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プロローグ1.5
俺は死んだらしい。
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目を覚ますと俺は突っ立っていて。どこかもよう分からん場所だ。目の前にクソデカい木製の、煌びやかでいかにも高そうな、豪華な扉がある事以外真っ白。あ、後ろはなんか変な影みたいなのがあるわ。不穏な空気がぷんぷんするから、多分、振り返るなって事だろうな、って勝手に決めつけとく。
しかし、なんだ、これは夢なのか?
ようわからんからほっぺつねって痛みで今の意識が夢の中にあるのかどうか確かめたが、どうやらさっきの老人方が夢だったっぽい。
と、言うことは俺はまだ転職活動の途中で、疲れたのか、酒に酔ってどっかで寝込んでて、知らない間に、今日行くはずのリクル○トエージェントに辿りついたって事か。
なるほど。多分そうだ。そうに違いない。
昔っから直感力には優れてたから、酒飲んで酔っ払ってても普段から言ってることかわんねえし、運転しても(ホントはしちゃダメだよ)、散歩してても、ゲームしてても普段と変わらんかったし、結果として明日に、いいように繋がった事が多い。故に俺の直感というのは神の意志に等しいって訳だ。
俺の予想で当たらんのは馬券と宝くじだけだ。
だから、ここは俺がリ○ルートエージェントだって信じてりゃ、リクルー○エージェントになるっつう訳よ。
と、言うわけで重そうな扉を開けてみた。
すると、入ってびっくり。まず目に入ったのは、金持ちの屋敷みたいなオフィス。四隅には塩が置いてあるかと思いきや、噴水と白い子供の天使の像が置いてあるよね。海外の美術館とかにありそうなアレ。転職エージェント業界もCMバンバンやってるから、こういう風変わりな装いも大事………という事なのかな。
んで、受付嬢なんだけど、ホログラムなのかなんなのか知らんけど、めっちゃ美人。ハリウッド女優かってレベルの美貌兼ね備えてて、服とかも薄手の白いローブ巻いてるだけの露出度高そうで、胸から上が開けてるから程よくエロいんだよな。
見てくれはこんな感じで形はいいんだ。でも、問題点があるんだ。
クソデカい。
10m位あるのかな、ってレベルの巨体なんだよ。これじゃ抱けない所か街も歩けない。一部の特殊性癖を持ってる連中からはすっげえ高い評価を受けそうだけど。
リクル○トエージェントも進撃の○人コラボとかやってんのかね。
だから目の前の女をホログラムかなんかだと疑ってた訳で。ホログラムにしてはリアル過ぎるけど。まぁ、これも技術の進歩の一端だろう。
「彷徨える魂よ。今生を完結せし、来世への循環を求み、新たなる世界への扉を開く勇敢なる意思を今ここに享受しましょう」
??????????
何言ってんだこの女。本日はよろしくお願いしますね、はどこ?
エージェント業界も中二病路線? みたいなの流行ってるのか。
あ、違う、そういうおもてなしなんだよ。きっと。
この業界食い合い多いから、みんなが血眼で求人探して提示してくるのを裏目に、いかにも私、神聖で潔白ですよ、ってアピールをすることでその下心をカバーする算段だな。
かなり手の込んだ対応。素晴らしい。
「随分豪華だな」
「ええ、ここは魂の器。女神の門と呼ばれる魂の拠り所ですから」
でも、なんかやりづらいな。俺は俺の日本語で応対したいんだが………
あーでもこの人見るからに日本人じゃないわ。だからテンプレ通りの日本語でしか応対出来ない説――――――流石にないか。いや、まて。
ちょっと前からあらゆる業界で人手不足が叫ばれてるよな。だから、スキル云々じゃなくて、本人のやる気を尊重して……… この説固いな。
ってもなぁ………
「そうか、これが世の中の………………いや、それは違うな」
いや、ダメだわ。それは良くない。だって俺もやる気あるってめっちゃ言ってるのに雇われねえんだもん。この女が今やってるのって仕事? 仕事になってる? なってねえよなぁ!
「貴方の今生での魂は役目を終えました」
まぁ、でもこういうのに合わせるのも俺の人生のスキルとして活きるかもしれんな。
こういうのも見てくれを変えれば俺の望んでいる作りたいゲームっぽい感じがするし、合わせてみるのも――――――
「まぁ、こういうのも……………… いや、やはり聞くべきか」
少し冷静になれ。本当にここリク○ートエージェントなのか? 他の転職エージェントのオフィスってどれも殺風景で生気感じさせないような場所が多かった気がする。そんでもって、もてなしだけはあり得んほど丁寧かつ丁重。いつもお茶くれたし。
それに比べてここはなんだ? お茶どころか俺に椅子すら差し出してくれない。高飛車な空間だけ見せつけられて………なんか自慢されてる気分になるんだよな。
じゃあ俺今どこにいるの? そういうお店? それとも本当に酔った勢いで海外来ちゃったの?
「あ、あの………………」
もういい、聞こう。パスポートの期限も切れてて偶々このおフランスみたいな美術館に来てましたってなったら話にならない。
俺はとりあえず転職がしたいんだ。腐った自分をここで変えるんだ。だから聞く! 決めた!
「女に問う! ここがリクルー○エージェントかァ!」
「………………はい?」
「だからァ! ここがリクルー○エージェントかって聞いてるんだ! 転職してえんだよ!」
「て、転職? ここは転生の場………なんだけど………」
「転生? 俺死んだの?」
「死んだからここにいるのよ?」
「は? どうやって死んだの? 心臓麻痺? デス○ート?」
「トラックに轢かれたのよ。覚えてないの?」
「………轢かれた? じゃあ今いる俺はなんだ? まさか、トラックとぶつかった、んじゃなくて、ポタラ合体してベジットみたいになったのか俺。俺トラックマンになっちゃったのかな?」
「ベジットって何? 勝手にトラックと合体しないで。私から言いたいことって言うの、貴方は死んだの。死んだから魂の次の居場所を………」
「お前が何言ってんのか全然分からんわ。俺死んでないじゃん。ほら、こうやって立って喋ってる」
「じゃあ証明するわよ。これ」
女はそう言うと、どこからか手鏡を取り出して、それを俺にぽいっと放り投げた。あいつにとっちゃ米粒サイズの鏡だったが、俺にとっては手のひらサイズのかわいい鏡だ。
んで、受け取って俺は自分のかっこいい姿を―――………ってあれ。
映ってない。
俺isどこ?
