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夏休み編
サンライズ その6 夏休み編
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サンライズ その6 夏休み編 その2
午後五時。気の遠くなるほど電車に乗り続けて、乗り換えの駅ではなく、途中の駅で九尾が席をたったときは本当に嬉しかった。すべて普通の電車、こんな苦行させられるとは。
「だってさ、最近の若者は、我慢が無いっていうじゃん?たまにはこんなのもありかなって」
新幹線のありがたみをよく解ったが、こんなのに付き合っていたらたまったもんじゃない。
「悠くんにやらせた時は、もっと楽しそうだったけどね」
「電車に乗って楽しそうにしてるのなんてマニアくらいだぞ?」
「乗ってきたお婆さんと世間話してたね」
「なるほど・・・・・・?」
あの人はどうやら、話すのが好きらしいな、しかし年の離れた人と世間話して楽しいのだから、どんな趣味をもっているのかが気になる。
降りたのは浜辺の町。道の先に穏やかな日本海が見える。こんなところに住んでみたいなぁ、と思いながら、九尾のあとをついていく。途中でバスをつかまえ、やって来たのは、さっきの浜辺の町から少し山に入った温泉街だった。郵便局前のバス停で降りると、九尾はとある家をさして
「ここに泊まるの」
と言う。どう見ても宿とかそういうのではない。少しだけ落胆したけど、とにかく疲れたからそこで休みたかった。
「こーんにーちはーー!!!」
「おじゃまします」
九尾はノリノリで挨拶をする。なんだこのテンション、全然疲れていないと言うのか。さすが妖怪。そして、家の中から出てきたのは、自分とちょうど同じくらいの年の女の子だった。
「よこちゃん久しぶり!大きくなったね、ところで吹浦ちゃんは?」
「用事で出掛けました。あと三十分で戻ってくるらしいです」
「そっか」
「そちらの方は」
「こっちは東海ひのでーっていうの」
「東海ひのでです。はじめまして」
「荒海よこです。はじめまして」
ほんの一言だけ挨拶して、それからは沈黙。荒海さんは表情が読み取れないから初対面だと何を考えているのかさっぱりわからない。どうしようかと考えていると、誰かが帰って来た。
「ただいまー」
「吹浦ちゃん久しぶり」
「九尾ちゃんもう着いてたんだ、久しぶり~」
九尾とめっちゃ仲がよさそうな感じの人が入ってきた。吹浦というらしい。下の名前は挨拶してもわからなかった。
夜ご飯は四人でお寿司の出前を取った。九尾と吹浦は異様にうまそうに食べている。俺はその勢いに押されあまり食べられていない。荒海さんはもともと少食なのかもしれないけど、あまり食べていない。無口、無表情が少食と結び付くわけではないのだけど、何故かそんな印象を持った。
「食べないの?ほら、あーん」
「しないよ」
「ノリが悪いねぇ、そういう男、モテないよ」
「そうそう」
九尾&吹浦はめっちゃ仲いいな、と思ったのはこういう会話での相槌の自然さだった。長年の付き合いがあるのだろう。しかもかなり離れた土地でなかなか会えないのだろうから、さらに凄い。
夜九時。だらだらと酒を飲み続けている九尾と吹浦は相変わらずだった。荒海さんはさすがに時間なのか一時間ほど前に帰っていったので、ひとり俺がシラフで残されている。
「ひのでくん、布団敷いてきて~」
「押し入れに入ってるよ~」
やはりここで寝ることになるらしい。別の部屋に適当に布団をしいて、その上でぐうたらする。今日は何もなかったが、明日から何かをさせられるのだろうか。わざわざ連れてきたのだからそうなのだろうけどいまだに知らされていない。
思えば今朝も早起きだったし、さっさと寝るか。騒がしかった酒飲み会場から急に出たせいで、耳が急な自然的情景に対応するまでに時間がかかる。あちこちから聞こえる多様な種類の虫の声。遠くを走る車の音。そして風の音。蚊の羽音。
蚊。蚊。蚊。蚊が多い。蚊取り線香を吹浦ならもらって、十分に設置してから眠りについた。明日はどうなることやら。
続きます。
午後五時。気の遠くなるほど電車に乗り続けて、乗り換えの駅ではなく、途中の駅で九尾が席をたったときは本当に嬉しかった。すべて普通の電車、こんな苦行させられるとは。
「だってさ、最近の若者は、我慢が無いっていうじゃん?たまにはこんなのもありかなって」
新幹線のありがたみをよく解ったが、こんなのに付き合っていたらたまったもんじゃない。
「悠くんにやらせた時は、もっと楽しそうだったけどね」
「電車に乗って楽しそうにしてるのなんてマニアくらいだぞ?」
「乗ってきたお婆さんと世間話してたね」
「なるほど・・・・・・?」
あの人はどうやら、話すのが好きらしいな、しかし年の離れた人と世間話して楽しいのだから、どんな趣味をもっているのかが気になる。
降りたのは浜辺の町。道の先に穏やかな日本海が見える。こんなところに住んでみたいなