【完結】異世界でシッポの可愛い嫁をもらいました。美少女です

ぼん@ぼおやっじ

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第117話 ○○キック!

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「よし軽く練習してみよう」

 火球を連続で打ち出す黒竜の前で加速減速を繰り返して回避に専念する。
 慣性がかからないので瞬時に加速、瞬時に減速ができるわけさ。

「ほとんど分身。まさに停止加速」

 思わずにんまりしてしまう。
 黒竜の周りを飛び回りながら適当に魔法を打ち込んでみる…んだけど…

「うん、これは結構ダメダメだな」

 停止加速を使って移動し、現れたときに攻撃…とかやってみたんだけど魔法を発動するのにタイムラグがあってうまくいきませんでした。
 止まってから魔法構築するとね…どうしてもね。ワンテンポ遅れるわ。

 その一瞬で躱されるし、迎撃されるし、反撃される。

 ライフルを貸してきちゃったのがちょっと残念。
 あれだったら数発撃って移動して、また射撃ってリアルロボットみたいな戦いができたのに…
 まあ、威力が足りないとは思うけど…

 だけど実験は大体成功だな。
 行けるだろう。行けるよね。行こう。

 俺は空震魚雷をばらまいて黒竜の注意を引く。
 そしてこれ見よがしに高く駆け上った。

『うおおおーっ、まてーーーーっ』

 黒竜は追撃してくるが魚雷に阻まれてすぐに加速はできない。
 そのせいだろう。またさまざまな火球を吐き出してきた。
 気にせずにそのまま大きく距離を取る。

「ふふふふっ、待っていたぞこの時を」

 いえ、単なる思い付きなんだけどね。

 俺は空中でくるりと一回転、黒竜に正面を向けて一旦停止。飛んでくる火球の軌道を見定める。
 そして加速のコースを計算して黒竜までのラインをイメージした。

 そして空中をけって黒竜に向かった。
 そしてある程度スピードが乗ったところで姿勢を変えて足を向ける。
 キックの形だ。
 そして。

「くらえ!!!」

 黒竜の方向に向けて瞬時に最大加速。
 
 ドン!

 と一瞬で音速を超えた。

 加速加速加速加速!
 火球は横方向に移動して回避する。
 直線の加速はそのままに横へと加速もするのだ。
 慣性を無視できるからこんな無茶ができる。

 その縦横に駆ける斜めのラインはまるで雷の様。

 加速によって作り出された見せかけの質量。
 質量×速さ×速さ。
 そして重力場を使った大質量。一〇〇トンを超える巨大質量が音速の数倍。いや、数十倍の速さで……

「ふははははははははははっ、稲妻流星キック!!!」

 恐竜絶滅なんか目じゃないぜ。

 次の瞬間黒竜の脇腹に俺の蹴りが決まった。

 ドゴアァァァァァンと衝撃が広がる。

『ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』

 そして黒竜の悲鳴。

「みぎゃーっっ」

 そして俺の悲鳴。
 なんかメキッて破滅の音がしたよー。

 足の骨絶対行った。むしろ逝った!

 何とか力場で補強してそのまま地面に。

 ずかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! ぐあらぐあらぐあら!!

 黒竜ともども地面にぶつかり、衝撃が周囲を吹き飛ばす。それでも俺たちは止まらずに黒竜をブルドーザーのブレードのように使って地面を削っていく。

 数百メートルもの距離を。
 地面をえぐり消し飛ばしながら。

 だがそのままでは終わらない。
 というか止まれない。

 俺は重力場を使って無理矢理姿勢を引き起こす。

 それによって推進力は再び地面方向に向いた。

 ドゴーーーーーーン!

 地面が蜘蛛の巣状に砕ける。
 トドメとばかりに黒竜を一蹴りして離脱。
 少し離れたところにスタッと着地。

 足痛い。

 常時流している回復魔法で急速に修復されているが…ちょっと痛い。
 次はもうちょっとうまくやろう。

 最後に広がった衝撃波が周辺の木々を薙ぎ払い、かなり広大な空き地を作る。

「最後に敵が爆発しないのが残念かな」

 いや、別に黒竜死ねとか思っているわけじゃないんだけど…まあ、退治しないといけないからね。

 で、爆心地に戻ったら…

 そこには黒竜ではなく変なものがあった。

■ ■ ■

「これは…繭かな?」

 それが一番近い気がするな。

 大きさは四mぐらい。
 表面は竜の鱗の様なものとかむき出しの肉みたいなものとかで、なんか脈打っている。

 見たことも聞いたこともない現象なのでこれがなんだかわからないが、たぶん繭だろう。

 竜はこうやって進化するものなのだろう。

「これで大丈夫なのかな?」

 これでもう脅威にはならないのであろうか。
 分からん。

「もっと奥の方に捨ててきた方がいいかなあ?」

 なんて言いながらぺちぺちとたたいた。

『わーん、足りない、力が足りない。このままじゃ壊れちゃうよー』

 なんか触ったところから嫌な感触が。
 パキンポキンと端から崩壊して内に崩れていくような感触と黒竜の悲痛な叫び…

「なるほど…進化に必要な力を確保できなかったと…」

 どうやら脅威は完全に取り除かれたらしい。

 これは正常に孵化することはないだろう。
 自分で自分を食いつくして最後は崩壊。
 そう言う結末だろう。
 もはやどうしようもない。

『うわーん。壊れる』
『助けてー』
『つぶれるー』
『痛いよー』
『いやー』
『えーん』

 いやいや、これは敵だ。
 不倶戴天の敵なのだ。
 ほだされてはいけない。
 もちろん黒竜には黒竜の理があるだろう。
 悪ではないのだとおもう。
 だが人間を捕食する存在である以上こいつは敵なのだ。

 敵という名で指をさし合う中なのだ。

『ふえぇぇぇえん』
『うぎぎぎぎぎっ』
『いだいよー』

 後ろ髪を引かれるってのはこういうことか? 
 背を向けて歩き去ろうとしているのにまるで何かに引っ張られるかのように前に進めない。

『だすけてーーーーーーっ』
『いい子にしますーーーっ』
『うえぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇん』

 ガキか、ガキだな。
 腕白。こいつの泣き声は子供の声にしか聞こえないんだ。

 そして助けてもいいと思うようになった。

 今言った『いい子にします』は従属しますの意味だな。
 負けを認めて勝った相手に従いますの意味だ。
 制御できるんなら助けてもいいかな? (←豆腐メンタル)

 うん、あくまでも制御できるから。

 俺は繭に触って意志の伝達を試みる。

 基本人間を襲わないでちゃんと指示に従うこと。
 雑用でもちゃんとやること。

 帰ってきたのは『了解』の意志。ほんと必死だ。溺れる者は藁でぶくぶく。

 それと同時に一〇〇年したら再戦する。みたいな意志も伝わってきた。

「あー、そういうルールなのね」

 一〇〇年したらリベンジで勝ったら開放。
 もう一回勝ったら立場逆転。

 そういうものらしい。
 その代わりその間の支配は絶対。

 うん、ならいいでしょう。
 ちょうど馬車を引く役が開いているし。

 俺は繭に触れて、大量の源理力を送り込んだ。
 こいつが欲しがっている『栄養』は魔力のことだが、まあ、源理力でもいいんじゃね?


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