Where am I?
「この鏡バグってね?」
「いや、バグってるのは貴方のあた――――――じゃなくて、身体。身体がダメになったから魂が抜け出してここにやってきたの」
「お前、俺に頭おかしいって言おうとしたな?」
「してない」
「嘘つくと魂のレベル下がってまともな一生遅れなくなるって俺のじいちゃん言ってたぞ。クソ女」
「私はクソ女じゃなくて、女神! 女神チャミュエラ!」
「ふっ、カップラーメンみたいな名前」
「それはチャルメラ………じゃなくて、もう! あなた一々人の言葉遮って会話の筋逸らしすぎ! 少しは私の話聞いて!」
「女ってワガママなやつ多いなぁ。しゃあねえ、話聞いてやるよ。ほら、オカルトの話しろよ」
「オカルトじゃなくて、あなたに今起こってる事と今後の話を………はぁ」
「はい、ため息。幸せ逃げちゃうぞ。どうせ結婚してねえどころか彼氏もいねえんだろ」
「ほんっとうに貴方嫌な奴ね。彼氏いません、結婚してません」
「ほら、言わんこっちゃねえ。とりま話したいこと話せ売れ残り。いや、熟れ残り」
「………うっざ、マジうっざ。もういいわよ。これやんなきゃ貴方消滅するから」
「え、俺、消えるのか?」
「そうよ、行き場の無い魂って最終的に消滅するの。無かったことになるのよ。だから循環させてみんなの記憶のどこかに存在出来るように私達が手配するの」
「みんなの記憶からも消えるの?」
「因果的に消える事になるわね。最悪世界の消滅って形で現れちゃうから」
「俺が魂の循環? みたいなの選択しないと世界消えるってマジかよ」
「今生での存在が大きければ大きい程、魂の消滅の影響は大きいのよ。あなたは………え、嘘」
そう言って女神は手元にあった書物を目を通して、暫くすると目をまん丸に見開いて俺を再び眺めた。
「何? 嘘ってなんだよ」
「………あなた相当有名人だったのね。こりゃ転生させないと前の世界滅ぶわ」
「あれ、俺ってそんな有名人だったの?」
「なんで自覚してないのよ。あなた、前ミュージシャンだったんでしょう? 派手なメイクと格好してソロでギター弾いて歌って、テレビ出てCD出したり配信したり………」
「あー、それ俺の音楽聴いたやつが勝手にやってたわ。マネージャーとかプロデューサーとかいうの」
「………………自分の仕事の事全く分かってなかったのね、この子」
「俺の仕事は歌ってギター弾いてただけだ。それで生活してた」
「………少しは周りのことも………まぁいいわ。今の様子見てればどういう人間か分かる」
「とりあえず、世界が滅ぶのは嫌だな。滅びかけの世界で少しでも世界を盛り上げてきたんだ。それが全部無くなるのはやだ」
「案外男らしい所もあるのね。ちょっと見直したわ」
「なんで女っていつも上からなんだよ。まぁいい、概要話せ」
「はぁ、気を取り直して。まず前提として、世界っていうのは貴方がいた世界だけではなくて数で表現できないほどに沢山存在しているの。あなたは、その中で一つ、自分の使命に沿った世界を選んで転生します」
「それってほぼ転職活動みたいなもんじゃん」
「転職とはちょっと違うけれど……… まぁいいわ。あなた、前の世界でやり残した事はある?」
「転職」
「転職は置いといて、なんか、その、後悔みたいなもの。これがしたかった、とか、これをこうしておけばもっと結果は良いように転がった、とか。若いからやり残したことあるでしょ?」
「………俺は後悔をしない。それまで繋がってきた全ての過去を無駄にしなかったから今の俺がいる。今の俺を否定しないために、俺の過去も否定しない。俺は俺の歩んだ全ての時間を愛している。今も」
「………かっこいいんだけど、やりづらいわね。真っ直ぐ過ぎるというか……… なんか人間味がないというか………」
そう言ってばつの悪そうな顔を浮かべたチャミュエラは、机の引き出しから虫眼鏡のようなものを取り出して、そいつで俺を覗き込んだ。
しばらくして、また驚愕して、開いた口を塞いだ。
「え、あなた……………… え? 魂の色が書物に記載されてる情報と違う………」
「何言ってんだ?」
「貴方の魂の色は本来黄緑色だったのに、今の貴方の色は緑。普通の緑。それになんか無理矢理ちぎれたような跡………みたいなのがあるの」
「ちぎれた? どういうこと?」
「身体がちぎれるとか、そういう事を言っているのではなくて、引き裂かれたような痕跡? みたいなのがあるの」
「トラックマンから俺という個人に戻ったみたいな?」
「ベジットの話は置いといて。とりあえず、今の貴方の魂の色っていうのは緑といってもちょっと透明がかってるのよ。メロンソーダみたいな」
「お、分かりやすい例え。グリフィンドールに10点」
「グリフィンドールって何よ……… 私が言いたいことというのは今の貴方が転生しても、極めて中途半端な存在で終わる、どころか魂のレベルが上げられなくて、その次に転生した時にゴキブリとかになっちゃう可能性もあるの」
「ゴキブリは流石に嫌だな。んで、俺はどうすればいいんだ?」
「ツインレイがいる世界に転生して、その人と人生を共にしなさい」
「ツインレイ? 何それ、新しい必殺技? イナズマ○レブンを感じる」
「それシャドウレイ。もう突っ込むの面倒だから、ツインレイの説明からするわね。ツインレイっていうのは、前世で一つだった魂が分裂して男女のつがいで転生した存在。だからどっちも中途半端な存在なの。んで、これと出会うと魂の融合、が始まるのよ」
「俺にベジータみたいな相方がどこかにいるっちゅうんか?」
「ベジットは置いといて、ってかなんで口癖が悟空みたいになってるのよ。その魂の融合………というか統合ね。これをする為に、個々の魂に試練が訪れるのよ。会えなくなるとか。真人間になる為の試練、みたいなね」
「俺が真人間じゃないみたいな言い方だな」
前の人生じゃ完全な姿だった俺になんて言い方を。クソ女。
