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第74話 リザルト回…だね
しおりを挟むさて、リザルト回がやってきた。
ワイバーン討伐は無事に終了したのだ。
重傷者は出たが死者は出なかった。
『奇跡だ』とみんなが言った。
騎士や冒険者たちは民衆に歓呼を持って迎えられ、そして即座に開かれた式典で表彰された。
MVPは当然囮となった騎士たちで、全員昇進が告げられた。
とどめを刺した騎士ではなく地味な囮にМVPが送られるあたりフレデリカさんはモノが分かっている。と思う。
ほかには落ちたワイバーンに一番に突撃した騎士も褒め称えられた。
一番槍が名誉なことという発想はここでもあるらしい。
こちらは褒賞として金貨が与えられた。どのぐらいかは聞いていない。
冒険者も魔物の掃討で撃破数の多い一〇人に金一封が与えられた。
ネムはちゃっかり3位で賞金をもらっていた。
美少女なのでみんなの歓声がすごい。
ちなみに魔力投射砲を撃った騎士は、魔力枯渇で休養に入ってしまったために式典には不参加。大変だね。
俺はと言えば回復魔法で頑張ったおかげで結構名前が売れた。
翌日道を歩いていると。
「よう、昨日は世話になったな」
「ありがとう、あんたの回復魔法すごいな、おん~こーろころ? 不思議な呪文だったぜ」
「マリオン君、今度遊ぼうよー」
「いっぱいおごるわ。そのままぐへへへっ」
とか頻繁に声をかけられるようになった。
ただこの町の女冒険者は肉食すぎだと思う。
露出もすごくて格好がエッチな人も多いし。きっとビジュアル的に見ごたえがあるのではないかと思わなくもない。
で、おれに対する報酬はというと結構大物だった。
まずお金。
これは金貨で二〇〇枚。二〇〇〇万円ぐらいの価値だな。一回の仕事料が二〇〇〇万円と考えればこんなにもらってしまっていいのかな…という気分だ。
「いいのよ、謎の騎士様で参加してもらったからギルドからの報酬は出ないでしょ?」
はっ、そういえばそうだ。
回復魔法もロッテン師の弟子として参加したから冒険者として契約していないのだった。
つまり冒険者としての俺はただ働き。
ガーン!
まあ、表向きの話なんだけどね。
さらにはお家が付いてきた。副賞『住宅』ってありなのか?
貴族とかよくわからんが金銭感覚が違うのは分かる。
家一軒ポンとかって、すごいよね。
「キルシュ家のレベルなら安いものですよ。例えばですけど普通の家屋なら仕えている騎士全員に配っても全然痛くもかゆくもないレベルですよ」
むむっ…騎士って何人だ? 家っていくらだ?
分からん。これは考えてはいけない世界なのだろう。
「それにフレデリカさんの思惑もありますから」
ネムが言うには俺とネムをよそにとられたくないという思惑が透けて見えるそうな。
まあ、それは俺も感じていたけどね。
別に魔力投射砲のことばかりではなくてね。
あれは俺以外にも使えるように調整したからもう俺は必要ないと思う。使ってみた感じ安全性は高いようだし。
砲弾を用意すれば公爵家の切り札になるんじゃないかな?
つまりそういうメリットをもたらす存在と考えればこの利益は計り知れないのではないだろうか。
他にも古代の宝具で利用可能になったものもあったしね。
なんかろくなことに使わないような気がするが…
そう言った方面で俺がいると居ないとでは違いは大きいのだと思う。
「そうですね。おばさまとしてはマリオン様をよそにとられるというのは絶対に避けたいのだと思います」
「そういう感覚というのは危なくないかな?」
取り込もうという意志を感じるわけだが、自由がなくなるのはよろしくない感じが…
「うーん、それはないと思いますよ。何と言っても今は関係が良好ですから。わざわざ悪化させるようなことはしないでしょう。
それに有能な冒険者の扱いもおばさまは熟知しているはずです。
このベクトンが終局的な拠点であることが望ましいということで、こちらの行動を制限するようなことはないと思います。
だからおうちなんですよ。自宅がこの町にあるということは市民権とも相まってここが暮らしやすくなるということです。
それに町の暮らしやすさもおばさまは自信を持っていると思いますよ」
「なるほど。よく考えている…という感じか」
地球にいるときは親の残してくれた『家』に住んでいたが、確かにあそこを処分するとか言う発想はなかった。
仕事や学校の関係で一時期出ていたこともあるが、結局はあそこが俺の家だったものな…
この世界だってネムと住む家が決まって、そこで暮らしていけば愛着とか出てくるんだろう。子供でもできれはなおのこと。
そういうことだな。
「あっ、ここですね、もらったいえ」
「そうか…こ…こ…なの?」
これ家じゃなくてお屋敷じゃん。
◆・◆・◆
「すごいわねー」
とミルテアさんが言った。
もらった家を見に行くと話したら自分も後で行くわ~といっていたので予定通りの合流である。
俺ってばこの世界のこととか分からんから意見の聞ける人はいるほどありがたいのだ。
のだが…
「まあ、こんなものですよ。夫婦で暮らすならちょうどいい家ですね」
とはわが妻の言である。
ちなみにこれはお屋敷という。
二階建てで石造り、まあ正確にはコンクリートに似たあの謎建材なんだろうけど見た目は真っ白の白亜のお屋敷だ。
縦は直線、横は曲線を帯びた柔らかいデザイン。きれいに整えられたバルコニーと白い窓。
美しい…まるで宮殿みたいなデザインだ。
ただ二階建てなのでこの町で見た貴族のお屋敷なんかに比べるとこじんまりはしている。それは救いだな。
日本で例えると二階建ての市役所みたいな感じ?
