って来る。
登校する生徒らが遠巻きに見守る人垣の向こうには、やはりいつも通り現れる主人公『あああ』が、必死の形相でこちらに猛ダッシュして来るのが見える。
主人公に断罪される俺を想像して固まっていると、ソルドレイドが俺の視線の先に居る婚約者の姿に気付き――「風の偉大なる精霊シルフよお力を。突風よ唸れ」と唱えて、立てた指先を『あああ』の足元に向けてスッと振る。彼に追い風を吹かせて、脚が早まるよう魔法で後押ししたんだろう。
終わった……。俺はここで彼女たちに拘束されたまま、辿り着いた主人公に、今度こそ断罪されてしまうんだ。
頬を静かに涙の筋が伝うのを感じていると、ユリアーナとソルドレイドが息を飲んで拘束が弱まった。さらに人垣がざわつくから、そちらを見遣れば、後押しする魔法が強すぎたのか、主人公がひっくり返って藻掻いていた。
神はまだ俺を見放していなかったーーーーーー!!
朝の腕立て伏せで、角砂糖を運べなくて困っていた蟻さんの手伝いをした善行が、神様の琴線に触れたのかもしれないぜ! 悪役の俺に、偶然巡って来た数少ない好機! これを逃すわけにはいかない。
取り敢えず、まだ何か言って上腕二頭筋に触れてこようとするヒロイン達と、ようやく立ち直ってこちらに向かってこようとする主人公からは、猛ダッシュで逃げた。
ヒロイン達の声が更に俺を追い掛けてくる。
俺の『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』悪役生活はまだまだ続く。気を抜けば、今地面から憎々し気な視線を送って来る主人公に断罪されて僻地の強制収容所送りになるか、男娼に堕とされるか……とにかくゲーム通りならロクでもない未来が待ち受けている!!
事あるごとにゲーム補正が働く学園生活を無事に過ごす事が出来るのか!?
俺の穏やかな筋トレライフの破滅フラグ回避生活は、終わらない。
今回は、筋トレ控えめだったけどな!
《完》
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