前も上手くやっていけたから次もやってけるっての。
だけど、なんか身体軽いなぁとは感じるんだよな。
なんかがない。そのなんかが分からん。でも、自信があるからいいや。自分一番大事。
「真人間には見えないです。んで、この統合が済むと、本来の自分自身を取り戻せて、尚且つ、その相手と巡り会えるのよ」
「はぇ~。そんなのあるんだな。どこ世界に行けば会えるんだ? そいつと」
「ちょっと待ってね。うーんと」と呟きながら、引き出しから広辞苑くらいのサイズの書物を取り出して、すっげえペースでページを捲って目を通すチャミュエラ嬢。意外と仕事出来るタイプ………なのか分からんけど、普通の転職エージェントよりかは役に立ちそうだ。
「あ! あった………けど、うわぁ………まじかこれ可哀想」
「え、何? ゾンビいる所でサバイバルするような世界? それともDJ蔓延る世界の中でギター片手に裏切り者としてロックを騙る世界?」
「そんな世界………もあるけど、違う。端的に言うと剣と魔法の世界よ」
「剣と魔法………………! ドラ○エ………ファイナル○ァンタジー………ファ○アーエムブレム!」
「ゲームのタイトルで言われても反応しづらいんだけど………まぁ、でも、そんな感じ」
「ゲームで言うとどれに近いんだ?」
「ここまでシビアな世界ゲームでもあんまりないわよ。だから例えられない。とりあえず、貴方の転生先は結構絶望的な状況から始まるわよ」
「え、まじかよ。ペルソナとかメガテンやってたから難しいゲームは慣れてるけど………」
「あなた、転生するのよ!? 転生ってことは新しくまた人生が始まるの! ゲームじゃないのよ!」
「いや、俺は前もゲーム感覚で人生進めてたぞ。ゲームってのは自分で選んで物語を進めるもんだろ? 人生だって同じじゃん。自分の決断がボタンか言葉ってだけで、重要な決断は口も軽くは開けねえ、押すボタンも重たくなる」
「とは言ってもねぇ! あなた………」
「俺は俺を信じている。誰も邪魔はさせねえ。俺が最高の俺になれる世界が、そのツインレイって奴がいる世界だったら、俺はそこに行く。魂って奴を統合させてベジットになってやるさ」
「だからベジットは―――まぁいいわ。私は女神でぼんやりとした未来のことは分かるのだけれど、重要な分岐点が差し掛かって変わる先の未来のことは読めない。貴方が貴方の選択に自信があるなら、私は止めません」
「じゃ、早速転生させてくれ」
「いや、その前に貴方の職業を決めます」
「転職じゃん」
「どっちかというと就職………ともちょっと違うかな。向き不向きを調べるのと、それに基づいた最初の職業の提案をする検査をします」
「検査ってなんか質問責めみたいなの?」
「ううん、さっきの虫眼鏡つかうの」
あの虫眼鏡、変な名前でもついてんのかとおもってたら普通に虫眼鏡だった。
「ふん、俺の事だ。きっとあらゆる職業への適性が高いに決まっている。俺は別の世界ではきっと覇道を歩み、ゆくゆくはその世界を統べる王として―――」
「うーん、これから紹介出来る職業への適性は全てあるんだけど、どうやらこれと言って抜けて高い適性はないみたいね」
「は?」
「多分、魂が分割しちゃった影響なのかも。とりあえず、あなたの出来そうな職業をいくつか紹介するわね。まずは、魔術師」
「え、魔術師? それって腕から光のソードだしたり、ファイナルかめはめ波出すアレか?」
「だからベジットは――――――もう。何も無いところで火を起こしたり、雷出したりするアレよ。杖とか持ってるやつ」
「うおおおおおおおおお! かっけえ! え、魔法出し放題って事?」
「人より魔力………というか、あなたの言語で言うならばMPと覚えられる魔法の数が多い職業ね。もちろん魔法を行使するにあたって周囲に与える影響も大きい。同じ魔法でも他の職業で魔法を行使する場合よりも高い威力を発揮する事が出来るの」
「まじかよ。無敵じゃん。そこまで最強とかなんか裏ありそうだな。代償とかあるの?」
「代償? うーん、欠点みたいなもの、って事かしら? 一応あるわよ。虚弱体質だったり、一生童貞だったり――――――」
「却下だ。一生童貞は流石に嫌だ」
「あなた結構女好きなのね。魔術師ってだけでクソほどモテなくなる欠点はあるわ。確かに、ツインレイと統合するにはあまり良い選択とは言えないわ。でも――――――」
「俺っぽい職業とかってないの? Z戦士とかさ」
「Z戦士って職業はないけれど、戦士という職業はあるわよ。確かにあなたには適正もあるけれど、貴方の人間性を加味すると多分向いてないんじゃないかな」
「なんでだ?」
「基本的に誰かに従事する事が基本だから」
「却下だな。ずっと誰かの犬として生きるのも俺の生には合わない」
「あなた前の世界でよく転職活動しようって気になったわね……… まぁいいわ。そんな人向けの職業も一応あるけれど、うーん」
「お! 俺に向いてる職業あるなら最初から言ってくれよなぁ~」
「いや、その職業だとツインレイとの統合って点を考えても苛烈を極めるわ。ボス戦とかほぼ詰みだし、一匹狼向けの職業でありながら、一匹狼が生きて行くには虚弱すぎる」
「どういう職業なんだ?」
「旅芸人よ」
「え、結構よくね? 金も儲けやすそうだし、一発ギャグには自信あるぞ」
「人間を相手するんじゃなくて、これから出会うであろう魔物相手に通用するようなギャグじゃないといけないのよ? それにお金儲けって………前の世界と違って金より名誉に価値のある世界なんだから、その辺も少しは考えて」
「YouTubeと競馬があれば億万長者だぜ」
「どっちもあなたが行く世界にはありません。それに旅芸人という職業にも欠点があります。その職に就いている間は結婚出来ないし、経験を詰んでもそれほど物理での攻撃力に制限があって、尚且つ使える魔法の種類も数少ないの。人が好きな人が人を支えたいが為に選ぶ職業なの」
