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たぶらかすまで
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「ん。‥‥ふぁ」
「おはよう、千尋」
「んむ・・・・おはよ、」
ぼやっとした頭で下腹部の熱を確認する。まだつながってる。いったいいつまでつながってるんだろう。
「喉乾いた?お水いる?」
「ん。」
彼は大変甲斐甲斐しく私の世話をする。喉の渇きも空腹も体の浄化も全部彼が用意して、彼が世話をしてしまう。彼が喉を一撫ですれば、喘ぎすぎてガラガラになってしまった声が元に戻ったし、瞼を撫でられれば、限界点を優に超える快楽の連続に泣きじゃくって腫れた瞼も元に戻った。
排泄?お願い聞かないで。
私が頷くのを確認すると、ニシキさんはにっこり笑って「はい」と答えた。体を支えるものが、彼の腕からしっぽに入れ替わり、彼の体がすいっと離れていく。ひょこんひょこんと動く尻尾の先端が目に入った。なんともちょうどいい位置にあるそれを、特に考えもなしに咥えてみた。
ちょっと遠くで「ひゃあっ!」と女の子みたいな悲鳴が上がる。咥えた尻尾がびくびくと動いて、私の中で彼が痙攣した。それに呻きながらも、妙な満足感ににんまりと笑う。ふふんっここにきてようやっとニシキさんの弱点を発見した。強すぎないように気を付けながら、かしかしと噛みしだいてみる。むぎゅっと私を支えている蛇の体に力が入る。やっぱり弱点なんだ。ふふんっ。口の端からよだれが垂れるのも気にせずに、舌を這わせる。
散々苛められたんだもの。多少仕返しくら―――
ずんっ、締め付けのきつくなった尻尾が私の体を固定して、脚の間の胴体が蠢き、子宮に殴られたような衝撃が走って、私は一瞬で思考を吹き飛ばされる。
「んひぃいいいいっ」
体が反り返ったせいで、口からしっぽが抜けてしまったけれどそんなことに気をやっている余裕はない。私の子宮をぶった凶悪なそいつは、その切っ先でわたしの奥のさらに奥にある入口を厭味ったらしくなぞっているのだ。どう嬲ってやろうか、とでもいうように。
「あぅっあっあっあっ」
「もう、悪戯しちゃダメでしょ。お水こぼしちゃったじゃないか」
「ごめ、なさっはっ、あっやあっ入れないでっ」
戻ってきたニシキさんは尻尾から腕へ私を抱えなおすと、にっこりと一つ笑って、腰を掴みそのままぐりぐりと彼の腰へと押し付ける。私の哀願もむなしくそれはずりゅんっと我が物顔で私の子宮へと入り込んだ。
「きゃひぃっ!!ひぃいいんっあっ!あんっ!」
「ちょうどいい、そのまま口を開けててね」
そういって、彼は木の器を煽ると、喘ぐ私に口づける。口移しで少し甘く感じるような水道水ではありえない優しい味の水がゆっくりと流し込まれる。喉を鳴らしてそれを飲み下す。おいしい。苦しい。おいしい。
飲み下し、唇が離れると、私はどうしようもなく悔しくて、少しは彼の鼻を明かしてやりたくて、息も絶え絶えに言ってやった。
「ニシキ、さ、ん。あっ、あんっ、はっ・・・・ひゃんって言った」
「五月蝿いな。びっくりしたんだ」
「んっんっ、はぁっ、あっ、弱点、みーつけた」
ニシキさんの口調を真似てそう言うと、少しばかり頬を上気させてそっぽを向いていしまった。初心な反応しちゃって、かわいー。
にまにまとするのを隠しもせずに見ていれば、じとり、と大変蛇らしい視線を向けられる。それから貴公子みたいにいい笑顔を浮かべた。
あ・・・・これいけないやつ。
「ご、ごめん」
「千尋はたくさん弱点あるよね?」
「やっ・・・ん。あの、」
「まずは乳首でしょ?」
「あうっ」
「クリトリスもすーっごく気持ちよさそうにするね?」
「ひんっひゃぁああっ!」
「おしっこの穴も好きだよねぇ?」
「ちがっひゃめっひゃ、あ、あ、あ、あ゛ーーーっ!」
「耳のなかもいっぱい舐めてあげる」
「!!っっひっ・・・・あっ・・・・」
乳首を摘ままれ、陰核をさっき弄んだ尻尾の先に転がされ、尿道には小指をめり込ませられ、わざとらしく音を立てながら耳の中をなめられる。
突っ込まれたままの中が久しぶりに激しく収縮し、愛液を噴き上げながら果てる。だけど彼の責苦は止まらなくて、それらの刺激はそのままに、ざわっと棘が内壁を擦りあげ、私の弱いところを抉った。
「あっ、あーーーっ!!ああああああああああっ!!やぁあああああああああっ」
真上を向いて、快楽に飲まれ悲鳴を上げる。のけぞる私を胸に抱いたまま少し伸びあがって私を見下ろすニシキさんは、荒い呼吸で、今にも涎を垂らしそうな、恍惚とした表情で私に熱い視線をぶつけてくる。
そんな目で見ないでよ。そうじゃなくてもおかしくなってるのに、ますますおかしくなってしまう。
「んは、はっ、・・・くっ。千尋っ・・・っ千尋」
いろんな言葉を、思いを全部閉じ込めたみたいに私の名前を呼ぶ。そんなに好き?と聞いてしまいたくなるほど、ダダ漏れの好意がそこにはあって、私はそれにひどく安心してしまう。
こんなにも、誰かから必要とされたことがあっただろうか。
強すぎる快楽に悲鳴を止められなくて、でも彼の名を呼びたくて、歯を食いしばろうとすると、口の中に指を突っ込まれてしまった。
仕方がないので、すがるように彼の首に腕を回して抱き着いた。ちょっとでもくっつけばいいと思った。ニシキさんの冷たい肌はすごく気持ちがいい。
散々好きにしてきたくせにためらうように抱かれた肩が、次の瞬間には軋みそうなほど強く抱きすくめられる。
「あ、あ、も、千尋っあっ!出る、イって、イって千尋っ」
「ひんっイってるっあ゛!イってるのぉっ!あっあっまたっまたぁあ!んやぁあああああああああああああああっ!!!」
もう何度そこに吐き出されたかしれないけれど、毎回焦げてしまうんじゃないかというほどにそれは熱い。
ニシキさんの荒く長い呼吸音と、まだ痙攣の収まらない私のだらしない喘ぎ声ばかりが聞こえる。しばらくそのままだったけれど、やがて強く抱きすくめていた腕が多少ゆるむ。まだ小さくあえぐ私の額に、ちゅうっとキスを落としてくれた。
