ふるさとの花

湯殿たもと

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ふるさとの花6 完結

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ふるさとの花 6

目が覚めると景色がおかしい。やたらと天井が青い。思い出した。ここは神社。いやそれはどうでもいい。百花を探さなければ。体の痛みを抱えたまま辺りを探して回った。いない。どこだ。休み時間に学校に入り聞いてみるがみんな今日は見ていないという。

よく考えたら誰かに連れ去られて飛んでいったのだ。飛んでいった?そんなわけ無いだろう。すぐさま方向転換。錆びかけた自転車に乗り山を下る。なつかしい高校のなつかしい先生にあいさつをすると肘折百花という生徒の事を訪ねる。いない。はじめから。入学していないということだ。うまくバスを捕まえ村に戻り、肘折家を訪ねる。おばあさんが出ると百花の事を訪ねる。思い出話をし始める。そうじゃない。居場所を聞く。不思議そうな顔をされて案内されたのは村の外れのお墓。拝んで帰ったおばあさん。今度は不思議な顔をしているのはこちらだろう。

気配を感じて振り向くとそこにいたのは黒い影に大きな翼。昨日のやつだ。いわゆる悪魔。

「百花をしらないか」

「どこにもいない。肘折百花はいない」

「・・・・・・」

「メッセージを預かっている」

「読んでくれ」

「竜ちゃんへ。言えなくてごめんなさい。竜ちゃんは知らなかったかもしれないけど私は五年前に死んでいました。そしてあの世で生前に犯した罪を償って、それがすべて済んだので生まれ変わることになりました。きっとどこかの星に赤ちゃんとして生まれてきます。生まれ変わると記憶はすべて消えます。閻魔さまに頼んで五日だけこちらに帰ってきました。

私は本当に小さいころから竜ちゃんが好きでした。ずっと一緒にいたかったです。

今の今まで私が死んだこと、そして八月二十四日を最後に二度と会えないことを黙っていてごめんなさい。喋ったら私の好きな普段の竜ちゃんが見れないと思ったからです。

最後に私のことをきれいさっぱり忘れてください。私のことで悲しまないように、邪魔されないようにすべて忘れてください。悪魔さんに記憶を消す薬を持っていってもらいました。本当は昨日の夜のうちに飲ませたかったのですけど出来ませんでした。

これが最後の私のお願いです。

さようなら

肘折百花」

悪魔はメッセージを読み上げるとその薬を見せた。吸い込まれそうなきれいな白だった。

「悪魔、時間はあるか?」

「時間は気にするな」

「一時間たったら飲ませてくれ。抵抗したとしても力ずくで飲ませてくれ」


僕がこんなに泣いたのはいつ以来だろう。小学生のときだろうか。いやもっと下だろうか。僕はいろいろなことをたくさん考えた。考えすぎて百花の事は半分くらいしか考えていなかったかもしれない。

「ひとついいか?百花が帰って来たのは5年前に死んでからこの五日だけなのか?」

「そうだ」

「今年の三月までは毎日のように会っていたんだが」

「・・・・・・なんだそりゃ。そんな筈無いぞ」

「・・・・・・」

僕が見てきた百花は、百花じゃない?この五年間の百花はいったい誰なんだよ。


時間が来た。




「ドーはドーナツのド」

「どーはドーナツのどー」

本当に帰って来たな、岩泉さんちの息子さんは、ほっほっほ。

おじいさんが授業の様子をのぞいて笑った。


おしまい。

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