「じゃあ俺っぽくねえな。どうせなら俺が主役っぽいことがしたい。他なんかないか?」
「あとは修道士ね。回復とサポート魔法がメインの魔術師みたいな職業だけれど、一応書記のスキルも備わっているわ」
「―――………書記ってあのミサイル飛ばす職業か?」
「それは総書記。ミサイルは次の世界にありません。ってもどこからどう見てもあなた向きの職業が見つからないわね。うーん、とっておきがあるんだけれど、果たして分裂済みの魂にそれが務めるのか怪しいわ………」
ここまで人格というか、向いている職業が少ないとなると、俺も心に来るものがあるな。次提案された奴には文句言わずに従っとこう。どうせダーマ神殿なる転職エージェントがあると思われるし、向いてなかったら転職しよう。
「んで、お前が提示する職業はなんだ」
「うーん、うーん、まぁいいや。しかし、こんなんに務まるのかしら………」
「聞こえてるぞ」
「聞かせてんのよ」
「当ててんのよ、のノリで言うなクソアマ。さっさと言え」
「ちっ、勇者よ、勇者。ほら、貴方の好きなゲームでもよく主人公とかになるアレよ」
「………………何?」
「だから勇者だってば、その気になればどんな強い魔法も、武術も、地位も名誉も金も全部手に入るあの職業よ!」
「え、ギガデインのアレか………!?」
「そうそう、ギガデインのアレ。オーブ集めたり、夢の世界行ったり、龍神族の末裔だったりするあの職業」
「俺、それにするわ! うおおお、俺の運命ってのはいつも決意を固めた時に巡ってくるんだよなぁ! じゃあ、転生よろしく。俺にもついに勇者○トの剣と光のオーブを携えてドラゴンを討伐する時がやってくるとはなぁ。前世でようやったってもんよ」
「はぁ………あなたね。簡単にもの言うけれど、貴方は分割された魂の片割れ。即ち、他の人と違って半分の魂レベルで人生がスタートするのよ。だから、最初はバカみたいに苦労するわよ」
「は? 最初は誰だって苦労してもの始めるだろ。どんなハードルでも飛び越えてやるさ」
「それと、勇者って肩書きを敢えて使ったけれど、次の世界での人生が始まった時にあなたに与えられる肩書きはそれとは違うものになるわ。これは決定事項」
「え、じゃあ勇者ってのは………」
「変身後の姿、のようなものね」
「スーパーサイヤ人みたいなもんか」
「ドラゴンボールネタから離れなさい。とにかく、勇者って仕事について言えるのは他の職業でもの始めるのと全く違う理で物事を考えなきゃいけないのよ。だから、簡単に人の手を借りる事も難しいの」
「まぁ、欠点がそんなもんだったら、俺にとってはお安いご用だ。いつも俺は俺を信じて生きてきた。だから、同じ事を………」
「さっきも言ったけれど貴方には勇者である以前に別の課題があります。ツインレイとの魂の統合。これが勇者である以前に貴方自身にとって最も大事な事なのよ」
「んで、それと勇者になる事と何が問題あるんだよ」
「他の職業は転職出来るけれど、勇者だけは転職出来ないの。だから、人生に合わせた生き方が選べない。だから、とても――――――」
「転職活動をしなくてもいいのか!?」
「いや、そういう事言ってるんじゃなくて………」
「うおおおおおおおおおおお神ジョブじゃん。すっげえ、じゃあ円滑にもの進められるって事じゃん。生きてて良かった最高」
「………死んだからここに呼ばれてるんだけど。まぁいいわ。貴方がそんなに自信満々な態度を見せるなら、貴方を勇者として新世界『アレセイア』へ転生させます」
「よっしゃー!!!」
「だからベジットは、あーもうごめんなんでもない。ちょっと魔方陣出すから、少し待ってて。はぁ全くもう近頃の男ってなんでこうも自分勝手というか、なんというか、捻くれてるかバカ正直か、バカ真っ直ぐかの三択しかいないのよ。乙女ゲームみたいな丁度良いイケメンいないのかしら」
「おい、ウスノロ。早くしろよ!」
「ほんっとうに癇にさわるわね。はい、今出します」
ってチャミュエラがキレながら言うと、俺の足下に青い白い光の魔方陣が現れた。なんか色んな形の紋章が六芒星の線を象っているけれど、なんの意味があるのかようわからん。ゲームとかだとこれでワープする事が多いがが、同じ意味合いなんだろうな。
ふんわりと足下の魔方陣が風を巻き上げると同時に俺の身体が軽くなる―――というか浮いた。超越人力だ。
まぁ、こいつも仕事だろうが、俺の手助けをしてくれた。礼は言っとこう。
「おい、女ァ! 世話になったなァ! 次逢ったら、俺がお前にLINE教えてやるからよ! 元気でいろよな」
「その言葉、そっくりそのまま貴方に返してあげる。逢えるか知らないけれど。それに、貴方が転生を完了した時、ここにいた記憶と前の人生の記憶、全部消えちゃうから」
「それでもいいさ。いつも、どんな時も何かが始まるタイミングってのは誰もが何も持ってない。まっさらな状態で始まる。そして、欲しいものをどんどん手に入れて、必要なものだけが残って、次に進める。新しい次の自分に。
だから、この記憶が消えてもこの意思が消えない限り、俺は運命的に全てを――――――」
俺の視界が段々と真っ白に染まっていく。目の前のデカい女。チャミュエラの姿も光に飲まれて薄くなる。
でも、これは新しい始まりの光。何が起こるのか、どんな奴がいるのか。どんな世界が待っているのか、俺も知らない。
楽しいこと、辛いこと、悲しいこと、イライラする事だってあるんだろう。それでもいい。
全てを好転させる鍵はいつも自分の作った轍にある。幸福の鍵はいつも自分の中にあるのなら、これから向かう世界がどれだけ歪なもので逢ったとしても、幸せを勝ち取ってやるさ。
あいつが言っていたツインレイって奴に会って、魂の統合とやらを果たして、ベジットみてえな最強の勇者になってやる。
これくらいの覚悟くらい、記憶が消える前にさせてくれ。
しかし、なんだ、これは夢なのか?
