【短編集】おとなし男子の悪役転生!ヒロインとか興味ないので筋トレしてたら、恋愛フラグが乱立してたみたいです。

弥生ちえ

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番外編.彼の名は筋肉仮面! 断罪の運命に抗う悲劇のヒーローである!

誰もが俺の正体に気付くことは無い。

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 俺ことヒロイキ・アークドールは、泣く子も黙る、どっかのマフィア顔負けの黒い噂のたえないブラックマン伯爵家の長男だ。親父の妾の一人から生まれた。

 そんな俺の悩みは、毒親であるブラックマン伯爵のことでも、食うに事欠き暴力をも振るわれる生育環境でも、前世から引き続いてのとんでもないコミュ障で、女子どころか同性でも陽キャは無理な大人し男子だということ――でもない。

 ギャルゲー『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』に瓜二つの、この世界に生まれ落ちた俺が、「悪役」兼「当て馬」で、主人公とヒロインが結ばれる一方、「追放」「処刑」「男娼堕ち」の各種の堕ちルートが展開されるキャラだと云うことだ!

 なんて非情な人生だ。

 学園入学と同時に前世の記憶が蘇り、前世の陰キャライフから解き放たれたと歓喜したと同時に、とんでもない環境に転生させられてしまった事実に打ちのめされた。けれど今世の俺は既に、筋トレによって現実逃避と心身の鍛練を行い、ゲームに描かれる超女好きな極悪人予備軍とは程遠い成長を遂げているはずだ。

 前世と変わらない陰キャになっている気がしないでもないでもない……が、ゲーム世界の俺の末路を知り、本家ヒロイキとは違っている俺の性格のお陰で、悪役への道からは逸れている気もする。

 だが、その俺をゲーム通りの悪役へと追い立て、破滅フラグをタケノコの如くピョコピョコと何本も打ち立てようとするのが、親父だ。

 奴は、今日も今日とてコツコツと悪事を企てている。

 悪役を必要とする、このゲーム世界の強制力なのか!? だが俺はそんな運命には負けん!! 毒親の立てた破滅フラグを何本でもへし折るために、今日も夜の街に繰り出して行く!!!

「助けて! 筋肉仮面様!!!」

 人気のない夜道に、女性のか細い悲鳴が響き渡る。

 いや、誰? その筋肉仮面って怪しい名前……。仮面に繋がるなら「タキシード」か「ライダー」なんじゃないの!? 怪しすぎん?

 引っ掛かりを覚えながらも、破滅フラグを折るために、俺は声の主の元へと急ぐ。

 今日ここで、ブラックマン伯爵の配下が、騒ぎを起こす情報は得ていた。なんと国王の覚えもめでたく、王国で高い地位と財を築いている魔術師団長の力を削ごうとしているのだ。彼に精神的ダメージを与えるには、一人娘ソルドレイドを葬り去れば良いと考えたらしい。父親は手強過ぎるから、身近な女子供に手を掛けるなんて、我が親ながら屑だな! なにより俺の同級生であり、ゲーム主人公の幼馴染でメインルートのヒロインって云う、最強カードに、なんて事しようとしてくれてるんだぁーーーー!!

「筋肉仮面様ぁぁーーーっ!」

 呼ぶ声は、更に大きく響き渡る。けどちょっと違和感がある。魔術師団長の娘ソルドレイドは、自身も風魔法の名手だったはず。なのに何で攻撃音の一つも響いてこないんだ?

 いや、細かいことは考えまい。これも破滅への道を塞いで、俺自身の生存ルートを確保するためのタスクだ!

 おし、今日も行くぞ!! 気合十分、身バレ防止の平民なら誰もが手軽に入手出来、所持している衣服『白いランニングシャツ』に、布面積少な目で経済的に優しい『黒短パン』の着用完了! 仕上げに、平民聖女ユリアーナから貰った「個性を消して顔の印象が分かりにくくなる」ド派手なピンクの孔雀の飾り羽を左右に立てた仮面を着ける。

 これで、誰もが俺の正体に気付くことは無い。
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