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第11話 閑話 帝国 ダメだこりゃ
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第11話 閑話 帝国 ダメだこりゃ
「聖女様、何をしておいでですか?」
「んー、研究…ってモールか…」
私、モール・カリア・ルーベンスは目の前でぼさぼさの頭をかく女性を見つめた。わがクラナディア帝国が誇る『聖女・アキラ・クヌギ』様だ。
ただあまりそうは見えない。
私の所見を言わせてもらえばくたびれた学者様みたいな感じの女性だ。
「アキラ様…少し身だしなみをどうにかしましょう、それでは人前に出られませんよ…もうすぐロミニア伯爵さまがお見えになります」
「なんで?」
ぬーぼーという感じで振り向くアキラ様、これは昨日寝ていませんね、この方は研究に夢中になると他のことをそっちのけにしますから。
「伯爵はいつものご機嫌伺いでございましょう…。いつも心にかけておられて羨ましい限りです」
控えていたメイドが口を挟んでくる。
伯爵がアキラ様に熱を上げているのは周知の事実だ。
ふだんはなんというか残念なアキラ様だが素材はいい。実にいい。
凛々しい系の美人で、スタイルもとてもいい。女の自分が見てもこうなれたらいいなと思うようなお胸とお尻を持っていらっしゃる。
彼女が着飾ったところを見た殿方がハートを射ぬかれるのも無理はないと思う。男はきっとこういう女性に妻になってほしいと思うのだろう。
そう言う魅力的な女性だ。
帝国としてもできれば国の貴族と結婚して末永く国のために力を振るってほしいと思っている。
実力のない者。忠誠心の低いものは弾かれ、今この離宮に通ってくるのはクラナディア帝国でも厳選された実力と容姿に恵まれた殿方だ。
しかもいろいろなタイプがそろっている。
「私は一応聖女だからそう言うのは面倒なんだけどなあ…」
「そうですね。思い人もおられますしね」
「でへへ、そうなのよ」
アキラ様の顔が崩れた。
アキラ様の思い人というのは元の世界にいたころおつきあいしていた男性だそうだ。まだ婚姻には至っていなかったらしい。
その思い人に結婚を申し込まれて、幸福の絶頂の時にこの世界に転移してこられた。なんでも先に落ちてしまった思い人に、一度は元の世界に押し戻されたらしいのだがまたすぐに後を追ったとか。
その話を聞くとどれほど二人が愛し合っていたか分かるというもの。
そう、異世界。
この世界ではないどこか。
この世界では数十年~百数十年に一度のサイクルで異世界から人が渡ってくる。私たちは来訪者と呼んでいるが、アキラ様もその来訪者のお一人だ。
今回帝国の遺跡には二人の来訪者が別々にたどり着かれた。
一人は若い男性で、現在勇者を名乗って魔物狩りなどをしている。魔物狩りと言うと人助けなのだがちょっとおごりが強く評判が悪いらしい。
もう一人がアキラ様で戦いを拒否されて一時は帝国の首脳陣を落胆させたが、その時には来訪者として発表された後だったので無下にもできず離宮と予算を与えられ、好きにさせていた様だ。
様だというのはそのころ私はアキラ様付きではなかったから。
ちなみに来訪者というのはたいてい不思議な知識を持っていて、また魔法に対する敵性も高い人が多く、多くの貴重なスキルをもつ人が多い。
さらに希少な『クラス』を持つのが普通で、その効果は高く、その優れた能力で過去には国を救うほどの大活躍をした人もあり、言ってみれば存在そのものが英雄なのだ。だからどんな相手でも粗略にはできない。
当初は男性の方、名前はシュバルツシルド様(アキラ様に言わせると『偽名』と言うより『妄想』の類らしい)の方を厚遇していた帝国だったが、時間経過とともにいろいろ問題を起こすようになり、現在は問題児扱い。貴族の姫君を傷物にしたという醜聞も聞くことも度々あり、苦々しく思っている方もあると聞く。
対して最初はさほど気にも留められていなかったアキラ様が半年ほどの研究のすえ生み出した『銃』という魔導具は帝国の軍の戦闘力を飛躍的に向上させた。
魔力を使って小さな金属の玉を高速で射出するもので、構造が簡単なために魔力量の少ない戦士系の人にも使えて兵士の生還率、魔物の駆逐率が格段に上がった。
それを受けて彼女のもとに沢山の錬金術師や技師が集められ、次に発表された魔砲という大きな銃は魔物に対して大きな攻撃力を発揮し、殲滅力が格段に上がった。
どちらも高価なマジックアイテムで量産など帝国の力を持ってしてもなかなかできない物だがその恩恵は計り知れない。
その時から彼女は『賢者』になった。