優しく喉を撫でられるとガラガラとした不快感が消える。便利な手をお持ちで羨ましい。
「ん・・・・ありがと」
「ふふっ。どういたしまして」
やわらかく笑ったニシキさんは木偶人形か何かのようにまるで動けない私を尻尾に持ち替えると(尻尾の先端は背中側に回されてしまった。警戒しているらしい)、器用に胴体をくねらせて私を中心にとぐろを巻いた。
そうしてそっとというよりはもはや恐る恐ると表現したほうがよさそうな優しい尻尾使いで、私をその段々に重ねた鱗を纏う彼の体にもたせ掛ける。
うん。悪くない。鱗気持ちいい。
彼は少しばかり私を見下ろすくらいの位置で、自分の蛇の胴体の上にうつ伏せに寝そべると、ふう、と息を吐いた。くすぐるように冷たい指先が頬をなでてくる。
完全リラックスモードだけれど、まだ私は体を貫かれたままなわけなのだが気づいているだろうかこの男。もう本当に、指一本動かせないどころか痙攣すらできない状態でぐったりと彼のとぐろを巻いた胴体に寄りかかっている私を見て多少は哀れと思ってくれないだろうか。
2回、自分で認識した眠りに落ちた。寝起きの気分の良さからして恐らく熟睡していたに違いない。意識を強制終了させられた数はちょっともう数えてない。
何度か口移しで果物をもらった。ものすごく芳醇な桃だった。
何が言いたいのかといえば、その間ずぅうっとこの人外のブツは私に入りっぱなしと言う話だ。蛇怖い。
排泄?もう聞かないで。
「千尋かわいい」
もう口癖のように彼は私にそういう。これは爬虫類的ピロートークということなのだろうか。最中だけどね。まだ中に入ってるからね。事後じゃないんだけどねっ!
しかも甘ったるい声でべたべたとあまえてくるのは、私じゃなくてニシキさんだ。普通性別逆じゃない?なんで女の私がスーパー賢者タイムに入らなきゃならないんだ。もう何でもいいよ。好きにして。・・・実際好きにされているのだけれども。
「千尋、蛇のこと全然知らないんだね」
「知らないよ」
「蛇の交尾は長いんだよ?」
「うんもう身に染みて知ってる。現在進行形で学習中。でももう本当に勘弁して」
「えーー?私はまだ千尋と繋がってたいなぁ」
もうちょっとだけ、ね?と言って、気だるげに寝そべったままゆるっと笑った。滴ってる。色気が滴っちゃってるよニシキさん。
ぽーっとぼやけた頭で、平日のど真ん中だったんだけどなーと、場違いなことを考えていた。とりあえず、二日は経ってしまっているんじゃないだろうか。会社、無断欠勤なんて今まで一度もしたことないのに。
その思考が、ひどく現実逃避したものであることなんてわかっていた。
ここは、私の部屋ではない。
薄暗いのと彼の体がうねうねしていて視界が開けることがないので部屋の全貌は確かめていないけれど、明らかに私の部屋より広いし、何よりうちの床は畳ではない。天井だって板張りで更には幾何学模様の彫刻まで施された、どこの博物館だよ、みたいな仕様ではない。
いつここに来たのか、正直私はわからない。でも多分、それは重要なことではない。そこではない。もうきっと、私は戻れないということだ。
会社は迷惑だろうな。勤続年数長かったのにな。クビだよな。友だちには心配かけるだろうな。きっとあちこち探してくれると思う。でも私は見つからない。誰もここには迎えに来ないだろう。実家はまあいいや。これで念願のこの血筋を絶やすことができて、そこに関しては万々歳だ。
ああでも。
でもそうだな。きっと私がいなくたって会社は回るし、友だちだってそのうち私を諦める。元カレはきっと私が居なくなったことを知る術すらない。実家なんかは失踪届けを出すかすら怪しい。そのうち誰も、私がいたことも忘れてしまうんだろうな。
何を言っているんだろう。当たり前だ。たった一人に支えられている社会的集団なんて、未来に崩壊が見えてる。一昔前ならともかく、今のこの国に一体どれほどのいなくてはならないたった一人がいると言うんだ。
違う。そうじゃない。私がいいたいのはもっと、そう、精神的な。そうだ。
私が居なくなったら悲しすぎて死んでしまう人が居たらいいのに。
・・・なんて。センチメンタルな精神で思考が走り、なんとも救い難い結論を結ぶ。
馬鹿馬鹿しい。元カレの笑顔が浮かんで消えた。
彼はもちろんそんな男ではなかった。それにそんな人がもしいたならば、私は鬱陶しく感じていたに違いないし、そんな精神の弱い人間を支える甲斐性もない。それにきっと、ニシキさんに「赦す」なんてことは言わなかったに違いない。そんなに脆い存在を残して、快楽に溺れられる訳もない気がする。
そう、別に帰れないことについては、割と割り切っていた。私が「赦す」と言ったんだ。ダメだと分かっていたのに。
彼を受け入れる道を選んだのは、ほかならぬ私自身だ。
「私、もう戻れないんだよね?」
質問の割に、私の声音は驚くほどに軽かった。同じ調子で「明日は雨かしら?」と問えそうなくらいには。それに対するニシキさんの答えも、比例するように軽いものだった。
「うん。もう戻れないし、戻す気もない」
「そう・・・。まあいいんだそれは」
ニシキさんはおかしそうにくすくすっと笑って、いいの?と問う。何を言っているのか。戻さないって言ったじゃないか今。投げやりに頷いて返す。
「ねえ千尋。何をそんなにさみしそうな顔をしているの?」
「うーん、自分でもよくわかんないような、とりとめもないことを」
するっと尻尾が巻き付いて、私をわずかばかり抱き上げる。抱き上げても彼の腰も一緒についてくるのでブツは抜けてくれない。
そうして彼の腕が背後から私を抱き支え、ゆるゆると腰から下へと尻尾が這っていき、巻き付き、のたくるように複雑に、私の下半身は白い蛇の体に絡まり、覆われた。
なんだ?と思って見上げてみると、猫のように頬擦りをしてきた。なんだなんだ。
「千尋は、もう逃げられないんだよ。私と一緒にいるんだ。もしあなたが死んでしまったら私も死ぬから、私が死ぬときに殺させて」
どきっとした。
だってそれは、さっき私が考えた馬鹿げた考えにさらに輪をかけたようなものだ。見透かされたような気がして、心臓がざわついた。
「まあ」
そんな日は永遠に来ないだろうけれどね?
