ひかりん

アリス

文字の大きさ
4 / 7
第1章

4 親友

しおりを挟む
わたしは毎年、その日は、なにも食べず、なにも飲まずに、四方向に扉があるだけの「白の間」で、膝を折り、両手を組み合わせ、目を閉じて俯きながら祈った。
けど、数日前からひいていた風邪のせいか、わたしは倒れてしまった。
「白の間」にメイド達は入ってこれないのに。

「ひかりん! ひかりんっ」
倒れているわたしを見つけてくれたのはムー。昨日、話せなかったから会いにきたのだろう。

「ひかりん」
「……はい」
ムーは、わたしをじっと見つめた。
わたしは、それが少し怖かった。

「ひかりんに、あたしは見えているのです……?」

どういう意味か、わからなかった。
なのに、目をそらしてしまった。
「ひかりんは、どうして、ずっと泣いているのです……?」

言われて、自分の頬を撫でた。
でも、泣いてなかった。

「わたし、泣いてなんて……」

ムーは首を振ると、わたしに近づき、ポンポンッて、頭を撫でてきた。
そしたら、涙があふれだした。

「ひかりんは、いつも笑顔で、いっぱい元気に笑うから、苦しくても気づかれにくいのです。こういう時だけでもいいから、友達のムーを頼って欲しいです! ……も、もちろん普段も言ってほしいけど、言うのが苦しい猫もいるです」

照れながら言うムーに、少し気が抜けて、それは、いいリラックスになったと思う。
「……わたし」
「なに……?」
「……お母さまに嫌われたくないの」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...