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第182話 マジギレ!
しおりを挟む「ありゃ? なんか騒がしい?」
「はなしてー、おろしてー、そらはいやー」
俺の右手も騒がしいが今俺が言ったのは家のほうだ。
いや、俺がぶら下げているティファリーゼもうるさいっちゃうるさいのだが。
俺は空から自宅に降りたつ。
非常にピリピリした空気が満ちていて、その空気に中てられてそこにいる人みんなが重苦しい空気をまとっていた。
「何があった?」
「ああ、旦那様!」
庭でメイドや子供たちを指揮しているセバスを見つけて声をかける。
「実は、ラウニーさまと晶さまが怪我をなさいまして…いま、ミルテアさまが来てくださってます。
けがの方は命に別状はないとのことで…
ですが、決して軽い怪我でもありません…」
なるほど、それでこの空気か、黒曜がピリピリしているわけだ。
おまけにラウニーが怪我と聞いてティファリーゼまで殺気が漏れ出している。
「詳しい話は歩きながら聞こう」
俺はとりあえず晶とラウニーの所に向かう。
部屋を進んでいくとキオまでものすごく殺気立っている。
セバスの話だと原因は獣人の戦士だという話だった。
キルシュの東にずっと行くと獣人の国があって、そこから使者がやって来たらしい。ネムに会うために。
そういえばネムの気配がないな。
まあ、ネムに限って何かあるとも思えないが。
「はい、獣人たちの口上ですと、奥様の御実家からの使者であると。確かに奥様も知っておる者の様でした。
奥様は話をきいて、なんと申しましょうか」
話を聞いて何か気に障ることがあったらしい。
そして話をつけてやるといって飛び出していったらしい。
まあ、ここまではいい。
いいのだが、その後キオがその獣人の戦士に食って掛かったというか、ものすごく威嚇したらしい。
「キオにはトラウマがあるからな」
多分、母親が殺されたときの記憶になにかが抵触したのだ。
俺はキオを抱き上げて先を進む。
大丈夫。心配するな。
その後、獣人の戦士に悪気があったのかどうか判然としないが、キオのことをつつきまわしたらしい。
それをみて晶が助けに入り、ものすごく論理的に文句を言った。そのせいで獣人がキレて晶が攻撃されて怪我。
ついでキオが大泣きをしてそれを聞いたお姉ちゃん事ラウニーが乱入。
「ラウニーさまの実力は見事でありました。相手は獣王国のおそらくはトップエリートでございます。
それを四人相手取って全く引けを取ってはおりませんでした。ですが」
さすが国軍だか何だかのエリート、武器もかなり良いものを装備していたようで、本気になるとさすがにラウニーも無傷というわけにはいかなかったようだ。
黒曜は毎度のことで森におお散歩中だった。黒曜がいたら獣人が踏み潰されて終わっただろう。
「あっ、お帰りなさい」
「ミルテアさん、お世話をかけました。あとは俺が」
俺はベッドで眠る晶に回復術をかけていたミルテアさんと交代して晶の治療にかかる。
神聖術というのは神様の奇跡だから怪我の治療とかにはすごく効率がいいんだよね。
精査してみたところ晶にはもう問題はなかった。
もともと大地母神の加護を受けた聖女だし、相性もいいんだろう。
俺は心配そうにのぞき込んでいるラウの頭をなでて。
「もう大丈夫、心配ないよ」
「ねーね、大丈夫? ラウ、ここ痛い」
「よしよし偉かったね」
ラウニーの手には結構切り傷とかあった。
子供相手に本気で剣をふるうとか、キチ〇イか?
「ごめんなさい、ラウニーちゃんにはあまり回復術が聞かなくて」
「相性とかあるのかね?」
そういいつつ俺が回復魔法を発動。
オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ。だ。
手や足…じゃないや下半身の怪我もきれいに治ってもう大丈夫。
「さて、あとはネムを呼び戻さないとだめだな」
「やはり参りますか」
「勿論」
ネムはラウニーの怪我とか知らないらしいが、ラウニーを攻撃するような奴を許しておくような女ではないのだ。
ネムより強いやつがいるとは思わないけど、トラブルになる前に片付けよう。
それにドラゴン二匹が殺気立って殺気立って。
黒曜は一応おれの指示待ちをしているのが可愛いが、ティファリーゼは別に俺と契約しているわけじゃないからな。抑えるのが大変。
さて出かけるか、と思ったら。
「フレデリカ・キルシュ様がお見えです」
とメイドの一人が告げに来た。
「マリオン君、今回は大変だったわね」
護衛もつけずにすたすたとやってくる老婦人。
急ぎ足でも上品だな。
セバスがこの一件の後すぐにフレデリカさんの所に知らせを出していたらしい。
「今回のことは正式に獣王国に抗議を出すことにしますね。
いくらなんでも子供にけがをさせて逃げるなんて戦士のやる事じゃないわ」
知らせを受けてすぐに門を閉鎖したらしいがその時には獣王国の兵士は既に町を出ていたらしい。
まあ、全力で走ればその方が速いからね。
「あとこれは私の友人、ネムちゃんのおばあちゃんね、彼女にあてた書簡です。今回のことを書いておいたわ。
獣王国の公爵家の人なのよ。フォーレシアというの、行けばすぐにわかるし、この書簡を見せればあってくれると思うわ」
俺は苦笑しながら書簡を受け取った。
多分、俺とネムの間を取り持つような気持ちで手を打ってくれたのだろうと思う。
自国の兵士がここでまずいことをやったとあってはその国だって強くは出られないだろう。そういうことがあれば円満(表向き)に収まる。ということもありうる。
と、まあ、普通は考えるよな。
でも今、寒気を覚えたように空気を気にするフレデリカさんの姿がすべてを物語っている。
「フレデリカさん。ありがとうございます。でも、無用の気遣いですよ」
「え?」
「いや、もう、こうなると行く所までいかないと。どうなるか僕にもわからないです。
もうこいつを押さえるの無理だし」
それを許可と理解したのか。
ぐるおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
すさまじい咆哮が周囲に響いた。
庭先で地面を掻いて(すでにボコボコ)いた黒曜が勢いよく天に駆け上る。
最初から全力全快だ。つまり応龍の姿に変化しながら。
青空に稲妻が走る。
幾筋も幾筋も。
まるで世界が慄いているようだ。
フレデリカさんもさすがにびっくりしたみたい。
飛び去るドラゴンをみて唖然としている。
そしたら今度はぶわっと熱気を帯びた風が吹いてくる。
出所はティファリーゼ。
こいつも本性剥きだして、体からとげとげしい装甲を生やしている。
だけどこっちは放置できない。
俺は重力のワイヤーでティファリーゼを縛って引き倒す。
「お前はダメ。
こんなところでドラゴンに変身して門まで走ったら町が吹っ飛ぶだろ」
俺は向き直って。
「フレデリカさんすみません、こいつらをちょっと獣王国に捨ててきます。
さすがに俺も老竜二匹の相手は嫌なんで」
マジ切れしてるからこいつらを押さえようとしたらこの町が被害にあっちゃうよ。
責任は責任のある国に取ってもらわないと。
「しかたないわねえ。ほどほどにしてね」
そう言われるとむげにもできないか。
「努力します」
まあ、俺も怒っているからね、納得のいくぐらいの意趣返しはさせてもらうさ。
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