ニシキさんはそう嘯いて、鎖骨から耳の後ろまでをつつっと舐めあげてきた。この化け物はいったい何を言っているのか。永遠などというのはまったくもって世迷言もいいところだ。
「いやいや、ニシキさん。ご存じないのかもしれないけど、人間には寿命というものがあってね」
「ふふふっ知ってるよ?でも大丈夫。千尋はなーんにも気にしないで?」
え、なに。どういうこと。気になりますけど。
おそらく私の表情が引き攣っていたのだろう。くすくす笑いながら頬を摘まんで無理やり笑顔を作らされた。不細工な顔をしているに違いない。
「むぐっ」
「私に寿命がないのに、千尋に寿命があるなんておかしいもの。千尋はただ、私と一緒に過ごしてくれたらいいよ。そのうち日付を数えるのを忘れるさ。うちは庭も屋敷もそれなりに広いから、そう簡単には飽きないと思うし、ほしいものがあれば用意するよ、私に用意できるものならだけど。
私は千尋の話をたくさん聞きたいし、私の話もたくさん聞いてほしい。
ねえ私は、あなたの独り言をたくさん聞いたけれど、でもね千尋。私はあなたともっとちゃんとおしゃべりがしたいんだ」
独り言、という言葉を聞いて、私はニシキさんを買った日のことを思い出していた。
当時私は就職したての、上京したて。まんまお上りさんだった。寮住まいではあったけれど、初めての一人暮らしと都会の様子に、ちょっとばかりわくわくして、おっかなびっくり週末のたび、地元の街を探検した。
実際、私が住んでいるのは「市」だったし、しかも都に隣接した「県」だったけれど、ド田舎から引っ越してきた私にとって、そこは間違いなく都会だった。
そんな探検の中でレトロな小物やさんを見つけた。
古物商も営んでいるらしく、新品の髪留めと香炉が一緒に並んでいるような、薄暗い穴倉みたいな、だけど不潔感のない、ごちゃごちゃと置かれた商品すらも魅力的な、計算して置かれているような、好奇心をそそる店のたたずまいだった。
私はその場所がとても気に入って、大して買い物もしない癖によくお邪魔した。
その店に若い女性客というのは珍しかったらしく、何度か通うと顔を覚えてもらえて、好々爺然とした店主の垈(ぬた)さんとは、苗字を呼び合って、世間話をする程度には仲良くなった。
その日、私は買ったばかりのマフラーをしていたことを覚えているから、きっとあの日は冬だったに違いない。来店早々、垈さんが「かわいい子が来たよ」と言って店の棚の一つを指さした。そこに白蛇さんがいたのだ。
白い瀬戸物でできたそれは、不思議な艶感があった。カラーリングもされていないから白一色なのに、その目がきらりと光ったように思えた。あの時私は、確かに白蛇さんと目が合ったと感じた。そっと間違っても落としたりしないように両手で持ち上げてみて、矯めつ眇めつ眺めて、蛇にも瀬戸物にもまるで興味がなかったのに、どうしてもその白蛇さん(私の中で、彼は最初から白蛇さんだった)がほしくてたまらなくて、いやでもお高いんでしょう?と思いながらひっくり返してみると、意外なほどの安価だった。もちろん即決して購入して、持ち帰った。
白蛇だから、鳥居があったほうが恰好がつくかもしれない、とさらに百均に寄って初代鳥居を購入したことも覚えている。今更だけれど、ちゃちな鳥居だった。というか鳥居の置物が売っていたことに驚きだ。あれ需要あるのかな。
彼が来てから独り言が増えた。家の中限定で。
なんでもしゃべった。何かあった日はそのことを話したし、何もなければ思っていることをつらつらと話した。独り言なんて今まで口にしたこともなかったのに、だけどいつもちゃんと聞いてもらえている気がしていて、家に帰るとぺらぺらと白蛇さんにいろいろなことをしゃべった。家に帰ると蛇の置物に独り言言うようになってしまって困ってます・・・、なんて相談ができるような相手もおらず、結局そのまま治らなかったな。
私こうやって考えてみると、ニシキさんに一目惚れしてるな。
「千尋?」
「いや。一目惚れだったなと思って」
「ああ、私をあのお店で見つけた時?ふふっ嬉しい」
奇麗に笑う。
胸焼けしそうな視線が私を射る。そんな目で見られるのには慣れない。胸の中が煮えてしまいそうだ。
そういえば・・・。
「赦す、ってなんだったの?」
ニシキさんはぎゅっと私を抱く腕に力を込めると、背後から私の耳の軟骨を甘噛みした。
「千尋は私のご主人様だからね」
「ごしゅじんさま?」
どこがだ。
その一言に尽きるのではないだろうか。散々な目にあったんですけど。お仕置きとかされたんですけど。誰がご主人様だ。むしろ逆だろう。
っていうかいつご主人様になったの?
「そう、ご主人様。だからね。別に無理やりできないわけではないんだけど、そんな下剋上みたいなことをしてしまうと、千尋の心が壊れてしまうかもしれないからね。そんなのは嫌だから、私が千尋を抱くことを『赦して』もらったんだ。でも千尋ったら、『全部赦す』なんて言ってくれるんだもの。ねえ?」
ご主人様?
