【完結】異世界でシッポの可愛い嫁をもらいました。美少女です

ぼん@ぼおやっじ

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第7話 脱出

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※ 鈴木真理雄。主人公。異世界に落っこちる。あだ名はマリオン。
※ 〝あいつ〟〝彼〟長年封じ込められていた半神霊的存在。よくわからない存在。

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 第7話 脱出 

 まず魔力視の方法を教えよう。

 それは特に覚えるようなものではなく今あるものの使い方だった。
 “彼”は視覚のほかに魔力で周囲を知覚している。
 そこに魔力があればその魔力から情報を得て周囲を知覚できるらしい。

 なるほど、だからペークシスに閉じ込められた状態で俺が見えたわけか。

『この世に存在するものは魔力を内包している。
 そして生きとし生きるものは魔力を放出している。
 普通はごく薄く意味をなさないものだが、魔力回路を持っていれば濃度を上げることはできるし、その反射を受け取って情報として処理することもできるだろう。
 例えばこうやるのだ』

 そういうと“彼”から波のような力が押し寄せた。断続的に、薄いところと濃いところが…
 つまりこれはレーダーとかソナーとかそういうものなのだ。

 真似をしてやっててみる。

 俺の放出する魔力は砕けたペークシスに当たって跳ね返る。
 その情報が俺の中で形になっていく。そこにどんな形がしたものがあるのか見なくてもわかるのだ。

「うん、すごい」
『うむ、うまい』

 魔力の質を上げて一点に集中することでより正確に対象を解析できる。
 そうすれば形ばかりではなく内部やその存在が持つ魔力の性質や構造も見えるだろう。そう教わった。

 だがここでは試しようがない。
 “彼”に対して使ってみたがそちらの方が魔力濃度が高くて全く見えないのだ。太陽を直視できないようなものだな。

『これの欠点は見えるものが何なのか自分で学んでいかないといけないことだ』

 ・・・・・・うん、これは分かる。
 例えば飛行機を見ても飛行機というものが何なのか知らなければそれは理解できないし、知識がなければ内部構造が見えてもその意味も分からないだろう。
 それを理解するには紐づける知識が必要で、それは自分で学んでいかないといけないということだ。

 なるほど、ずっと使っていくと役に立つかもしれない。

『よろしい、正しい理解だ。さて、次に行こう』

 そういうと“彼”は向きを変えた。

『そしてお前がいつもいじっていたおもちゃ。あれも大量の源理力を浴びで変質している。少しいじってみるとしよう』

 俺は言われた通りにエアガンを持ってくる。

『うむ、力が浸み込んで【魔性変異】を起こしている。これなら本当の武器として使えるだろう』

 魔性変異に関しては教わったことがある。
 大量の魔力が満ちる空間に何かを置いておくと長い年月の間に魔力と結びつき変質することがある。不思議な能力を持ったり、ものすごく頑丈になったりする現象だ。

『これは友の話によれば高圧のガスによって弾丸を飛ばすおもちゃだと言ったな。なかなか面白い変化をしているぞ』

 あいつのAUGは変わり果てた姿…ではなく存在になっていた。

 強化プラスチックや金属部品は魔力と結びついて、よくわからない上等な物質に変化している。
 本来ガスを注入するタンクは高濃度の魔力をため込むように変質している。
 引き金を引くとパパパッと淡い光がはしる。

「おおー、ビームマシンガン」

 まあ打ち出されてるのは魔力なんだが…
 マガジンの空洞が魔力の塊のようなもので満たされていて、その引き金を引くたびにガスが消費されるように魔力か打ち出されるのだ。
 当然撃てば魔力が減るのだが、どうも持っている俺からどんどん魔力が供給されて一定濃度を保つらしい。

「すげー」

『ふむ…試しにそのマガジンに魔法をかけてみろ。そうだな、天より降り注ぐものでいいだろう』

「あっ? ああ」

 俺は仮想領域で魔法を組み立てる。その魔法をライフルのマガジンで展開する。
 そして引き金。

 フパパパパハッ!