ようわからんからほっぺつねって痛みで今の意識が夢の中にあるのかどうか確かめたが、どうやらさっきの老人方が夢だったっぽい。
と、言うことは俺はまだ転職活動の途中で、疲れたのか、酒に酔ってどっかで寝込んでて、知らない間に、今日行くはずのリクル○トエージェントに辿りついたって事か。
なるほど。多分そうだ。そうに違いない。
昔っから直感力には優れてたから、酒飲んで酔っ払ってても普段から言ってることかわんねえし、運転しても(ホントはしちゃダメだよ)、散歩してても、ゲームしてても普段と変わらんかったし、結果として明日に、いいように繋がった事が多い。故に俺の直感というのは神の意志に等しいって訳だ。
俺の予想で当たらんのは馬券と宝くじだけだ。
だから、ここは俺がリ○ルートエージェントだって信じてりゃ、リクルー○エージェントになるっつう訳よ。
と、言うわけで重そうな扉を開けてみた。
すると、入ってびっくり。まず目に入ったのは、金持ちの屋敷みたいなオフィス。四隅には塩が置いてあるかと思いきや、噴水と白い子供の天使の像が置いてあるよね。海外の美術館とかにありそうなアレ。転職エージェント業界もCMバンバンやってるから、こういう風変わりな装いも大事………という事なのかな。
んで、受付嬢なんだけど、ホログラムなのかなんなのか知らんけど、めっちゃ美人。ハリウッド女優かってレベルの美貌兼ね備えてて、服とかも薄手の白いローブ巻いてるだけの露出度高そうで、胸から上が開けてるから程よくエロいんだよな。
見てくれはこんな感じで形はいいんだ。でも、問題点があるんだ。
クソデカい。
10m位あるのかな、ってレベルの巨体なんだよ。これじゃ抱けない所か街も歩けない。一部の特殊性癖を持ってる連中からはすっげえ高い評価を受けそうだけど。
リクル○トエージェントも進撃の○人コラボとかやってんのかね。
だから目の前の女をホログラムかなんかだと疑ってた訳で。ホログラムにしてはリアル過ぎるけど。まぁ、これも技術の進歩の一端だろう。
「彷徨える魂よ。今生を完結せし、来世への循環を求み、新たなる世界への扉を開く勇敢なる意思を今ここに享受しましょう」
??????????
何言ってんだこの女。本日はよろしくお願いしますね、はどこ?
エージェント業界も中二病路線? みたいなの流行ってるのか。
あ、違う、そういうおもてなしなんだよ。きっと。
この業界食い合い多いから、みんなが血眼で求人探して提示してくるのを裏目に、いかにも私、神聖で潔白ですよ、ってアピールをすることでその下心をカバーする算段だな。
かなり手の込んだ対応。素晴らしい。
「随分豪華だな」
「ええ、ここは魂の器。女神の門と呼ばれる魂の拠り所ですから」
でも、なんかやりづらいな。俺は俺の日本語で応対したいんだが………
あーでもこの人見るからに日本人じゃないわ。だからテンプレ通りの日本語でしか応対出来ない説――――――流石にないか。いや、まて。
ちょっと前からあらゆる業界で人手不足が叫ばれてるよな。だから、スキル云々じゃなくて、本人のやる気を尊重して……… この説固いな。
ってもなぁ………
「そうか、これが世の中の………………いや、それは違うな」
いや、ダメだわ。それは良くない。だって俺もやる気あるってめっちゃ言ってるのに雇われねえんだもん。この女が今やってるのって仕事? 仕事になってる? なってねえよなぁ!
「貴方の今生での魂は役目を終えました」
まぁ、でもこういうのに合わせるのも俺の人生のスキルとして活きるかもしれんな。
こういうのも見てくれを変えれば俺の望んでいる作りたいゲームっぽい感じがするし、合わせてみるのも――――――
「まぁ、こういうのも……………… いや、やはり聞くべきか」
少し冷静になれ。本当にここリク○ートエージェントなのか? 他の転職エージェントのオフィスってどれも殺風景で生気感じさせないような場所が多かった気がする。そんでもって、もてなしだけはあり得んほど丁寧かつ丁重。いつもお茶くれたし。
それに比べてここはなんだ? お茶どころか俺に椅子すら差し出してくれない。高飛車な空間だけ見せつけられて………なんか自慢されてる気分になるんだよな。
じゃあ俺今どこにいるの? そういうお店? それとも本当に酔った勢いで海外来ちゃったの?
「あ、あの………………」
もういい、聞こう。パスポートの期限も切れてて偶々このおフランスみたいな美術館に来てましたってなったら話にならない。
俺はとりあえず転職がしたいんだ。腐った自分をここで変えるんだ。だから聞く! 決めた!
「女に問う! ここがリクルー○エージェントかァ!」
「………………はい?」
「だからァ! ここがリクルー○エージェントかって聞いてるんだ! 転職してえんだよ!」
「て、転職? ここは転生の場………なんだけど………」
「転生? 俺死んだの?」
「死んだからここにいるのよ?」
「は? どうやって死んだの? 心臓麻痺? デス○ート?」
「トラックに轢かれたのよ。覚えてないの?」
「………轢かれた? じゃあ今いる俺はなんだ? まさか、トラックとぶつかった、んじゃなくて、ポタラ合体してベジットみたいになったのか俺。俺トラックマンになっちゃったのかな?」
「ベジットって何? 勝手にトラックと合体しないで。私から言いたいことって言うの、貴方は死んだの。死んだから魂の次の居場所を………」
「お前が何言ってんのか全然分からんわ。俺死んでないじゃん。ほら、こうやって立って喋ってる」
「じゃあ証明するわよ。これ」
女はそう言うと、どこからか手鏡を取り出して、それを俺にぽいっと放り投げた。あいつにとっちゃ米粒サイズの鏡だったが、俺にとっては手のひらサイズのかわいい鏡だ。
んで、受け取って俺は自分のかっこいい姿を―――………ってあれ。
映ってない。
俺isどこ?