その言葉と同時にぬるん、と舌が耳を犯し、その音に力なく悶える。
完全に力の抜けた体を彼の上体に預けて喘ぐ。ああどうしようもないくらい気持ちいい。
ぐりっと腹の底が抉られて、叫ぶように喘ぎながら弱弱しく反り返る。意図せず彼の肩に後頭部を預けるような姿勢になる。これではまるで、私が誘っているみたいだ。
「千尋、もう一回。ね?次に私が果てたら、今度こそ終わりにするから・・・。
そうしたら、お風呂に入れて、ちゃんとお布団に寝かせて、起きたらご飯を食べさせてあげるね?そのあと屋敷をお散歩しようよ」
「はっあっひゃふっんっ、あっあんっ」
「千尋、もうなんでそんなにかわいいの。舌を出して、舐めたい」
「あっ、んっふ、ふんんっんむぅ・・・んっ・・・ふっ・・・・っっ!!?んぅうううううううっ!!」
緩やかな刺激にまどろむように抱かれていたというのに、突如として陰核を摘ままれ、さらには小刻みに擦られて、体が強張った。
蛇の体に覆われてしまったその下でいったい何が行われているのか黙視することはできないけれど、そこは確実に責めさいなまれていた。
ずん、と重たい衝撃が子宮を震わせる。泣きたくなる。
あ、あっきもちいぃ。ずんってされるのきもちいぃいっ!
ちゅぱっと音を立てて唇が離れると、私はすでに理性を切り離した思考で、頭上に腕を伸ばし、彼の顔が離れて行ってしまうのを阻止した。
「あっ!あっ!あああっ!も、っと、あんっ、んはっあっもっとぉ、ずんって、あっずんってしてぇっ」
「はぁっ千尋素敵。やらしいんだから。いいの?壁をとげとげでたくさん擦られちゃうんだよ?」
「あああああっ!!やあっやああっ!擦ってっあっ擦って!」
まだ一度も彼に激しく突きまわされたことなんてない。蛇の交尾にはそういう動作は必要がないのだ。でもだけど、やっぱり子宮に衝撃が走るのはすごく気持ちがよくて、その振動のような衝撃に脳みそを揺さぶられたい。
ずりっ
ゆっくり、ゆっくり、私の内側の襞をすべて伸ばすかのように、わざとらしいほどゆっくりと、彼が私の中から出ていく。
悶絶した。
「あーーーーーっ!!!あっあっ!ぅああああああああああああああああああっ!!」
絡みつくニシキさんの体で逃げを打つことなどできない。彼の望む角度で彼の思うがまま、中を蹂躙される以外になかった。
「んはっんっ・・・・ふふふっ入るよ千尋」
途中まで引き抜かれたそれが、また中に戻ってくる。ぷつん、ぷつん、ととげとげを飲み込んでいく。ニシキさんの動きはあくまでゆっくりとしたもので、決して激しくはないはずなのに、前後不覚に陥るほどの快楽に叫ぶことしかできない。
「ひゃぃいっんひっんぁああああっ!!あっあぅ!あっあっぁっ」
子宮に先端が近づいていく感覚に興奮して、呼吸が荒くなって、つられて喘ぎ声の感覚も短くなる。
突いて、子宮を。その切っ先で。
ずんっと、子宮に衝撃が走って、頭の中に星が散った。一瞬叫び声すらあげられない。硬直した体から、ゆっくりとニシキさんが抜け出ていって、またゆっくりと沈み、子宮を小突く。
「子宮ぶたれて気持ちよくなってるの?千尋」
「ぶたれっ、あっひ、あ゛っあーーーーっ!あーーーーーっ!」
「んっ・・・はっ、もう、千尋があんまり、んっやらしいから、はあっ私もすぐ果ててしまう。っんは」
「あっ!?あっ!あっ!あっ!」
小刻みにいつもよりも長いストロークで突かれるとたまらない。信じられないくらいに気持ちいい。
「はあ、千尋。私の千尋」
きっと私は、この化け物のことを好きになってしまうに違いない。だってこんなに、私のことばかり考えている視線を向けられたことなんてこれまで一度としてない。こんなに甘やかされたことだってない。
ううん、もう好きかもしれない。だって白蛇さんなんだ。ずっと私のつまんない話を聞いてくれた白蛇さん。
安心する。
ずっと昔からポッカリと胸に空いていた穴が、埋められていく。
「んっ今度、ヒト型でもイイコト、はっ、しようね?」
「んあっ!あうっあうっニシキ、さんっ」
どうせ戻れないなら、ここで精いっぱい生きたい。誰かに必要とされるのはこんなにも、こんなにも満たされることなんだ。
「ニシキさんっ」
「んっふふふっ千尋。千尋。ここにいいるよ」
口付ける。交わる。
抱き竦めて、閉じ込められて、甘やかされて、それに抗うような強い意志も、理由も、私は持っていない。
「んっ、はあっ、ほら千尋、ちゃんと咥えて」
「ぅ、あ゛っ、あ゛、」
背後からのぞき込むように私を見つめ、甘く妖しく微笑みながら、当たり前のように子宮口から更に奥に入り込まれ、獣のようにうめく。
私より余程色っぽく喘ぎながら、私を逃がさないように雁字搦めにして、縋るように背後から腕もぎゅうっと絡めて抱き締めてくる様を、揺さぶられる脳みそに焼き付ける。
ああ、うん、なんか。やっぱり、好きかもしれない。
「あっ、あっ、ちひ、ろっ千尋っ」
「んんっあ!あーーーっ!!!あっ!、あ、あっはっ・・・あっ」
我ながらチョロすぎやしないかと不安になりつつ、吐き出された熱に体を震わせた。
朦朧としながら、ぼやっと逆さまのニシキさんを眺めていると、荒れた呼吸もそのままに口付けてくる。
「はぁ、お風呂、連れていくけど、ちょっと、はぁっ、待ってね」
「ん」
「ん。ふふふっ千尋ー」
無邪気な笑顔で頬ずりをしてくるニシキさんを抱き返したかったのだけど、どうしても腕がだるすぎて持ち上げられなくて、仕方が無いから頬ずりを返す。
まあいいか。私はどうしようもなく、白蛇さんに誑かされてしまったらしい。
「おはよう、千尋」
「んむ・・・・おはよ、」
ぼやっとした頭で下腹部の熱を確認する。まだつながってる。いったいいつまでつながってるんだろう。
「喉乾いた?お水いる?」
「ん。」
