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第二章「ムクチな同級生」
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それからも全力で二人と遊んで、いつのまにか宿題が終わったらしい小学二年生のギンガ君も加わって、家の中はまぁドタバタ騒ぎ。
甘崎君一家は二週間程前に越してきたらしいくなど、こんなににぎやかなのによく気付かなかったな私…
やっぱり、ずっとイヤホンしてるのよくないかなぁ。
「あー楽しかった!ツバサちゃん悪者役上手だね!」
「もっと遊ぼう、ツバサ!」
またまた両脇から私をひっぱるツインズ二人の頭を、甘崎君が順番に軽くポカッと叩いた。
「お前らその辺にしとけ。夕飯できたぞ」
甘崎君、今度はしゃもじ持ってる…
「真白にぃちゃん、今日のご飯なに?」
「炊き込みご飯と豚汁」
「やったぁ炊き込みだ!」
炊き込みご飯作れる中一男子なんて存在するんだ。私なんて、普通にご飯炊くのでさえ時間かかるのに。
「私、そろそろ帰るね」
遊んでいたおもちゃをカゴに入れると、私は立ち上がる。すぐさまツインズ達がうるうるした瞳でこっちを見つめてきた。
「ツバサちゃん、一緒に食べようよぉ」
「ツバサ、もっといてよ!」
なんて可愛いの…今日会ったばっかりの私にこんなに懐いてくれるなんて。
「こら、お前らあんま無理言うな。白石のウチだってそろそろ夕飯だろ?家族が心配する」
「あっ、いやウチは帰っても誰もいないから」
そう言った後、ハッとする。
これじゃあまるで引き止めて欲しいみたいじゃないか。
「へ、変なこと言っちゃってごめんね!私、帰るから。お邪魔しました」
「…もし」
甘崎君が、さりげなく通路に立つ。サラサラの黒髪が目にかかって、表情があんまり分からない。
「嫌じゃないなら、食べてって」
「えっ、で、でも…」
「今日こいつらの相手してもらったお礼。になるかどうかは微妙だけど」
なる、十分なります。だって今も、こんないい匂いしてるんだもん。いや、そもそもお礼とか要らないんだけどね?
「ツーバーサー!」
「ツバサちゃーん!」
ミドリ君とアオ君のお願いポーズとこの美味しそうな匂いに、私はまんまとやられてしまった。
こくんと頷くと、二人は飛び上がって喜んでくれて。家にいることをこんなに喜んでもらえるなんて、何だか変な感じ。
凄く、心があったかくなる。
「じゃあ、白石の分も準備する」
「あっ、私も手伝うよ」
「ありがと」
甘崎君はしゃもじを持ったまま短くそれだけ言うと、くるりと向きを変えてまたキッチンに立つ。
私も慌てて、その背中を追いかけたのだった。
甘崎君一家は二週間程前に越してきたらしいくなど、こんなににぎやかなのによく気付かなかったな私…
やっぱり、ずっとイヤホンしてるのよくないかなぁ。
「あー楽しかった!ツバサちゃん悪者役上手だね!」
「もっと遊ぼう、ツバサ!」
またまた両脇から私をひっぱるツインズ二人の頭を、甘崎君が順番に軽くポカッと叩いた。
「お前らその辺にしとけ。夕飯できたぞ」
甘崎君、今度はしゃもじ持ってる…
「真白にぃちゃん、今日のご飯なに?」
「炊き込みご飯と豚汁」
「やったぁ炊き込みだ!」
炊き込みご飯作れる中一男子なんて存在するんだ。私なんて、普通にご飯炊くのでさえ時間かかるのに。
「私、そろそろ帰るね」
遊んでいたおもちゃをカゴに入れると、私は立ち上がる。すぐさまツインズ達がうるうるした瞳でこっちを見つめてきた。
「ツバサちゃん、一緒に食べようよぉ」
「ツバサ、もっといてよ!」
なんて可愛いの…今日会ったばっかりの私にこんなに懐いてくれるなんて。
「こら、お前らあんま無理言うな。白石のウチだってそろそろ夕飯だろ?家族が心配する」
「あっ、いやウチは帰っても誰もいないから」
そう言った後、ハッとする。
これじゃあまるで引き止めて欲しいみたいじゃないか。
「へ、変なこと言っちゃってごめんね!私、帰るから。お邪魔しました」
「…もし」
甘崎君が、さりげなく通路に立つ。サラサラの黒髪が目にかかって、表情があんまり分からない。
「嫌じゃないなら、食べてって」
「えっ、で、でも…」
「今日こいつらの相手してもらったお礼。になるかどうかは微妙だけど」
なる、十分なります。だって今も、こんないい匂いしてるんだもん。いや、そもそもお礼とか要らないんだけどね?
「ツーバーサー!」
「ツバサちゃーん!」
ミドリ君とアオ君のお願いポーズとこの美味しそうな匂いに、私はまんまとやられてしまった。
こくんと頷くと、二人は飛び上がって喜んでくれて。家にいることをこんなに喜んでもらえるなんて、何だか変な感じ。
凄く、心があったかくなる。
「じゃあ、白石の分も準備する」
「あっ、私も手伝うよ」
「ありがと」
甘崎君はしゃもじを持ったまま短くそれだけ言うと、くるりと向きを変えてまたキッチンに立つ。
私も慌てて、その背中を追いかけたのだった。
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