306 / 385
第四章 女神降臨編
いや、出来ないこと多すぎでしょ!?
しおりを挟む
遠くに感じていた魔物の気配は、何故か近付いて来る事なく、遠隔地に留まるままだったり、立ち消えたりして、一応の危機は免れたみたいだった。
後から分かった事によれば、それは騎士団やハディス、ポリンドらが討伐してくれた為だったり、巨大トレントとなったムルキャンとイシケナルによる各所での撃退が効いた為だったりしたみたいだけれど、その時のわたしはそれどころじゃなかった訳で―――
今そこにある危機――月の忌子による襲撃は、待った無し状態で中天の太陽の中からの急降下の形で、わたしたちの前に現れた。
「嫌―――!!連戦なんて聞いてないしぃ―――!とにかく回避よ!回避!!命大事に・よ!大切な命をこんな所で散らしちゃダメ!兵士の皆さんも、がんばって避けてください―――!!」
叫びながら走り回るわたしから、桜色の欠片が噴き出して周囲の兵士たちに飛んで行く。
すると、先程のベヒモスとの戦いによる疲労から、未だ回復しきっていなかった兵士たちは、淡い桜色の光に包まれるや必死の回避行動を取り始めた。
「え!?うそ、わたし操ったりしてないよね!?」
「不躾な輩が、勝手に桜の君の応援を、魅了の力に履き違えて行動するのでしょうね。不快なら灰燼に帰すことも可能ですが?」
「や、それは止めて」
確かに、これまでも応援したことによって頑張ってくれる人達は居たけど、それって魔法は関係ない気がするし。誰かの力になるのなら、どれだけでも応援するわ。
まして、今わたしが声援を送るのは、命を懸けての戦いじゃなくって、生きるための回避だから!
地面を転がり、物陰に隠れ、相手の隙を見て走り回って攪乱して、ワイバーンの爪や牙が届きそうな兵士があれば、石礫を投げ付けて気を引いてまた逃げる。強化の魔法以外で、わたしが出来るのはその程度の助けでしかないけど、わたしの桜色の魔力が兵士たちを生かすならもう少し助けたいと思った。
けど、そんな浅はかな考えのお陰で、完全に戦場から離れるタイミングを逃してしまったみたい!!
「まずいわ、オルフェ!ワイバーンを倒すのと、貴方の隠遁を使う以外に、安全にこの場を収める方法って無いかしら!?」
側にぴったりと付き従いながら、ひらひらと華麗にワイバーンの攻撃を躱しているオルフェンズに詰め寄ると、薄い笑みが凍り付いた様にピシリと固まった気がした。
「―――――無理でしょう」
それでも、やや間をおいて返答があったのは、彼なりに考えてくれたからなのかそれとも……
「まさか逃げようというお考えがあるなどとは、とても思えない行動だったので……―――驚きました」
いつもより見開かれたアイスブルーの目が、表情の乏しいオルフェンズの驚きの心情を強く物語ってる。うん、ごめん。行動と考えが一致しないほどの考え無しなわたしで。
けど、兵士たちはさすがに戦う訓練を積んだプロらしく、回避行動を取りつつも、攻撃への切り替えを狙った陣形の立て直しを着々と整えていっている。
『ギャァァァ―――ァァッ!!』
時折、兵士たちの攻撃が当たったワイバーンの咆哮が耳に入るようになって来た。
頼もしいと思う反面、決め手に欠ける攻撃な気がしてならない。何故なら、前回ワイバーンを倒した時の手強さをまだ鮮明に覚えているから。
だから必死で逃げようとしているのに、兵士たちは必死で戦う。
「回り込め!奴を町に近付けさせるな!!」
「羽を狙うんだ、落とせ!!家族を守るぞ!」
泥だらけ、傷だらけで戦う兵士たちが死に物狂いで上げる声に、彼らの矜持が全部含まれていた。
つくづく場違いなところに顔を突っ込んだものだって後悔もあるけど、わたしの力が兵士達をちょっとでも助けられるなら、ここに留まって力を貸すことに異存は無い。とは言っても、ハディスみたいに膂力を上げることも出来なければ、イシケナルみたいに生成を使役することも出来ない、アポロニウス王子みたいに弱化で魔物の力を削ぐことも出来ない、ミワロマイレみたいに長く戦える力を与えることも出来ない、ポリンドみたいに皆を癒すことも出来ない…………?
いや、出来ないこと多すぎでしょ!?