彼は大変甲斐甲斐しく私の世話をする。喉の渇きも空腹も体の浄化も全部彼が用意して、彼が世話をしてしまう。彼が喉を一撫ですれば、喘ぎすぎてガラガラになってしまった声が元に戻ったし、瞼を撫でられれば、限界点を優に超える快楽の連続に泣きじゃくって腫れた瞼も元に戻った。
排泄?お願い聞かないで。
私が頷くのを確認すると、ニシキさんはにっこり笑って「はい」と答えた。体を支えるものが、彼の腕からしっぽに入れ替わり、彼の体がすいっと離れていく。ひょこんひょこんと動く尻尾の先端が目に入った。なんともちょうどいい位置にあるそれを、特に考えもなしに咥えてみた。
ちょっと遠くで「ひゃあっ!」と女の子みたいな悲鳴が上がる。咥えた尻尾がびくびくと動いて、私の中で彼が痙攣した。それに呻きながらも、妙な満足感ににんまりと笑う。ふふんっここにきてようやっとニシキさんの弱点を発見した。強すぎないように気を付けながら、かしかしと噛みしだいてみる。むぎゅっと私を支えている蛇の体に力が入る。やっぱり弱点なんだ。ふふんっ。口の端からよだれが垂れるのも気にせずに、舌を這わせる。
散々苛められたんだもの。多少仕返しくら―――
ずんっ、締め付けのきつくなった尻尾が私の体を固定して、脚の間の胴体が蠢き、子宮に殴られたような衝撃が走って、私は一瞬で思考を吹き飛ばされる。
「んひぃいいいいっ」
体が反り返ったせいで、口からしっぽが抜けてしまったけれどそんなことに気をやっている余裕はない。私の子宮をぶった凶悪なそいつは、その切っ先でわたしの奥のさらに奥にある入口を厭味ったらしくなぞっているのだ。どう嬲ってやろうか、とでもいうように。
「あぅっあっあっあっ」
「もう、悪戯しちゃダメでしょ。お水こぼしちゃったじゃないか」
「ごめ、なさっはっ、あっやあっ入れないでっ」
戻ってきたニシキさんは尻尾から腕へ私を抱えなおすと、にっこりと一つ笑って、腰を掴みそのままぐりぐりと彼の腰へと押し付ける。私の哀願もむなしくそれはずりゅんっと我が物顔で私の子宮へと入り込んだ。
「きゃひぃっ!!ひぃいいんっあっ!あんっ!」
「ちょうどいい、そのまま口を開けててね」
そういって、彼は木の器を煽ると、喘ぐ私に口づける。口移しで少し甘く感じるような水道水ではありえない優しい味の水がゆっくりと流し込まれる。喉を鳴らしてそれを飲み下す。おいしい。苦しい。おいしい。
飲み下し、唇が離れると、私はどうしようもなく悔しくて、少しは彼の鼻を明かしてやりたくて、息も絶え絶えに言ってやった。
「ニシキ、さ、ん。あっ、あんっ、はっ・・・・ひゃんって言った」
「五月蝿いな。びっくりしたんだ」
「んっんっ、はぁっ、あっ、弱点、みーつけた」
ニシキさんの口調を真似てそう言うと、少しばかり頬を上気させてそっぽを向いていしまった。初心な反応しちゃって、かわいー。
にまにまとするのを隠しもせずに見ていれば、じとり、と大変蛇らしい視線を向けられる。それから貴公子みたいにいい笑顔を浮かべた。
あ・・・・これいけないやつ。
「ご、ごめん」
「千尋はたくさん弱点あるよね?」
「やっ・・・ん。あの、」
「まずは乳首でしょ?」
「あうっ」
「クリトリスもすーっごく気持ちよさそうにするね?」
「ひんっひゃぁああっ!」
「おしっこの穴も好きだよねぇ?」
「ちがっひゃめっひゃ、あ、あ、あ、あ゛ーーーっ!」
「耳のなかもいっぱい舐めてあげる」
「!!っっひっ・・・・あっ・・・・」
乳首を摘ままれ、陰核をさっき弄んだ尻尾の先に転がされ、尿道には小指をめり込ませられ、わざとらしく音を立てながら耳の中をなめられる。
突っ込まれたままの中が久しぶりに激しく収縮し、愛液を噴き上げながら果てる。だけど彼の責苦は止まらなくて、それらの刺激はそのままに、ざわっと棘が内壁を擦りあげ、私の弱いところを抉った。
「あっ、あーーーっ!!ああああああああああっ!!やぁあああああああああっ」
真上を向いて、快楽に飲まれ悲鳴を上げる。のけぞる私を胸に抱いたまま少し伸びあがって私を見下ろすニシキさんは、荒い呼吸で、今にも涎を垂らしそうな、恍惚とした表情で私に熱い視線をぶつけてくる。
そんな目で見ないでよ。そうじゃなくてもおかしくなってるのに、ますますおかしくなってしまう。
「んは、はっ、・・・くっ。千尋っ・・・っ千尋」
いろんな言葉を、思いを全部閉じ込めたみたいに私の名前を呼ぶ。そんなに好き?と聞いてしまいたくなるほど、ダダ漏れの好意がそこにはあって、私はそれにひどく安心してしまう。
こんなにも、誰かから必要とされたことがあっただろうか。
強すぎる快楽に悲鳴を止められなくて、でも彼の名を呼びたくて、歯を食いしばろうとすると、口の中に指を突っ込まれてしまった。
仕方がないので、すがるように彼の首に腕を回して抱き着いた。ちょっとでもくっつけばいいと思った。ニシキさんの冷たい肌はすごく気持ちがいい。
散々好きにしてきたくせにためらうように抱かれた肩が、次の瞬間には軋みそうなほど強く抱きすくめられる。
「あ、あ、も、千尋っあっ!出る、イって、イって千尋っ」
「ひんっイってるっあ゛!イってるのぉっ!あっあっまたっまたぁあ!んやぁあああああああああああああああっ!!!」
もう何度そこに吐き出されたかしれないけれど、毎回焦げてしまうんじゃないかというほどにそれは熱い。
ニシキさんの荒く長い呼吸音と、まだ痙攣の収まらない私のだらしない喘ぎ声ばかりが聞こえる。しばらくそのままだったけれど、やがて強く抱きすくめていた腕が多少ゆるむ。まだ小さくあえぐ私の額に、ちゅうっとキスを落としてくれた。
優しく喉を撫でられるとガラガラとした不快感が消える。便利な手をお持ちで羨ましい。
「ん・・・・ありがと」
「ふふっ。どういたしまして」
やわらかく笑ったニシキさんは木偶人形か何かのようにまるで動けない私を尻尾に持ち替えると(尻尾の先端は背中側に回されてしまった。警戒しているらしい)、器用に胴体をくねらせて私を中心にとぐろを巻いた。
