刻印戦記-AlterFrontier(アルターフロンティア)

ワサオ

文字の大きさ
9 / 46
第1章 刻印覚醒編

第8話 刻印発動しない!?

しおりを挟む
 
「女だからと言って手加減して殴るって訳にもいかねぇいいのか」
「えぇ……今はアイドルとしてのアルじゃなくて戦う者としてのアルと見てちょうだい!!」
「そう言ってくれるとやりやすい!!」

 その言葉と共にシーカーは拳を強く握りしめて、楽しげな表情でアルに突っ込んだ。ボードを波打つように激しく右と左に揺らしながら牽制する、そして腰を軽く右に曲げ、右腕を下げた。
 少し身構えたアルにそのままの状態で暴走機関車の如く猛スピードで急接近し、目の前で殴る事はせず真隣を通過した。

「何っ⁉︎」

    シーカーの予想と反して横切ったアル。
 横切った時に発生した風で、一瞬髪が少し跳ね上がり、そして一瞬で髪がふんわりと戻った。その1秒の膠着の後にすぐに後ろを振り向いた。するとシーカーは水面ギリギリで水しぶきを上げながら華麗なUターンを軽々と決める。そのまま一切のスピードを落とすことなく、狙いを完全に定めたミサイルのようにアルに特攻する。アルもすぐに回避しようと動いたが、猛スピードで動いているシーカーと、今動こうとするアルのスピードの差は歴然である。
 アルは上へ移動したものの、その時には目の前に拳を自分に向けて振り上げているシーカーの姿があった。

「くっ……(回避が間に合わない!!)」

 すぐに腕で×の体勢を取り、シーカーの攻撃を防御する。拳はアルの防御している右腕に骨と骨がぶつかる音が聞こえると共に当たった。防御こそは崩れなかったものの、シーカーのロケットのようなスピードを加えたパンチはアルの腕はもちろん、身体全体に広範囲なダメージを与え、パンチの衝撃で後方へと飛んで行った。

「うっ……何てパンチなの!?」
「逃すか!!」

 追撃する為に、飛んで行くアルを射た矢の如く直線に追う。
 アルは身体の力を入れて1度空中で一回転し、水面ギリギリで体勢を整えた。

「今のパンチは良かったわよ……でも私も!!」

 アルも迫って来るシーカー目掛けて同じく射た矢の如く直線に突撃する。
 シーカーも避けようとせず、拳を握りしめた。お互いは拳を構え頭から突っ込む。2人は喉の奥から全力で声を出し、そして正面からぶつかり合うつもりのようだ。

「はあぁぁぁぁ!!」
「うおぉぉぉぉ!!」

 お互いに右拳を振り、拳と拳が空を裂くような音を立ててぶつかり合った。衝撃により半径5m以内の海面が半分の球体のような穴が出来た。そしてお互いに一旦1mほど後方に下がり、再び急接近しパンチとキックの攻防が始まった。シーカーは主にパンチで応戦し、アルはパンチとキックを交互に繰り出しながら応戦する。だがお互いに攻撃を1発1発確実に防御し、そんな壮絶な戦いをしている中、目を合わせてニヤリと笑いながら攻撃と防御の応戦を繰り広げていた。

「こんなに楽しいのは初めてかもしれないわ!!」
「俺もこんなに強い奴は昨日以来だぜ!!」
「昨日?……私も舐められたものね!!」

 そう話しながら攻防を続けると、三度海面から黒い影が迫ってきた。それはメガロドンが迫る合図。だがお互いに近づいてくるのは分かっているはずだが、一切逃げようとはせずにまだパンチとキックの攻防を続ける。

