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87話 一久の誘い

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 九郎と玉枝が、予定もなく部屋でくつろいでいると一久から電話がかかってくる。九郎がスマホに出る。
 「九郎です。」「九郎君、今から来ないか。お祓いの依頼が来ているんだ。」
 「今から、お祓いをするんですか。」「嫌、夕食を食べながらお祓いの話をしよう。」
 「分かりました。」「待っているよ。」
玉枝が九郎に聞く。
 「九郎ちゃん、お祓いの依頼?」「そうだけど、今から夕食を食べに行くことになったよ。」
九郎は出かけるため服を着る。玉枝はネグリジェ姿から服を変える。
 白色のゆったりとしたブラウスにデニムのパンツ姿になる。
 2人は久沓神明社へ出かける。拝殿の右側にあるあやめの家に行く。九郎はインターフォンを鳴らす。
 玄関の引き戸が開き、一久が顔を出す。
 「九郎君、玉枝さん、いらっしゃい。」「お邪魔します。」
九郎と玉枝が居間に行くと夕食の用意がされている。あやめは夕食を手伝っていたようだ。
 「九郎、玉枝さん、いらっしゃい。」「あやめ、お邪魔します。」
夕食が始まると一久が九郎に言う。
 「九郎君は忙しいのかい。」「いいえ、暇しています。」
 「予定がないのなら家に来るといいよ。あやめも喜ぶよ。」「お父さん、余計なこと言わないで。」
 「九郎君はあやめに毎日だって会いたいだろ。」「はい、そうです。しかし、お邪魔ではないですか。」
 「私たちは構わないよ。一層、住んでくれてもいいよ。」「それはさずがに・・・」
あやめが九郎を見つめる。何かを訴えているようだ。九郎は水鏡の件があってからあやめに会っていない。
 彼はあやめにもっとあった方が良いと考える。
 「もっと、あやめに会うようにします。」「ありがとう、九郎君。」「なんでお父さんが礼を言うの。」
 「九郎君があやめと仲良くしてくれるからさ。」
九郎は話がおかしな方に行っていると思う。お祓いの話はどうなったんだと思う。玉枝が一久に言う。
 「お祓いがあるんですよね。」「そうなんだ、明日早く、タクシーで行くから、今夜は泊まって行って欲しい。」
そう言うと一久は酒を飲み始める。玉枝が相手をする。九郎はお祓いの話は聞けないと諦める。
 夕食が終わり、酒に酔った九郎は、いつも借りているあやめの隣の部屋へ行く。あやめが布団を出してくれる。
 あやめは九郎に言う。
 「会えなくて寂しかったわ。」「ごめん、これからはさみしい思いさせせないよ。」
 「本当?」
あやめが九郎を見つめる。九郎はあやめを抱きしめて言う。
 「約束するよ。」
九郎とあやめはそのまま一緒に夜を過ごす。
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