そうしてそっとというよりはもはや恐る恐ると表現したほうがよさそうな優しい尻尾使いで、私をその段々に重ねた鱗を纏う彼の体にもたせ掛ける。
うん。悪くない。鱗気持ちいい。
彼は少しばかり私を見下ろすくらいの位置で、自分の蛇の胴体の上にうつ伏せに寝そべると、ふう、と息を吐いた。くすぐるように冷たい指先が頬をなでてくる。
完全リラックスモードだけれど、まだ私は体を貫かれたままなわけなのだが気づいているだろうかこの男。もう本当に、指一本動かせないどころか痙攣すらできない状態でぐったりと彼のとぐろを巻いた胴体に寄りかかっている私を見て多少は哀れと思ってくれないだろうか。
2回、自分で認識した眠りに落ちた。寝起きの気分の良さからして恐らく熟睡していたに違いない。意識を強制終了させられた数はちょっともう数えてない。
何度か口移しで果物をもらった。ものすごく芳醇な桃だった。
何が言いたいのかといえば、その間ずぅうっとこの人外のブツは私に入りっぱなしと言う話だ。蛇怖い。
排泄?もう聞かないで。
「千尋かわいい」
もう口癖のように彼は私にそういう。これは爬虫類的ピロートークということなのだろうか。最中だけどね。まだ中に入ってるからね。事後じゃないんだけどねっ!
しかも甘ったるい声でべたべたとあまえてくるのは、私じゃなくてニシキさんだ。普通性別逆じゃない?なんで女の私がスーパー賢者タイムに入らなきゃならないんだ。もう何でもいいよ。好きにして。・・・実際好きにされているのだけれども。
「千尋、蛇のこと全然知らないんだね」
「知らないよ」
「蛇の交尾は長いんだよ?」
「うんもう身に染みて知ってる。現在進行形で学習中。でももう本当に勘弁して」
「えーー?私はまだ千尋と繋がってたいなぁ」
もうちょっとだけ、ね?と言って、気だるげに寝そべったままゆるっと笑った。滴ってる。色気が滴っちゃってるよニシキさん。
ぽーっとぼやけた頭で、平日のど真ん中だったんだけどなーと、場違いなことを考えていた。とりあえず、二日は経ってしまっているんじゃないだろうか。会社、無断欠勤なんて今まで一度もしたことないのに。
その思考が、ひどく現実逃避したものであることなんてわかっていた。
ここは、私の部屋ではない。
薄暗いのと彼の体がうねうねしていて視界が開けることがないので部屋の全貌は確かめていないけれど、明らかに私の部屋より広いし、何よりうちの床は畳ではない。天井だって板張りで更には幾何学模様の彫刻まで施された、どこの博物館だよ、みたいな仕様ではない。
いつここに来たのか、正直私はわからない。でも多分、それは重要なことではない。そこではない。もうきっと、私は戻れないということだ。
会社は迷惑だろうな。勤続年数長かったのにな。クビだよな。友だちには心配かけるだろうな。きっとあちこち探してくれると思う。でも私は見つからない。誰もここには迎えに来ないだろう。実家はまあいいや。これで念願のこの血筋を絶やすことができて、そこに関しては万々歳だ。
ああでも。
でもそうだな。きっと私がいなくたって会社は回るし、友だちだってそのうち私を諦める。元カレはきっと私が居なくなったことを知る術すらない。実家なんかは失踪届けを出すかすら怪しい。そのうち誰も、私がいたことも忘れてしまうんだろうな。
何を言っているんだろう。当たり前だ。たった一人に支えられている社会的集団なんて、未来に崩壊が見えてる。一昔前ならともかく、今のこの国に一体どれほどのいなくてはならないたった一人がいると言うんだ。
違う。そうじゃない。私がいいたいのはもっと、そう、精神的な。そうだ。
私が居なくなったら悲しすぎて死んでしまう人が居たらいいのに。
・・・なんて。センチメンタルな精神で思考が走り、なんとも救い難い結論を結ぶ。
馬鹿馬鹿しい。元カレの笑顔が浮かんで消えた。
彼はもちろんそんな男ではなかった。それにそんな人がもしいたならば、私は鬱陶しく感じていたに違いないし、そんな精神の弱い人間を支える甲斐性もない。それにきっと、ニシキさんに「赦す」なんてことは言わなかったに違いない。そんなに脆い存在を残して、快楽に溺れられる訳もない気がする。
そう、別に帰れないことについては、割と割り切っていた。私が「赦す」と言ったんだ。ダメだと分かっていたのに。
彼を受け入れる道を選んだのは、ほかならぬ私自身だ。
「私、もう戻れないんだよね?」
質問の割に、私の声音は驚くほどに軽かった。同じ調子で「明日は雨かしら?」と問えそうなくらいには。それに対するニシキさんの答えも、比例するように軽いものだった。
「うん。もう戻れないし、戻す気もない」
「そう・・・。まあいいんだそれは」
ニシキさんはおかしそうにくすくすっと笑って、いいの?と問う。何を言っているのか。戻さないって言ったじゃないか今。投げやりに頷いて返す。
「ねえ千尋。何をそんなにさみしそうな顔をしているの?」
「うーん、自分でもよくわかんないような、とりとめもないことを」
するっと尻尾が巻き付いて、私をわずかばかり抱き上げる。抱き上げても彼の腰も一緒についてくるのでブツは抜けてくれない。
そうして彼の腕が背後から私を抱き支え、ゆるゆると腰から下へと尻尾が這っていき、巻き付き、のたくるように複雑に、私の下半身は白い蛇の体に絡まり、覆われた。
なんだ?と思って見上げてみると、猫のように頬擦りをしてきた。なんだなんだ。
「千尋は、もう逃げられないんだよ。私と一緒にいるんだ。もしあなたが死んでしまったら私も死ぬから、私が死ぬときに殺させて」
どきっとした。
だってそれは、さっき私が考えた馬鹿げた考えにさらに輪をかけたようなものだ。見透かされたような気がして、心臓がざわついた。
「まあ」
そんな日は永遠に来ないだろうけれどね?
