居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

清澄 セイ

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第一章

唐揚げのお弁当と、元上司④

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部長以外誰にも、辞めることは伝えていない。昨日と今日と必死に仕事を処理して、自分の受け持っている分は残さないようにした。

ーーまだ会社にしがみついてるの?

今日三ノ宮さんにそう言われて思わず言い返しそうになったけど、それも違うかなと思って何も言わなかった。

言い返したって、どうせ無駄だ。私は結局、彼女に負けてしまった。

悔しいから絶対辞めないって思ってたのに。

「ありがとうございました」

目の前にそびえ立つ会社のビルを見上げながら、誰にも聞こえない声で呟く。

それから、丁寧にお辞儀をした。

明日からどうしよう。

有給消化が終了したその後。貯金なんかあっという間になくなってしまうだろうし、なるべく減らしたくない。頼れる身内もいない私は、すぐにでも仕事を探さないと路頭に迷ってしまいそうだ。

「山田さん?」

とりあえず家に帰ってから考えようと向きを変えた時、不意に声をかけられた。

「何で会社に向かってお辞儀してるの?」

「おっ、大澤係長」

驚いたように若干目を開いて私のことを見てるのは、大澤係長だった。

私のいる…いや、いた庶務とは違う部署の係長。難関といわれる不動産鑑定士の国家資格を持っている、とんでもなく優秀な人だ。

まだ二十代なのに係長職で、かなり将来有望だ誰かが言ってた、ような気がする。

あんまり関わったことはないけど、何度か事務的な会話はしたことがあった。

結構怖いイメージというか、いかにも仕事ができそうな人という感じ。

背が高くてすらりとしていて、顔立ちも整っている彼は、私とは住む世界が違う。

私の名前知っててくれたことに驚いたくらい、遠い存在の人だ。

「…」

「何?」

きっと変な顔してたんだろう。大澤係長が訝しげな声を出しながらこちらを見ていた。
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