彼女が世界から賜ったクラスは『聖女』なのだが、やっていることは賢者だ。だから事情を知っている人は賢者殿なんて呼んだりする。
でも帝国は彼女のことを今、大々的に救国の聖女として押し出している。若くて美しい女性なのでその方がイメージ的によろしいという事らしい。
「こまったもんだね~、聖女とかになれば結婚とか言う話はなくなると思ったんだけどなあ…」
「仕方ありません、アキラ様がここにご降臨なってから既に1年半。その間アキラ様の発明は多くのクラナディア帝国の民を救い暮らしを便利にしました」
「ご降臨はやめてよ…まあ、オタクのとしては内政チートはやらなきゃダメだとおもうからね~それに銃を作れるのがいいのよ。
日本だと作って持っているだけで刑務所いきだから」
刑務所というのは分かりませんが犯罪奴隷のようなものだと思います。まったく国を救うべく戦う人が犯罪奴隷とか、何を考えているんでしょうその国。
「早くお探しのセンパイさんが見つかるといいですわね」
「うん、もう先輩はいろいろ待たせすぎなのよ、プロポーズだって…まあまってはいなかったけど、びっくりしたけど…
一緒に暮らしていっぱい子供作って、一緒に…としをとって…うっく…」
本当に可愛い人だなこの方。と思います。
「ほらほら、きっと見つかります。帝国も探してくれていますから…」
帝国もアキラ様が国に落ち着いてくれるのならばお相手がそのセンパイさんでも問題ないわけです。ここに招いて一緒に暮らしてもらえばいいわけですから。
問題はもしその方が他国に囲われていた場合ですが…その心配も今はもうないと考えていいでしょう。どこかの国に囲われるような人なら帝国の情報網に引っかからないはずはないからです。
となると市井でひっそりと暮らしておられるか、すでに亡くなられているか…
来訪者は確かに優れた才能を持っています、ですが才能を発揮するためには環境と周囲の助力は必要でしょう。
それを踏まえて皇帝陛下は良い殿方を周囲に配置しておられるのですが…
この分ではしばらくは事態は動かないと思われますね。
「さっ、これでよろしいでしょう」
「おおー、美人さんだ。相変わらずモールはいい腕をしているね、ニホンならスタイリストとしてやっていけるレベルだよ」
「よくわかりませんがありがとうございます」
「さて、そんじゃ挨拶とか聞いて少し寝るか…さすがに二徹はきついわ」
「二日も寝てないんですか?」
「いやー、のっちゃって…」
なははと頭をかくアキラ様。
こういう時はなんていうんでしたっけ…教わったんだすよね。あっ、思い出した。
「ダメだこりゃ」
「オー、ナーイス」
「聖女様、何をしておいでですか?」
「んー、研究…ってモールか…」
私、モール・カリア・ルーベンスは目の前でぼさぼさの頭をかく女性を見つめた。わがクラナディア帝国が誇る『聖女・アキラ・クヌギ』様だ。
ただあまりそうは見えない。
私の所見を言わせてもらえばくたびれた学者様みたいな感じの女性だ。
「アキラ様…少し身だしなみをどうにかしましょう、それでは人前に出られませんよ…もうすぐロミニア伯爵さまがお見えになります」
「なんで?」
ぬーぼーという感じで振り向くアキラ様、これは昨日寝ていませんね、この方は研究に夢中になると他のことをそっちのけにしますから。
「伯爵はいつものご機嫌伺いでございましょう…。いつも心にかけておられて羨ましい限りです」
控えていたメイドが口を挟んでくる。
伯爵がアキラ様に熱を上げているのは周知の事実だ。
ふだんはなんというか残念なアキラ様だが素材はいい。実にいい。
凛々しい系の美人で、スタイルもとてもいい。女の自分が見てもこうなれたらいいなと思うようなお胸とお尻を持っていらっしゃる。
彼女が着飾ったところを見た殿方がハートを射ぬかれるのも無理はないと思う。男はきっとこういう女性に妻になってほしいと思うのだろう。
そう言う魅力的な女性だ。
帝国としてもできれば国の貴族と結婚して末永く国のために力を振るってほしいと思っている。
実力のない者。忠誠心の低いものは弾かれ、今この離宮に通ってくるのはクラナディア帝国でも厳選された実力と容姿に恵まれた殿方だ。
しかもいろいろなタイプがそろっている。
「私は一応聖女だからそう言うのは面倒なんだけどなあ…」
「そうですね。思い人もおられますしね」
「でへへ、そうなのよ」
アキラ様の顔が崩れた。
アキラ様の思い人というのは元の世界にいたころおつきあいしていた男性だそうだ。まだ婚姻には至っていなかったらしい。
その思い人に結婚を申し込まれて、幸福の絶頂の時にこの世界に転移してこられた。なんでも先に落ちてしまった思い人に、一度は元の世界に押し戻されたらしいのだがまたすぐに後を追ったとか。
その話を聞くとどれほど二人が愛し合っていたか分かるというもの。