ニシキさんはそう嘯いて、鎖骨から耳の後ろまでをつつっと舐めあげてきた。この化け物はいったい何を言っているのか。永遠などというのはまったくもって世迷言もいいところだ。
「いやいや、ニシキさん。ご存じないのかもしれないけど、人間には寿命というものがあってね」
「ふふふっ知ってるよ?でも大丈夫。千尋はなーんにも気にしないで?」
え、なに。どういうこと。気になりますけど。
おそらく私の表情が引き攣っていたのだろう。くすくす笑いながら頬を摘まんで無理やり笑顔を作らされた。不細工な顔をしているに違いない。
「むぐっ」
「私に寿命がないのに、千尋に寿命があるなんておかしいもの。千尋はただ、私と一緒に過ごしてくれたらいいよ。そのうち日付を数えるのを忘れるさ。うちは庭も屋敷もそれなりに広いから、そう簡単には飽きないと思うし、ほしいものがあれば用意するよ、私に用意できるものならだけど。
私は千尋の話をたくさん聞きたいし、私の話もたくさん聞いてほしい。
ねえ私は、あなたの独り言をたくさん聞いたけれど、でもね千尋。私はあなたともっとちゃんとおしゃべりがしたいんだ」
独り言、という言葉を聞いて、私はニシキさんを買った日のことを思い出していた。
当時私は就職したての、上京したて。まんまお上りさんだった。寮住まいではあったけれど、初めての一人暮らしと都会の様子に、ちょっとばかりわくわくして、おっかなびっくり週末のたび、地元の街を探検した。
実際、私が住んでいるのは「市」だったし、しかも都に隣接した「県」だったけれど、ド田舎から引っ越してきた私にとって、そこは間違いなく都会だった。
そんな探検の中でレトロな小物やさんを見つけた。
古物商も営んでいるらしく、新品の髪留めと香炉が一緒に並んでいるような、薄暗い穴倉みたいな、だけど不潔感のない、ごちゃごちゃと置かれた商品すらも魅力的な、計算して置かれているような、好奇心をそそる店のたたずまいだった。
私はその場所がとても気に入って、大して買い物もしない癖によくお邪魔した。
その店に若い女性客というのは珍しかったらしく、何度か通うと顔を覚えてもらえて、好々爺然とした店主の垈(ぬた)さんとは、苗字を呼び合って、世間話をする程度には仲良くなった。
その日、私は買ったばかりのマフラーをしていたことを覚えているから、きっとあの日は冬だったに違いない。来店早々、垈さんが「かわいい子が来たよ」と言って店の棚の一つを指さした。そこに白蛇さんがいたのだ。
白い瀬戸物でできたそれは、不思議な艶感があった。カラーリングもされていないから白一色なのに、その目がきらりと光ったように思えた。あの時私は、確かに白蛇さんと目が合ったと感じた。そっと間違っても落としたりしないように両手で持ち上げてみて、矯めつ眇めつ眺めて、蛇にも瀬戸物にもまるで興味がなかったのに、どうしてもその白蛇さん(私の中で、彼は最初から白蛇さんだった)がほしくてたまらなくて、いやでもお高いんでしょう?と思いながらひっくり返してみると、意外なほどの安価だった。もちろん即決して購入して、持ち帰った。
白蛇だから、鳥居があったほうが恰好がつくかもしれない、とさらに百均に寄って初代鳥居を購入したことも覚えている。今更だけれど、ちゃちな鳥居だった。というか鳥居の置物が売っていたことに驚きだ。あれ需要あるのかな。
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私こうやって考えてみると、ニシキさんに一目惚れしてるな。
「千尋?」
「いや。一目惚れだったなと思って」
「ああ、私をあのお店で見つけた時?ふふっ嬉しい」
奇麗に笑う。
胸焼けしそうな視線が私を射る。そんな目で見られるのには慣れない。胸の中が煮えてしまいそうだ。
そういえば・・・。
「赦す、ってなんだったの?」
ニシキさんはぎゅっと私を抱く腕に力を込めると、背後から私の耳の軟骨を甘噛みした。
「千尋は私のご主人様だからね」
「ごしゅじんさま?」
どこがだ。
その一言に尽きるのではないだろうか。散々な目にあったんですけど。お仕置きとかされたんですけど。誰がご主人様だ。むしろ逆だろう。
っていうかいつご主人様になったの?
「そう、ご主人様。だからね。別に無理やりできないわけではないんだけど、そんな下剋上みたいなことをしてしまうと、千尋の心が壊れてしまうかもしれないからね。そんなのは嫌だから、私が千尋を抱くことを『赦して』もらったんだ。でも千尋ったら、『全部赦す』なんて言ってくれるんだもの。ねえ?」
ご主人様?