「さぁ……どっちが早くが早く逃げるかのチキンレースだ!!」
「いいわよ!!チキンレースは私も好きよ!!」

 簡単に言うと度胸試しだが、むしろこのチキンレースを楽しんでいるようにも見える。
 この戦いを見ているSyoは口を半開けし、唖然としながらさらっと呟いた。

「こんなに楽しそうなアルちゃん、ライブでも見た事ないよ……」

 徐々に迫ってくるメガロドンの影、どちらが先に動くか。だがこの状況で2人の顔から恐怖という感情はなく、純粋のこのチキンレースと攻防を楽しんでいる。

「さぁ早く退いた方がいいんじゃないのか!!」
「そっちこそ逆にびびって動けないんじゃないの?」

 そう話しいるうちに、海中よりメガロドンが飛び出てきた。

「来た!!」
「どっちが先に……!?」

 メガロドンが海面から出て来た直後、2人はほぼ同時に動き、メガロドンの攻撃を紙一重で避けた。
 そして2人とも空中に戻り、またニヤリと笑った。

「貴方の勝ちのようね」
「あぁ……そのようだな第2ラウンドは俺の勝ちだ……」

 見ているSyoにはどっちが早く動いたかさっぱりわからなかった。

「よく2人とも分かったな今の……」

 このチキンレース、先に動いたのはアルだった。ほんのコンマ1秒の差でアルの方が早くメガロドンから離れていた。

「なら次でファイナルラウンドね……」
「そうだな、次で最後だ‼︎」
「ちょっと準備させてもらうわ」

 するとアルは両手を軽く広げて、目を瞑りだした。この状態にSyoは咄嗟に気付いた。

「これはまさか⁉︎」
「どうしたんだ?」
「あのポーズ……噂では聞いていたが、本当にあるなんて……」
「だからどうしたんだよ!!」

 ちょっとSyoに怒り気味のシーカーに対し、アルの身体に異変が起き始めた。
 左右に分かれた白黒の髪の黒部分が徐々に白へと染まっていき、目も緩やかなぱっちりとした目から、凛とした鋭い目に変貌し、可愛らしいアイドルのイメージから大人に雰囲気をだしたアイドルへと変化した。

「さぁ本気タイムよ」
「つまり俺は舐めプをされてたって訳か……」

 だがシーカーはワクワクした顔を抑えられない。そしてアルは頭からシーカーへと向かっていった。

「行くわよ!!」
「あんたも本当を出すぜ!!」

 そう言うと上を向き右拳を空に掲げ、正面を向いて拳を胸を当てて、まさに特撮ヒーローのようなポージングしながらカッコよく決めセリフを叫んだ。

「炎の刻印解放だ!!……ってあれ?」
「隙あり!!」
「グヘッ!!」

 炎の刻印は発動せず、そして突撃してきたアルに頰を殴れるは踏んだり蹴ったりだ。先程よりもパンチの威力は格段に上がっており、かなりのスピードで後方に飛んで行った。

「まだよ!!」

 アルは飛んで行くシーカーに対し、追撃を行うべくその場から消えた。それはシーカーが飛んで来る場所に見えない程のスピードで先回りし、タイミングよく回し蹴りを食らわした。蹴りは横腹に見事に当たり先程とは比べ物にならないほど想像を超える痛みを襲ってくる。

「ぐわ……っ!!」
「まだまだ!!」

 シーカーは上を向いた状態で上空へと蹴り飛ばされ、アルはまたその場から消えて先回りした。そして右足を体操選手のように器用に足を上げ、シーカーが来た瞬間その足を全力で振り落とし、足はシーカーの腹に直撃した。

「ぐあっ……!!」

 そのままスピードを落とすこと無く、海に水しぶきを上げなら落下した。

「ふぅ~私の勝ち……かしら?」

 勝ったと確信するアル。すると海面から
 新鮮な小魚を口に加えてシーカーが、ボードに乗りながら浮上して来た。

「あら?まだ大丈夫?諦める?」
「ぺっ、まだだ!!こっから本番、炎の刻印!!解放だぁぁ!!……?」

 小魚を口から吐き飛ばし海に戻した。そして再び拳を胸に当てて叫んだが、何も起きなかった。

「どうしたの?本番を見せてよ貴方の!!ー
「へへ……こ、これもパフォーマンスの一種なんだよ!!」

 余裕そうに表情なシーカーだが、その裏では額から多量の冷や汗を流れてきている。そして内心でもかなりの焦りを見せている。

(嘘だろぉ~!!刻印って自由に発動しないのかぁ!?)

 Syoも不安そうに戦いを見ている。

「おいおい自分のスキルくらいちゃんと把握しとけよぉ……」
「は、発動してくれ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...