Where am I?
「この鏡バグってね?」
「いや、バグってるのは貴方のあた――――――じゃなくて、身体。身体がダメになったから魂が抜け出してここにやってきたの」
「お前、俺に頭おかしいって言おうとしたな?」
「してない」
「嘘つくと魂のレベル下がってまともな一生遅れなくなるって俺のじいちゃん言ってたぞ。クソ女」
「私はクソ女じゃなくて、女神! 女神チャミュエラ!」
「ふっ、カップラーメンみたいな名前」
「それはチャルメラ………じゃなくて、もう! あなた一々人の言葉遮って会話の筋逸らしすぎ! 少しは私の話聞いて!」
「女ってワガママなやつ多いなぁ。しゃあねえ、話聞いてやるよ。ほら、オカルトの話しろよ」
「オカルトじゃなくて、あなたに今起こってる事と今後の話を………はぁ」
「はい、ため息。幸せ逃げちゃうぞ。どうせ結婚してねえどころか彼氏もいねえんだろ」
「ほんっとうに貴方嫌な奴ね。彼氏いません、結婚してません」
「ほら、言わんこっちゃねえ。とりま話したいこと話せ売れ残り。いや、熟れ残り」
「………うっざ、マジうっざ。もういいわよ。これやんなきゃ貴方消滅するから」
「え、俺、消えるのか?」
「そうよ、行き場の無い魂って最終的に消滅するの。無かったことになるのよ。だから循環させてみんなの記憶のどこかに存在出来るように私達が手配するの」
「みんなの記憶からも消えるの?」
「因果的に消える事になるわね。最悪世界の消滅って形で現れちゃうから」
「俺が魂の循環? みたいなの選択しないと世界消えるってマジかよ」
「今生での存在が大きければ大きい程、魂の消滅の影響は大きいのよ。あなたは………え、嘘」
そう言って女神は手元にあった書物を目を通して、暫くすると目をまん丸に見開いて俺を再び眺めた。
「何? 嘘ってなんだよ」
「………あなた相当有名人だったのね。こりゃ転生させないと前の世界滅ぶわ」
「あれ、俺ってそんな有名人だったの?」
「なんで自覚してないのよ。あなた、前ミュージシャンだったんでしょう? 派手なメイクと格好してソロでギター弾いて歌って、テレビ出てCD出したり配信したり………」
「あー、それ俺の音楽聴いたやつが勝手にやってたわ。マネージャーとかプロデューサーとかいうの」
「………………自分の仕事の事全く分かってなかったのね、この子」
「俺の仕事は歌ってギター弾いてただけだ。それで生活してた」
「………少しは周りのことも………まぁいいわ。今の様子見てればどういう人間か分かる」
「とりあえず、世界が滅ぶのは嫌だな。滅びかけの世界で少しでも世界を盛り上げてきたんだ。それが全部無くなるのはやだ」
「案外男らしい所もあるのね。ちょっと見直したわ」
「なんで女っていつも上からなんだよ。まぁいい、概要話せ」
「はぁ、気を取り直して。まず前提として、世界っていうのは貴方がいた世界だけではなくて数で表現できないほどに沢山存在しているの。あなたは、その中で一つ、自分の使命に沿った世界を選んで転生します」
「それってほぼ転職活動みたいなもんじゃん」
「転職とはちょっと違うけれど……… まぁいいわ。あなた、前の世界でやり残した事はある?」
「転職」
「転職は置いといて、なんか、その、後悔みたいなもの。これがしたかった、とか、これをこうしておけばもっと結果は良いように転がった、とか。若いからやり残したことあるでしょ?」
「………俺は後悔をしない。それまで繋がってきた全ての過去を無駄にしなかったから今の俺がいる。今の俺を否定しないために、俺の過去も否定しない。俺は俺の歩んだ全ての時間を愛している。今も」
「………かっこいいんだけど、やりづらいわね。真っ直ぐ過ぎるというか……… なんか人間味がないというか………」
そう言ってばつの悪そうな顔を浮かべたチャミュエラは、机の引き出しから虫眼鏡のようなものを取り出して、そいつで俺を覗き込んだ。
しばらくして、また驚愕して、開いた口を塞いだ。
「え、あなた……………… え? 魂の色が書物に記載されてる情報と違う………」
「何言ってんだ?」
「貴方の魂の色は本来黄緑色だったのに、今の貴方の色は緑。普通の緑。それになんか無理矢理ちぎれたような跡………みたいなのがあるの」
「ちぎれた? どういうこと?」
「身体がちぎれるとか、そういう事を言っているのではなくて、引き裂かれたような痕跡? みたいなのがあるの」
「トラックマンから俺という個人に戻ったみたいな?」
「ベジットの話は置いといて。とりあえず、今の貴方の魂の色っていうのは緑といってもちょっと透明がかってるのよ。メロンソーダみたいな」
「お、分かりやすい例え。グリフィンドールに10点」
「グリフィンドールって何よ……… 私が言いたいことというのは今の貴方が転生しても、極めて中途半端な存在で終わる、どころか魂のレベルが上げられなくて、その次に転生した時にゴキブリとかになっちゃう可能性もあるの」
「ゴキブリは流石に嫌だな。んで、俺はどうすればいいんだ?」
「ツインレイがいる世界に転生して、その人と人生を共にしなさい」
「ツインレイ? 何それ、新しい必殺技? イナズマ○レブンを感じる」
「それシャドウレイ。もう突っ込むの面倒だから、ツインレイの説明からするわね。ツインレイっていうのは、前世で一つだった魂が分裂して男女のつがいで転生した存在。だからどっちも中途半端な存在なの。んで、これと出会うと魂の融合、が始まるのよ」
「俺にベジータみたいな相方がどこかにいるっちゅうんか?」
「ベジットは置いといて、ってかなんで口癖が悟空みたいになってるのよ。その魂の融合………というか統合ね。これをする為に、個々の魂に試練が訪れるのよ。会えなくなるとか。真人間になる為の試練、みたいなね」
「俺が真人間じゃないみたいな言い方だな」
前の人生じゃ完全な姿だった俺になんて言い方を。クソ女。
前も上手くやっていけたから次もやってけるっての。