その言葉と同時にぬるん、と舌が耳を犯し、その音に力なく悶える。
完全に力の抜けた体を彼の上体に預けて喘ぐ。ああどうしようもないくらい気持ちいい。
ぐりっと腹の底が抉られて、叫ぶように喘ぎながら弱弱しく反り返る。意図せず彼の肩に後頭部を預けるような姿勢になる。これではまるで、私が誘っているみたいだ。
「千尋、もう一回。ね?次に私が果てたら、今度こそ終わりにするから・・・。
そうしたら、お風呂に入れて、ちゃんとお布団に寝かせて、起きたらご飯を食べさせてあげるね?そのあと屋敷をお散歩しようよ」
「はっあっひゃふっんっ、あっあんっ」
「千尋、もうなんでそんなにかわいいの。舌を出して、舐めたい」
「あっ、んっふ、ふんんっんむぅ・・・んっ・・・ふっ・・・・っっ!!?んぅうううううううっ!!」
緩やかな刺激にまどろむように抱かれていたというのに、突如として陰核を摘ままれ、さらには小刻みに擦られて、体が強張った。
蛇の体に覆われてしまったその下でいったい何が行われているのか黙視することはできないけれど、そこは確実に責めさいなまれていた。
ずん、と重たい衝撃が子宮を震わせる。泣きたくなる。
あ、あっきもちいぃ。ずんってされるのきもちいぃいっ!
ちゅぱっと音を立てて唇が離れると、私はすでに理性を切り離した思考で、頭上に腕を伸ばし、彼の顔が離れて行ってしまうのを阻止した。
「あっ!あっ!あああっ!も、っと、あんっ、んはっあっもっとぉ、ずんって、あっずんってしてぇっ」
「はぁっ千尋素敵。やらしいんだから。いいの?壁をとげとげでたくさん擦られちゃうんだよ?」
「あああああっ!!やあっやああっ!擦ってっあっ擦って!」
まだ一度も彼に激しく突きまわされたことなんてない。蛇の交尾にはそういう動作は必要がないのだ。でもだけど、やっぱり子宮に衝撃が走るのはすごく気持ちがよくて、その振動のような衝撃に脳みそを揺さぶられたい。
ずりっ
ゆっくり、ゆっくり、私の内側の襞をすべて伸ばすかのように、わざとらしいほどゆっくりと、彼が私の中から出ていく。
悶絶した。
「あーーーーーっ!!!あっあっ!ぅああああああああああああああああああっ!!」
絡みつくニシキさんの体で逃げを打つことなどできない。彼の望む角度で彼の思うがまま、中を蹂躙される以外になかった。
「んはっんっ・・・・ふふふっ入るよ千尋」
途中まで引き抜かれたそれが、また中に戻ってくる。ぷつん、ぷつん、ととげとげを飲み込んでいく。ニシキさんの動きはあくまでゆっくりとしたもので、決して激しくはないはずなのに、前後不覚に陥るほどの快楽に叫ぶことしかできない。
「ひゃぃいっんひっんぁああああっ!!あっあぅ!あっあっぁっ」
子宮に先端が近づいていく感覚に興奮して、呼吸が荒くなって、つられて喘ぎ声の感覚も短くなる。
突いて、子宮を。その切っ先で。
ずんっと、子宮に衝撃が走って、頭の中に星が散った。一瞬叫び声すらあげられない。硬直した体から、ゆっくりとニシキさんが抜け出ていって、またゆっくりと沈み、子宮を小突く。
「子宮ぶたれて気持ちよくなってるの?千尋」
「ぶたれっ、あっひ、あ゛っあーーーーっ!あーーーーーっ!」
「んっ・・・はっ、もう、千尋があんまり、んっやらしいから、はあっ私もすぐ果ててしまう。っんは」
「あっ!?あっ!あっ!あっ!」
小刻みにいつもよりも長いストロークで突かれるとたまらない。信じられないくらいに気持ちいい。
「はあ、千尋。私の千尋」
きっと私は、この化け物のことを好きになってしまうに違いない。だってこんなに、私のことばかり考えている視線を向けられたことなんてこれまで一度としてない。こんなに甘やかされたことだってない。
ううん、もう好きかもしれない。だって白蛇さんなんだ。ずっと私のつまんない話を聞いてくれた白蛇さん。
安心する。
ずっと昔からポッカリと胸に空いていた穴が、埋められていく。
「んっ今度、ヒト型でもイイコト、はっ、しようね?」
「んあっ!あうっあうっニシキ、さんっ」
どうせ戻れないなら、ここで精いっぱい生きたい。誰かに必要とされるのはこんなにも、こんなにも満たされることなんだ。
「ニシキさんっ」
「んっふふふっ千尋。千尋。ここにいいるよ」
口付ける。交わる。
抱き竦めて、閉じ込められて、甘やかされて、それに抗うような強い意志も、理由も、私は持っていない。
「んっ、はあっ、ほら千尋、ちゃんと咥えて」
「ぅ、あ゛っ、あ゛、」
背後からのぞき込むように私を見つめ、甘く妖しく微笑みながら、当たり前のように子宮口から更に奥に入り込まれ、獣のようにうめく。
私より余程色っぽく喘ぎながら、私を逃がさないように雁字搦めにして、縋るように背後から腕もぎゅうっと絡めて抱き締めてくる様を、揺さぶられる脳みそに焼き付ける。
ああ、うん、なんか。やっぱり、好きかもしれない。
「あっ、あっ、ちひ、ろっ千尋っ」
「んんっあ!あーーーっ!!!あっ!、あ、あっはっ・・・あっ」
我ながらチョロすぎやしないかと不安になりつつ、吐き出された熱に体を震わせた。
朦朧としながら、ぼやっと逆さまのニシキさんを眺めていると、荒れた呼吸もそのままに口付けてくる。
「はぁ、お風呂、連れていくけど、ちょっと、はぁっ、待ってね」
「ん」
「ん。ふふふっ千尋ー」
無邪気な笑顔で頬ずりをしてくるニシキさんを抱き返したかったのだけど、どうしても腕がだるすぎて持ち上げられなくて、仕方が無いから頬ずりを返す。
まあいいか。私はどうしようもなく、白蛇さんに誑かされてしまったらしい。
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