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第1章 刻印覚醒編
第7話 可憐なる武闘派アイドル?(2)
しおりを挟むシーカーはアルが指定した場所に同調してついていった。場所を転送されると、そこは晴天で波一つない綺麗な海の上で、到着した時、ボードにはあらかじめ乗っていた。
「ここか……陸も何もない綺麗な海だなぁ……」
「さぁ用意はいいかしら?」
アルはライブ衣装でティザエアーと呼ばれる空飛ぶブーツを履き、妖精のように飛び回っている。
「ファンの奴らとかはいないのか?」
「えぇここは私達だけしか入れない、個人フィールドよ。それにここの戦いは貴方のお友達以外は見れない設定よ」
「用意周到だな……」
そしてアルは自信満々に説明する。
「もし私が負ければお友達のパソコンからこの戦いの動画を世界に流しなさい。私が勝ったら……」
悩み出し、言葉に行き詰まったアルにシーカーは聞く。
「私が勝ったらどうなるって……?」
「……後で考えるわよ!!さっさとやりましょ!!」
三度顔を赤らめて怒るアルにあきれ返るシーカー。さっさと始めたくてたまらないと思うシーカーであった。
お互いに正面を向き合い10m位の間合いとをとる。シーカーは刀を出し、アルは何も出さずに拳を構えた。
「武器はいいのか」
「私はこれでいいわ。さぁ行くわよ!!恨みっこなしの一本勝負!!」
そしてカウントが始まる。お互いに睨み合い、この戦いをノートパソコンから見ているSyoは固唾を飲んで見ていた。
「シーカーが勝つかアルちゃんが勝つか……」
3……2……1……
0
カウントが0になった瞬間、お互いが一斉に相手に向かって猛スピードで動き始めた。
「先制攻撃はもらったわぁぁぁ!!」
意気揚々に近づいて来るアルの、刀を横にフルスイングするシーカー。
だがアルは刀が当たる直前で、スケートのイナバウアーのように手を広げ、体を海老反りして刀すれすれで避けた。
そして華麗に回転しながら体制を整え、すぐに後ろを振り向いたシーカーの顔を回し蹴りをくらわせた。
「ぐへっ……!!」
「それっ!!」
少し後ろに引き、蹴られた頰を手で抑えるシーカー。更にアルは追撃の如く猛スピードでつま先をシーカーの腹に真っ直ぐと蹴り突く。
「ウガ……ッ!!」
大ダメージを喰らい、思いっきり吹き飛びボードから真っ逆さまに落とされるシーカー。
「くっ……何て蹴りだ……?」
だが下は海、大丈夫だと思った矢先に海の中から巨大な直径10メートル位の影が海面から迫って来た。
「まさか……あれは!?は、︎早くダッシュボード!!」
「ここは太古の海よ、何がいるかしらねぇ~」
シーカー真下から水しぶきを上げ、海から浮上してきた巨大な影の状態は、太古の海の王者メガロドンだった。思いっきりシーカーを食うつもりで、口の中に入りそうになる。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
メガロドンが口を閉じようとした時、ギリギリでダッシュボードが戻ってきて、メガロドンの口から脱出し、食われずに済んだ。
そして上で暇そうに見ているアルの元に戻って来る。
「ナイスプレーね。ここでやられると思ったのに」
「ふぅ……強いなあんた」
するとメサから、Syoが連絡していた。
「Syoか?こんな時にどうした?」
「アルちゃんはあぁ見えてリアルのプライベートだと武道に精通してるらしいから格闘技は強いらしいから気をつけろよ!!」
「なぁるほど……」
メサのSyoからの連絡を切らずに戦いに戻る。再び対面に睨み合う2人。余裕の表情のアルに少し焦りの顔を見せるシーカー。
そしてシーカーは左手を後ろに置き睨み合う。
「いつまで睨み合う気?このまま時間を待つの?」
「さぁな……待つ事はない!!オラァ!!」
左手に隠し持っていた白い筒こと白煙筒をアルに投げつけた。すぐに蹴り返そうと脚をあげた瞬間、白煙筒が爆破し、アルを白い煙で包まれた。
「ゲホっ、ゲホっ……睨み合っていたのは白煙筒の爆破時間を稼ぐ為なんて……」