そう、異世界。
この世界ではないどこか。
この世界では数十年~百数十年に一度のサイクルで異世界から人が渡ってくる。私たちは来訪者と呼んでいるが、アキラ様もその来訪者のお一人だ。
今回帝国の遺跡には二人の来訪者が別々にたどり着かれた。
一人は若い男性で、現在勇者を名乗って魔物狩りなどをしている。魔物狩りと言うと人助けなのだがちょっとおごりが強く評判が悪いらしい。
もう一人がアキラ様で戦いを拒否されて一時は帝国の首脳陣を落胆させたが、その時には来訪者として発表された後だったので無下にもできず離宮と予算を与えられ、好きにさせていた様だ。
様だというのはそのころ私はアキラ様付きではなかったから。
ちなみに来訪者というのはたいてい不思議な知識を持っていて、また魔法に対する敵性も高い人が多く、多くの貴重なスキルをもつ人が多い。
さらに希少な『クラス』を持つのが普通で、その効果は高く、その優れた能力で過去には国を救うほどの大活躍をした人もあり、言ってみれば存在そのものが英雄なのだ。だからどんな相手でも粗略にはできない。
当初は男性の方、名前はシュバルツシルド様(アキラ様に言わせると『偽名』と言うより『妄想』の類らしい)の方を厚遇していた帝国だったが、時間経過とともにいろいろ問題を起こすようになり、現在は問題児扱い。貴族の姫君を傷物にしたという醜聞も聞くことも度々あり、苦々しく思っている方もあると聞く。
対して最初はさほど気にも留められていなかったアキラ様が半年ほどの研究のすえ生み出した『銃』という魔導具は帝国の軍の戦闘力を飛躍的に向上させた。
魔力を使って小さな金属の玉を高速で射出するもので、構造が簡単なために魔力量の少ない戦士系の人にも使えて兵士の生還率、魔物の駆逐率が格段に上がった。
それを受けて彼女のもとに沢山の錬金術師や技師が集められ、次に発表された魔砲という大きな銃は魔物に対して大きな攻撃力を発揮し、殲滅力が格段に上がった。
どちらも高価なマジックアイテムで量産など帝国の力を持ってしてもなかなかできない物だがその恩恵は計り知れない。
その時から彼女は『賢者』になった。
彼女が世界から賜ったクラスは『聖女』なのだが、やっていることは賢者だ。だから事情を知っている人は賢者殿なんて呼んだりする。
でも帝国は彼女のことを今、大々的に救国の聖女として押し出している。若くて美しい女性なのでその方がイメージ的によろしいという事らしい。
「こまったもんだね~、聖女とかになれば結婚とか言う話はなくなると思ったんだけどなあ…」
「仕方ありません、アキラ様がここにご降臨なってから既に1年半。その間アキラ様の発明は多くのクラナディア帝国の民を救い暮らしを便利にしました」
「ご降臨はやめてよ…まあ、オタクのとしては内政チートはやらなきゃダメだとおもうからね~それに銃を作れるのがいいのよ。
日本だと作って持っているだけで刑務所いきだから」
刑務所というのは分かりませんが犯罪奴隷のようなものだと思います。まったく国を救うべく戦う人が犯罪奴隷とか、何を考えているんでしょうその国。
「早くお探しのセンパイさんが見つかるといいですわね」
「うん、もう先輩はいろいろ待たせすぎなのよ、プロポーズだって…まあまってはいなかったけど、びっくりしたけど…
一緒に暮らしていっぱい子供作って、一緒に…としをとって…うっく…」
本当に可愛い人だなこの方。と思います。
「ほらほら、きっと見つかります。帝国も探してくれていますから…」
帝国もアキラ様が国に落ち着いてくれるのならばお相手がそのセンパイさんでも問題ないわけです。ここに招いて一緒に暮らしてもらえばいいわけですから。
問題はもしその方が他国に囲われていた場合ですが…その心配も今はもうないと考えていいでしょう。どこかの国に囲われるような人なら帝国の情報網に引っかからないはずはないからです。
となると市井でひっそりと暮らしておられるか、すでに亡くなられているか…
来訪者は確かに優れた才能を持っています、ですが才能を発揮するためには環境と周囲の助力は必要でしょう。
それを踏まえて皇帝陛下は良い殿方を周囲に配置しておられるのですが…
この分ではしばらくは事態は動かないと思われますね。
「さっ、これでよろしいでしょう」
「おおー、美人さんだ。相変わらずモールはいい腕をしているね、ニホンならスタイリストとしてやっていけるレベルだよ」
「よくわかりませんがありがとうございます」
「さて、そんじゃ挨拶とか聞いて少し寝るか…さすがに二徹はきついわ」
「二日も寝てないんですか?」
「いやー、のっちゃって…」
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