だけど、なんか身体軽いなぁとは感じるんだよな。
なんかがない。そのなんかが分からん。でも、自信があるからいいや。自分一番大事。
「真人間には見えないです。んで、この統合が済むと、本来の自分自身を取り戻せて、尚且つ、その相手と巡り会えるのよ」
「はぇ~。そんなのあるんだな。どこ世界に行けば会えるんだ? そいつと」
「ちょっと待ってね。うーんと」と呟きながら、引き出しから広辞苑くらいのサイズの書物を取り出して、すっげえペースでページを捲って目を通すチャミュエラ嬢。意外と仕事出来るタイプ………なのか分からんけど、普通の転職エージェントよりかは役に立ちそうだ。
「あ! あった………けど、うわぁ………まじかこれ可哀想」
「え、何? ゾンビいる所でサバイバルするような世界? それともDJ蔓延る世界の中でギター片手に裏切り者としてロックを騙る世界?」
「そんな世界………もあるけど、違う。端的に言うと剣と魔法の世界よ」
「剣と魔法………………! ドラ○エ………ファイナル○ァンタジー………ファ○アーエムブレム!」
「ゲームのタイトルで言われても反応しづらいんだけど………まぁ、でも、そんな感じ」
「ゲームで言うとどれに近いんだ?」
「ここまでシビアな世界ゲームでもあんまりないわよ。だから例えられない。とりあえず、貴方の転生先は結構絶望的な状況から始まるわよ」
「え、まじかよ。ペルソナとかメガテンやってたから難しいゲームは慣れてるけど………」
「あなた、転生するのよ!? 転生ってことは新しくまた人生が始まるの! ゲームじゃないのよ!」
「いや、俺は前もゲーム感覚で人生進めてたぞ。ゲームってのは自分で選んで物語を進めるもんだろ? 人生だって同じじゃん。自分の決断がボタンか言葉ってだけで、重要な決断は口も軽くは開けねえ、押すボタンも重たくなる」
「とは言ってもねぇ! あなた………」
「俺は俺を信じている。誰も邪魔はさせねえ。俺が最高の俺になれる世界が、そのツインレイって奴がいる世界だったら、俺はそこに行く。魂って奴を統合させてベジットになってやるさ」
「だからベジットは―――まぁいいわ。私は女神でぼんやりとした未来のことは分かるのだけれど、重要な分岐点が差し掛かって変わる先の未来のことは読めない。貴方が貴方の選択に自信があるなら、私は止めません」
「じゃ、早速転生させてくれ」
「いや、その前に貴方の職業を決めます」
「転職じゃん」
「どっちかというと就職………ともちょっと違うかな。向き不向きを調べるのと、それに基づいた最初の職業の提案をする検査をします」
「検査ってなんか質問責めみたいなの?」
「ううん、さっきの虫眼鏡つかうの」
あの虫眼鏡、変な名前でもついてんのかとおもってたら普通に虫眼鏡だった。
「ふん、俺の事だ。きっとあらゆる職業への適性が高いに決まっている。俺は別の世界ではきっと覇道を歩み、ゆくゆくはその世界を統べる王として―――」
「うーん、これから紹介出来る職業への適性は全てあるんだけど、どうやらこれと言って抜けて高い適性はないみたいね」
「は?」
「多分、魂が分割しちゃった影響なのかも。とりあえず、あなたの出来そうな職業をいくつか紹介するわね。まずは、魔術師」
「え、魔術師? それって腕から光のソードだしたり、ファイナルかめはめ波出すアレか?」
「だからベジットは――――――もう。何も無いところで火を起こしたり、雷出したりするアレよ。杖とか持ってるやつ」
「うおおおおおおおおお! かっけえ! え、魔法出し放題って事?」
「人より魔力………というか、あなたの言語で言うならばMPと覚えられる魔法の数が多い職業ね。もちろん魔法を行使するにあたって周囲に与える影響も大きい。同じ魔法でも他の職業で魔法を行使する場合よりも高い威力を発揮する事が出来るの」
「まじかよ。無敵じゃん。そこまで最強とかなんか裏ありそうだな。代償とかあるの?」
「代償? うーん、欠点みたいなもの、って事かしら? 一応あるわよ。虚弱体質だったり、一生童貞だったり――――――」
「却下だ。一生童貞は流石に嫌だ」
「あなた結構女好きなのね。魔術師ってだけでクソほどモテなくなる欠点はあるわ。確かに、ツインレイと統合するにはあまり良い選択とは言えないわ。でも――――――」
「俺っぽい職業とかってないの? Z戦士とかさ」
「Z戦士って職業はないけれど、戦士という職業はあるわよ。確かにあなたには適正もあるけれど、貴方の人間性を加味すると多分向いてないんじゃないかな」
「なんでだ?」
「基本的に誰かに従事する事が基本だから」
「却下だな。ずっと誰かの犬として生きるのも俺の生には合わない」
「あなた前の世界でよく転職活動しようって気になったわね……… まぁいいわ。そんな人向けの職業も一応あるけれど、うーん」
「お! 俺に向いてる職業あるなら最初から言ってくれよなぁ~」
「いや、その職業だとツインレイとの統合って点を考えても苛烈を極めるわ。ボス戦とかほぼ詰みだし、一匹狼向けの職業でありながら、一匹狼が生きて行くには虚弱すぎる」
「どういう職業なんだ?」
「旅芸人よ」
「え、結構よくね? 金も儲けやすそうだし、一発ギャグには自信あるぞ」
「人間を相手するんじゃなくて、これから出会うであろう魔物相手に通用するようなギャグじゃないといけないのよ? それにお金儲けって………前の世界と違って金より名誉に価値のある世界なんだから、その辺も少しは考えて」
「YouTubeと競馬があれば億万長者だぜ」
「どっちもあなたが行く世界にはありません。それに旅芸人という職業にも欠点があります。その職に就いている間は結婚出来ないし、経験を詰んでもそれほど物理での攻撃力に制限があって、尚且つ使える魔法の種類も数少ないの。人が好きな人が人を支えたいが為に選ぶ職業なの」
「じゃあ俺っぽくねえな。どうせなら俺が主役っぽいことがしたい。他なんかないか?」