「あぁ!!そうだ!!」
煙の向こうから聞こえてくる声がこちらに近づいて来た。そしてアルの目の前に、右手に刀を構えたシーカーが現れた。アルは振りかざした刀を軽く避け、シーカーは更にアルに刀を振り回すが、全て紙一重に避けられてしまう。
そして横に全力で刀を振ると、アルは後ろにジャンプし、そのまま空中から両膝を曲げてシーカーの後ろ首に膝蹴りを食らわせた。
「ぐはっ!!」
蹴られた勢いで煙から追い出され、何とかボードで態勢を保つシーカー。すると、煙の中から右拳を突き出した状態のアルがこちらに飛び出て来た。
すぐさまシーカーはレッドクリスタルを5個出し、アルに発射する。
「喰らえ!!」
だがアルは余裕の顔で飛んでくるクリスタルをこれまたギリギリのラインで美しく踊るダンサーのように華麗に避け、そのままシーカーの元にそのままのスピードで左頰にストレートに殴りかかった。
「ぐっ!!」
強烈な一撃で体勢が崩れて、怯むシーカーに、更にアルは後ろ回し蹴りを右頬に直撃し、上に吹き飛ぶ。
「それっ!!」
アルは右手に縄を出し、シーカー目掛けて投げた。縄はシーカーの腹部分を包み、両腕ごと縛られ釣りのように海面すれすれに吊るされる。
「縛られてる状態ならボードは出せないわよね‼︎魚の餌にでもなってもらうかしら‼︎」
「くっ……不覚!!」
メサを操作出来ない為、ボードを呼ぶ事が出来ず、万事休すとなるシーカー。
この戦いを見ているSyoはシーカーのピンチにハラハラする一方で、ちょっとうらやまそうな顔を見せる。
「アルちゃんは、ちょっとSな部分もあるから、ちょっと羨ましいなぁ……」
音声がシーカーに丸聞こえで、そんなデレているSyoに怒る。
「そんな事言ってる場合か!!こっちは食われそうになってんだよ!!」
「ご、ごめん!!」
海面から巨大な影がまた接近して来た。慌ててSyoはシーカーに言った。
「シーカー!!召喚獣だ!!召喚獣はメサを必要とせず、呼びかけで出てくるんだ!!
「召喚獣!?そうか……出てこい!!俺の召喚獣!!」
縛られたシーカーの目の前に現れたのは、元気いっぱいの小さな羽の赤い可愛らしいドラゴン、レッドベビィドラゴンだった。
出てきたばっかりなドラゴンは嬉しそうに縛られているシーカーの周りを飛び回っていた。
「喜ぶのはいいけど、早く紐を切ってくれ!!」
シーカーが言うとドラゴンは荒い鼻息を出しながら、小さく鋭い嘴で紐を一生懸命食いちぎろうとする。
「させないわよ‼︎……」
左手からも縄を出し、ベビィドラゴンに投げようとするが、健気に紐を食いちぎろうとする可愛い姿に、縄を投げることが出来なかった。
「うぅ……」
「近づいてきたぁぁぁッ!!」
そしてベビィドラゴンは海面から近づいて来る影を見て慌てて食い千切ろうと一層頑張った。
「あと少しだ頑張れドラゴン!!」
そして紐何とか食いちぎった。
「うおっ!!サンキュ……うわぁぁぁ!!」
食いちぎったのはいいが、そのまま海に落ちていくシーカー。そして海面よりメガロドンがまた出て来て丸呑みにしようとした。だが、メガロドンが大きな口を閉じた時にはもうシーカーはその場にはいなかった。
「ふぅ……助かったぜ……」
ベビィドラゴンが必死に小さな羽をパタパタと羽ばたかせて、ベビィドラゴンの足をつかんでいるシーカーを助けたのだ。
そしてシーカーはボードを出し、ボードに乗った。
「助かったぜ……戦い終わったら絶対に名前つけてやるからな」
ベビィドラゴンは一旦役目を終え、シーカーの周りをくるくる回りながらポンっと消えていった。
「あんた可愛いものに目がないようだな」
「そ、そんなわけ……!!」
あの時も攻撃する暇が充分にあった。だけど、アルはドラゴンに見惚れて攻撃出来なかった。
赤面で言うアルに対し、シーカーは刀を消した。
「な、なにを?」
「刀も拳も良さそうだが、俺も拳で行くぞ!!第2ラウンド開始だ!!」
拳を構えてニヤリと笑うシーカーであった。
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