断罪魔嬢・ザ・ダークヒーロー ~破滅のさだめの令嬢は黒き魔鎧で無双する〜

草葉ノカゲ

文字の大きさ
46 / 64
第三部 天嬢篇

仮面舞踏会【前篇】

しおりを挟む
 聖騎士任命式典。

 王国にわざわいが降りかかるとき、これを払うため顕現するという「聖女」。
 それは建国三英雄のひとり、聖女ミレイアの生まれ変わりとされる。

 前回の顕現は百年ほど前、辺境で魔物マモノが異常発生し王都を目指した大侵攻インベイジョンのときだ。

 聖女は強力な聖魔紋の使い手にして、人格こころでも人々を照らすとされている。
 しかしその力は元来、護りと癒しに特化したもの。その中で唯一にして最強の「攻撃」の力が、聖女ミレイアが聖騎士パラディオンに授けた逸話で知られる「絶聖ゼッセイの加護」だ。

 百年前の大侵攻インベイジョンも、一騎当千のその加護ちからを与えられた青年が元凶である大瘴獣ベヒーモスを討つことで終息したと伝えられている。

 ただし、加護それは誰でも授かることができるものではない。聖女と心が通じ合っていなくては──要するに「愛し合っていなくてはならない」と、まあ実際の、厳密な法則性は誰にもわからないのだけど、基本そういうことになっている。

 で、有事に備えてその加護を受ける「聖騎士」を選んでおくのがまさに、いま王国を挙げて執り行われている聖騎士任命式典なのである。たしかに、いざという時そんな惚れた腫れたの話をやってる場合ではないから、理屈はわかる。

 つまりだ。聖女は公衆の面前で、聖騎士になってほしい人の名前を宣言こくはくさせられる。相手がそれを承諾すれば、晴れて当代の聖騎士が誕生する、というわけだ。
 よく考えると罰ゲームみたいな儀式だけど、マリカ本人は楽しみにしていたようだから、まあ、いいのかな。

 で、現実あちらの世界から見た「ゲーム」としてもそれが最終イベントになるはず。あまり想定していなかったけど、もしかして断られたりすることもあるのだろうか。そうなったら最悪のバッドエンドになってしまうのかも知れない。

 ──色々と複雑ではあるけれど、今は主人公マリカを応援するしかない。

 かくいう私は、王城の大庭園に設置されたいくつものテーブルセットのひとつに、いつもと同じ紫の、ただしいつもより豪奢な典礼用のドレスを身にまとい腰かけていた。──これ、お母様から受け継いだもの。

 抜けるような晴天の下、白砂利の敷き詰められた会場前方にしつらえられたのは、さらに純白の舞台ステージ
 その上に、空と同じいろの法衣に身を包んだマリカの姿があった。栗色の髪を今日はいつもの二つ結びではなく、まっすぐストレートに流して背の半ばでひと房にまとめている。

 なんだか本物の聖女っぽい、そう本人に言ったら大笑いしていた。ほんとに、いい子。だから、彼女にも幸せになってほしい。誰を「聖騎士」に選ぶとしても。
 
「──さあ、聖女マリカよ。騎士の名を」

 彼女の傍らで、長い白髭をたくわえた高位神官が促す。
 舞台下からは、数人の候補者たちが横並びでマリカを見上げていた。
 白い礼服が似合い過ぎるほど似合うリヒトは、もちろん最有力候補。その傍らにはラファエルの姿も見えた。さすがにユーリイはいないが、端の方には黒いジンくんの姿もある。
 ここにジブリールも並ぶ可能性があったということに、漏れそうになる苦笑を私は必死に噛み殺した。

 マリカは、そのひとりひとりに順に、丁寧に目を合わせていく。リヒトのときだけ少し時間が長かったように感じられたのは、エリシャ わたし の思い込みだろうか。

 最後に彼女は、空を見上げる。もう、心は決まっているはず。しかし、彼女はなかなか口を開かなかった。視線を上に向けたまま、すこし首をかしげる。
 釣られて候補者も列席者もみなが見上げた青空。悠然と飛ぶ一羽の鳥の傍らに、黒いが浮かんでいた。
 
 ──来た。

 黒点はなめらかに拡がって、黒円になる。そして、真昼の青空に口を開けた、そこだけ夜空に繋がるかのような黒い穴の向こう側から。

「……あれは、何かしら?」

 誰かの疑問に応えるように、紅い何かが産み落とされて会場のど真ん中に落下した。
 響く破壊音と悲鳴のなかテーブルの残骸の上に立つのは、血のような紅色の鎧姿。

 ジブリールの試整壱型プロトワンは、ところどころ魔紋がむき出しだったが、これは全身が紅の装甲と素体スーツで覆われている。間違いない、私がこの世界に来る直前、アニメで見たスマートな帝国兵の魔鎧、そのものだ。

 お父様いわく、設計段階でジブリールは量産型マスプロをこう呼んでいたという。

 ──魔鎧兵レギオン
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

処理中です...