「あとは修道士ね。回復とサポート魔法がメインの魔術師みたいな職業だけれど、一応書記のスキルも備わっているわ」
「―――………書記ってあのミサイル飛ばす職業か?」
「それは総書記。ミサイルは次の世界にありません。ってもどこからどう見てもあなた向きの職業が見つからないわね。うーん、とっておきがあるんだけれど、果たして分裂済みの魂にそれが務めるのか怪しいわ………」
ここまで人格というか、向いている職業が少ないとなると、俺も心に来るものがあるな。次提案された奴には文句言わずに従っとこう。どうせダーマ神殿なる転職エージェントがあると思われるし、向いてなかったら転職しよう。
「んで、お前が提示する職業はなんだ」
「うーん、うーん、まぁいいや。しかし、こんなんに務まるのかしら………」
「聞こえてるぞ」
「聞かせてんのよ」
「当ててんのよ、のノリで言うなクソアマ。さっさと言え」
「ちっ、勇者よ、勇者。ほら、貴方の好きなゲームでもよく主人公とかになるアレよ」
「………………何?」
「だから勇者だってば、その気になればどんな強い魔法も、武術も、地位も名誉も金も全部手に入るあの職業よ!」
「え、ギガデインのアレか………!?」
「そうそう、ギガデインのアレ。オーブ集めたり、夢の世界行ったり、龍神族の末裔だったりするあの職業」
「俺、それにするわ! うおおお、俺の運命ってのはいつも決意を固めた時に巡ってくるんだよなぁ! じゃあ、転生よろしく。俺にもついに勇者○トの剣と光のオーブを携えてドラゴンを討伐する時がやってくるとはなぁ。前世でようやったってもんよ」
「はぁ………あなたね。簡単にもの言うけれど、貴方は分割された魂の片割れ。即ち、他の人と違って半分の魂レベルで人生がスタートするのよ。だから、最初はバカみたいに苦労するわよ」
「は? 最初は誰だって苦労してもの始めるだろ。どんなハードルでも飛び越えてやるさ」
「それと、勇者って肩書きを敢えて使ったけれど、次の世界での人生が始まった時にあなたに与えられる肩書きはそれとは違うものになるわ。これは決定事項」
「え、じゃあ勇者ってのは………」
「変身後の姿、のようなものね」
「スーパーサイヤ人みたいなもんか」
「ドラゴンボールネタから離れなさい。とにかく、勇者って仕事について言えるのは他の職業でもの始めるのと全く違う理で物事を考えなきゃいけないのよ。だから、簡単に人の手を借りる事も難しいの」
「まぁ、欠点がそんなもんだったら、俺にとってはお安いご用だ。いつも俺は俺を信じて生きてきた。だから、同じ事を………」
「さっきも言ったけれど貴方には勇者である以前に別の課題があります。ツインレイとの魂の統合。これが勇者である以前に貴方自身にとって最も大事な事なのよ」
「んで、それと勇者になる事と何が問題あるんだよ」
「他の職業は転職出来るけれど、勇者だけは転職出来ないの。だから、人生に合わせた生き方が選べない。だから、とても――――――」
「転職活動をしなくてもいいのか!?」
「いや、そういう事言ってるんじゃなくて………」
「うおおおおおおおおおおお神ジョブじゃん。すっげえ、じゃあ円滑にもの進められるって事じゃん。生きてて良かった最高」
「………死んだからここに呼ばれてるんだけど。まぁいいわ。貴方がそんなに自信満々な態度を見せるなら、貴方を勇者として新世界『アレセイア』へ転生させます」
「よっしゃー!!!」
「だからベジットは、あーもうごめんなんでもない。ちょっと魔方陣出すから、少し待ってて。はぁ全くもう近頃の男ってなんでこうも自分勝手というか、なんというか、捻くれてるかバカ正直か、バカ真っ直ぐかの三択しかいないのよ。乙女ゲームみたいな丁度良いイケメンいないのかしら」
「おい、ウスノロ。早くしろよ!」
「ほんっとうに癇にさわるわね。はい、今出します」
ってチャミュエラがキレながら言うと、俺の足下に青い白い光の魔方陣が現れた。なんか色んな形の紋章が六芒星の線を象っているけれど、なんの意味があるのかようわからん。ゲームとかだとこれでワープする事が多いがが、同じ意味合いなんだろうな。
ふんわりと足下の魔方陣が風を巻き上げると同時に俺の身体が軽くなる―――というか浮いた。超越人力だ。
まぁ、こいつも仕事だろうが、俺の手助けをしてくれた。礼は言っとこう。
「おい、女ァ! 世話になったなァ! 次逢ったら、俺がお前にLINE教えてやるからよ! 元気でいろよな」
「その言葉、そっくりそのまま貴方に返してあげる。逢えるか知らないけれど。それに、貴方が転生を完了した時、ここにいた記憶と前の人生の記憶、全部消えちゃうから」
「それでもいいさ。いつも、どんな時も何かが始まるタイミングってのは誰もが何も持ってない。まっさらな状態で始まる。そして、欲しいものをどんどん手に入れて、必要なものだけが残って、次に進める。新しい次の自分に。
だから、この記憶が消えてもこの意思が消えない限り、俺は運命的に全てを――――――」
俺の視界が段々と真っ白に染まっていく。目の前のデカい女。チャミュエラの姿も光に飲まれて薄くなる。
でも、これは新しい始まりの光。何が起こるのか、どんな奴がいるのか。どんな世界が待っているのか、俺も知らない。
楽しいこと、辛いこと、悲しいこと、イライラする事だってあるんだろう。それでもいい。
全てを好転させる鍵はいつも自分の作った轍にある。幸福の鍵はいつも自分の中にあるのなら、これから向かう世界がどれだけ歪なもので逢ったとしても、幸せを勝ち取ってやるさ。
あいつが言っていたツインレイって奴に会って、魂の統合とやらを果たして、ベジットみてえな最強の勇者になってやる。
これくらいの覚悟くらい、記憶が消える前にさせてくれ。
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