ああ、あんまり小さくないか…各階の高さもあるから結構広かったです。
内側は建材が磨かれていてまるで大理石のようになっている。シャンデリアのあるホールのような部屋もあるし、厨房も大きい。
居間には大きな暖炉があって本当にヨーロッパの由緒正しい家みたいだ。
照明はシャンデリアも含めて魔道具で、風呂も魔道具製のものがついている。
寝室は…半和室だな。うん、この国はどんな洋館でも畳があるのだ。
一段高くなった畳のエリアがあって、そこに布団とか敷いて寝るようだ。
部屋自体は二〇畳ぐらい。半分ぐらいが畳だ。
でそれ以外の所は絨毯が敷き詰められていて、アンティークな家具がきれいに並んでいる。
「一階が居間や来客用の部屋、パーティーホール。厨房、お風呂なんかですね。外向きということです。
二階は居室が並んでいる形ですね」
奥行きもあるので部屋数も多い。
従業員用の部屋は一階に個室があるようだ。六畳間ぐらいの部屋が並んでいて、余裕がある。
「セバスは一階のリーダールームを使ってください。メイド二人は個室を一つずつ使っていいですよ」
「ありがとうございます奥さま」
「「ありがとうございます」」
セバスさんというのはフレデリカさんが用意してくれた家令の人だ。セバスティア・ローンダイクさんというらしい。何でもフレデリカさんの下で大きな屋敷の切り盛りなどをしていた人らしい。
年を取ってもう少し楽な仕事に移動を願い出ていて、今回うちの担当になった。
メイド二人もフレデリカさんが用意してくれた人で、平たく言うとおばちゃんという年の人だ。四〇代ぐらい?
ただスタイルよくて美人ではある。
彼らを用意してくれたのはフレデリカさんだが雇うのは俺たちだ。
俸給はセバスが年、金貨三六枚。メイドが金貨二二枚ほどだ。月給にすると三十万と十八万円ぐらい。この世界は物価が安いから実質は倍ぐらいの価値がある。
しかも食費や制服はお仕着せなのでお金かからんしね。かなりの高給取りといえる。
ここら辺はロッテン師のアドバイスで過不足のない額を定めました。
そしてその三人にネムはてきぱきと指示を出している。
慣れているんだね。
「あと必要なものは?」
「そうですね。一通りそろっているみたいですよ。食材はいまメイドたちが買いに行きました。買いに行くのは今回だけで次回からは御用聞きが来るそうです」
ああ、そうなのね。
ちなみに諸経費は一か月金貨十二枚ほどを見込んでいる。従業員の俸給も含めてね。
後は食費と維持費だけどこれはあまりかからないようだ。
かかるのは魔石代。
館内の魔道具のあれやこれやを動かす為の魔石だね。これが結構高い。普通にやると。
でも裏技がある。
「魔境で取ってくればお金はかかりません」
そうなんだよね。魔石は魔物の物直接でも使えるのだ。
精製してないから効率は落ちるんだけど、それでも悲しいかな買うよりはお得なのだ。
基本のルールはギルドへの売却なのだが、例外として自分で使う分はOK。というか大目に見るのが伝統らしい。
これで経費も金貨三枚ぐらいに減る計算になる。
税金はおまけしてもらっているからかからんし、まあ、この程度の維持費なら何とかなるだろう。
結構蓄えはあるしね。
「だいたいこんなものかなあ?」
そんなもんだよな。いろいろめんどいしこんなものであってほしい。
「でも、このメンバーで家って回るの?」
ミルテアさんが聞いてきた。
「回るの?」
よくわからんからネムに丸投げしてみた。
「それを忘れてました。みんなプロなので回るかどうかといえば回ります。でも人手を増やしたほうがいいですね」
そういうものか。
「だったらあ~」
ミルテアさんが何か思いついたようだ。
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