「はは……悩んでも仕方ないわね!わたしはただの令嬢だから、わたしなりに出来ることをやって手助けするしかないわ!」
両手で自分の頬を挟む様にパチンと叩いて気合を入れたわたしは、足元の漬物石大の瓦礫を拾い上げると、ワイバーン目掛けてドッジボール仕込みの魔力を纏った投擲を披露した。
後から分かった事によれば、それは騎士団やハディス、ポリンドらが討伐してくれた為だったり、巨大トレントとなったムルキャンとイシケナルによる各所での撃退が効いた為だったりしたみたいだけれど、その時のわたしはそれどころじゃなかった訳で―――
今そこにある危機――月の忌子による襲撃は、待った無し状態で中天の太陽の中からの急降下の形で、わたしたちの前に現れた。
「嫌―――!!連戦なんて聞いてないしぃ―――!とにかく回避よ!回避!!命大事に・よ!大切な命をこんな所で散らしちゃダメ!兵士の皆さんも、がんばって避けてください―――!!」
叫びながら走り回るわたしから、桜色の欠片が噴き出して周囲の兵士たちに飛んで行く。
すると、先程のベヒモスとの戦いによる疲労から、未だ回復しきっていなかった兵士たちは、淡い桜色の光に包まれるや必死の回避行動を取り始めた。
「え!?うそ、わたし操ったりしてないよね!?」
「不躾な輩が、勝手に桜の君の応援を、魅了の力に履き違えて行動するのでしょうね。不快なら灰燼に帰すことも可能ですが?」
「や、それは止めて」
確かに、これまでも応援したことによって頑張ってくれる人達は居たけど、それって魔法は関係ない気がするし。誰かの力になるのなら、どれだけでも応援するわ。
まして、今わたしが声援を送るのは、命を懸けての戦いじゃなくって、生きるための回避だから!
地面を転がり、物陰に隠れ、相手の隙を見て走り回って攪乱して、ワイバーンの爪や牙が届きそうな兵士があれば、石礫を投げ付けて気を引いてまた逃げる。強化の魔法以外で、わたしが出来るのはその程度の助けでしかないけど、わたしの桜色の魔力が兵士たちを生かすならもう少し助けたいと思った。
けど、そんな浅はかな考えのお陰で、完全に戦場から離れるタイミングを逃してしまったみたい!!
「まずいわ、オルフェ!ワイバーンを倒すのと、貴方の隠遁を使う以外に、安全にこの場を収める方法って無いかしら!?」
側にぴったりと付き従いながら、ひらひらと華麗にワイバーンの攻撃を躱しているオルフェンズに詰め寄ると、薄い笑みが凍り付いた様にピシリと固まった気がした。
「―――――無理でしょう」
それでも、やや間をおいて返答があったのは、彼なりに考えてくれたからなのかそれとも……
「まさか逃げようというお考えがあるなどとは、とても思えない行動だったので……―――驚きました」
いつもより見開かれたアイスブルーの目が、表情の乏しいオルフェンズの驚きの心情を強く物語ってる。うん、ごめん。行動と考えが一致しないほどの考え無しなわたしで。
けど、兵士たちはさすがに戦う訓練を積んだプロらしく、回避行動を取りつつも、攻撃への切り替えを狙った陣形の立て直しを着々と整えていっている。
『ギャァァァ―――ァァッ!!』
時折、兵士たちの攻撃が当たったワイバーンの咆哮が耳に入るようになって来た。
頼もしいと思う反面、決め手に欠ける攻撃な気がしてならない。何故なら、前回ワイバーンを倒した時の手強さをまだ鮮明に覚えているから。
だから必死で逃げようとしているのに、兵士たちは必死で戦う。
「回り込め!奴を町に近付けさせるな!!」
「羽を狙うんだ、落とせ!!家族を守るぞ!」
泥だらけ、傷だらけで戦う兵士たちが死に物狂いで上げる声に、彼らの矜持が全部含まれていた。
つくづく場違いなところに顔を突っ込んだものだって後悔もあるけど、わたしの力が兵士達をちょっとでも助けられるなら、ここに留まって力を貸すことに異存は無い。とは言っても、ハディスみたいに膂力を上げることも出来なければ、イシケナルみたいに生成を使役することも出来ない、アポロニウス王子みたいに弱化で魔物の力を削ぐことも出来ない、ミワロマイレみたいに長く戦える力を与えることも出来ない、ポリンドみたいに皆を癒すことも出来ない…………?
いや、出来ないこと多すぎでしょ!?
「はは……悩んでも仕方ないわね!わたしはただの令嬢だから、わたしなりに出来ることをやって手助けするしかないわ!」
両手で自分の頬を挟む様にパチンと叩いて気合を入れたわたしは、足元の漬物石大の瓦礫を拾い上げると、ワイバーン目掛けてドッジボール仕込みの魔力を纏った投擲を披露した。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる