【完結】女神が『かぐや姫』なんて! ~ 愛され令嬢は実利主義!理想の婿を追い求めたら、王国の救世主になりました~

弥生ちえ

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第四章 女神降臨編

いや、出来ないこと多すぎでしょ!?

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 遠くに感じていた魔物の気配は、何故か近付いて来る事なく、遠隔地に留まるままだったり、立ち消えたりして、一応の危機は免れたみたいだった。

 後から分かった事によれば、それは騎士団やハディス、ポリンドらが討伐してくれた為だったり、巨大トレントとなったムルキャンとイシケナルによる各所での撃退が効いた為だったりしたみたいだけれど、その時のわたしはそれどころじゃなかった訳で―――


 今そこにある危機――月の忌子ワイバーンによる襲撃は、待った無し状態で中天の太陽の中からの急降下の形で、わたしたちの前に現れた。

「嫌―――!!連戦なんて聞いてないしぃ―――!とにかく回避よ!回避!!命大事に・よ!大切な命をこんな所で散らしちゃダメ!兵士の皆さんも、がんばって避けてください―――!!」

 叫びながら走り回るわたしから、桜色の欠片が噴き出して周囲の兵士たちに飛んで行く。
 すると、先程のベヒモスとの戦いによる疲労から、未だ回復しきっていなかった兵士たちは、淡い桜色の光に包まれるや必死の回避行動を取り始めた。

「え!?うそ、わたし操ったりしてないよね!?」
「不躾な輩が、勝手に桜の君の応援を、魅了の力に履き違えて行動するのでしょうね。不快なら灰燼に帰すことも可能ですが?」
「や、それは止めて」

 確かに、これまでも応援したことによって頑張ってくれる人達は居たけど、それって魔法は関係ない気がするし。誰かの力になるのなら、どれだけでも応援するわ。

 まして、今わたしが声援を送るのは、命を懸けての戦いじゃなくって、生きるための回避だから!


 地面を転がり、物陰に隠れ、相手の隙を見て走り回って攪乱して、ワイバーンの爪や牙が届きそうな兵士があれば、石礫を投げ付けて気を引いてまた逃げる。強化の魔法以外で、わたしが出来るのはその程度の助けでしかないけど、わたしの桜色の魔力が兵士たちを生かすならもう少し助けたいと思った。
 けど、そんな浅はかな考えのお陰で、完全に戦場から離れるタイミングを逃してしまったみたい!!

「まずいわ、オルフェ!ワイバーンを倒すのと、貴方の隠遁を使う以外に、安全にこの場を収める方法って無いかしら!?」

 側にぴったりと付き従いながら、ひらひらと華麗にワイバーンの攻撃を躱しているオルフェンズに詰め寄ると、薄い笑みが凍り付いた様にピシリと固まった気がした。

「―――――無理でしょう」

 それでも、やや間をおいて返答があったのは、彼なりに考えてくれたからなのかそれとも……

「まさか逃げようというお考えがあるなどとは、とても思えない行動だったので……―――驚きました」

 いつもより見開かれたアイスブルーの目が、表情の乏しいオルフェンズの驚きの心情を強く物語ってる。うん、ごめん。行動と考えが一致しないほどの考え無しなわたしで。

 けど、兵士たちはさすがに戦う訓練を積んだプロらしく、回避行動を取りつつも、攻撃への切り替えを狙った陣形の立て直しを着々と整えていっている。

『ギャァァァ―――ァァッ!!』

 時折、兵士たちの攻撃が当たったワイバーンの咆哮が耳に入るようになって来た。
 頼もしいと思う反面、決め手に欠ける攻撃な気がしてならない。何故なら、前回ワイバーンを倒した時の手強さをまだ鮮明に覚えているから。

 だから必死で逃げようとしているのに、兵士たちは必死で戦う。

「回り込め!奴を町に近付けさせるな!!」
「羽を狙うんだ、落とせ!!家族を守るぞ!」

 泥だらけ、傷だらけで戦う兵士たちが死に物狂いで上げる声に、彼らの矜持が全部含まれていた。

 つくづく場違いなところに顔を突っ込んだものだって後悔もあるけど、わたしの力が兵士達をちょっとでも助けられるなら、ここに留まって力を貸すことに異存は無い。とは言っても、ハディスみたいに膂力を上げることも出来なければ、イシケナルみたいに生成なまなりを使役することも出来ない、アポロニウス王子みたいに弱化で魔物の力を削ぐことも出来ない、ミワロマイレみたいに長く戦える力を与えることも出来ない、ポリンドみたいに皆を癒すことも出来ない…………?
 いや、出来ないこと多すぎでしょ!?

「はは……悩んでも仕方ないわね!わたしはただの令嬢だから、わたしなりに出来ることをやって手助けするしかないわ!」

 両手で自分の頬を挟む様にパチンと叩いて気合を入れたわたしは、足元の漬物石大の瓦礫を拾い上げると、ワイバーン目掛けてドッジボール仕込みの魔力を纏った投擲を披露した。
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