「おお?」

 今度走ったのは黒い光だった。
 間違いなく天より降り注ぐものと同じ力だ。

「ふむ、やはりな。随分面白いものになったな」

「おおーすげー。ビームマシンガンだ。属性切り替えだ。本物だ!」

 あいつが知ったら悔しがるだろう。
 すごいものを手に入れた。

『よしよし、では次だ。次はペークシスの加工方法を教えよう』

 ん? 加工? ペークシスの?

『やって見せる故よく見ておけ』

 彼は砕けたペークシスのウチ小さめの物を拾い上げ、魔力を注いでいく。それはもう目もくらむような莫大な魔力だった。
 するとどうだろう。ペークシスが柔らかい粘土のようになってしまった。

「これって、最初からできなかったのか?」

 これができていたら苦労はなかったような…

『当然ムリなのだよ。今これは壊れてしまっているが、さっきまでこれは吾を封じて力を吸い上げる存在ものだったのだ。さすがにここまでの干渉はできない。干渉する尻から力を吸い取られてしまうさ…だが今は違う…さあできた』

 彼は粘土状になったペークシスを使ってライフルを補強していく。
 ライフル用の強化装甲のような感じだ。
 バレルから機関部、そしてストックまで伸びるひとつながりの強化装甲。マガジンも包み込むように補強している。
 そして銃身の下には鋭い刃。
 つまりバヨネットが付いている。

 どうもいつか話した銃剣術の話から思いついたらしい。
 プルパップ式というのはマガジンがストックのところにあるのでストックで物を殴るのには向いていない。だがこの装甲で守られたストックならそれも可能だ。

 まあ、もうマガジンを交換する必要もないからできる荒業だが。

『見たかね。覚えたかね。
 圧力をかければ分子密度が上がって硬度が高くなる。
 そして精進せよ。いつかできる。そしてペークシスというのは何かを作る際の素材としてこれ以上の物はないのだ。
 そしてこれに魔力の流れるラインを刻む』

 それは繊細な作業で、強化装甲のブレード部分や打撃部分に魔力の流れるラインを作り、攻撃力を強化するという技だった。
 本当のこういう繊細な作業をやらせると自分の技が児戯に思えてくる。

 そして完成したライフルを肩に充て。引き金に指をかける。
 うん、いい感じだ。

 引き金を引くと淡い光が射出される。
 単射モード、三点バースト、連射モード、どれも健在だ。

 ていうかこれ作ったやつあほじゃね? 狙撃銃バージョンにフルオートつけんなよ。いくら映画の中の設定とはいえひどすぎる。

 俺は壁に向けて銃を撃ちまくったが当然のように壁は無傷。
 ただ打った感じ弾速はかなり早いな。
 五〇mの距離など一瞬だった。

『まああの壁ではな。銃身などまだまだ強化できる部分はあるから精進するのだぞ』

 押忍。

『さあ、そろそろ時間切れだ』

 その言葉に俺は胸が締め付けられるような思いをした。
 ここが気に入っていたわけではない。だが半年の間ともに戦った戦友との別れだった。

 バキン。

 そんな音がして彼の身体が一部崩れた。

「なんで? 解放されたら自由になるんじゃ…」

『もちろん自由になるのだ。吾ら■■■■という存在は滅びることがない。一度分解されてまた新たな■■■■に再生する。
 心配はいらん、一時的に弱体化するが記憶も能力も持ち越せる。吾は世界の一部でもあるのだ』

 俺はがっくりと膝をついた。吃驚さすなよという気分だ。

『ではもういけ。さすがにこの現身が崩れては力も使えぬからな。ここにあるものはすべてお前と共に転移させる。
 ただ吾も上がどうなっているのかわからぬから気を付けるのだぞ』

「おい、そう言うことは先に言え」

 とはいっても言われたところで選択肢などないのだが…
 
『はははっ。さらばだ友よ、もしよければ次に生まれる私にそなたの名を貰えようか?』

「いいとも。いくらでも使ってくれ」

 世界が光に包まれ、最後にあいつか笑ったような気がした。
 かくして俺はこの出口のない部屋から出ることに成功したのだ。


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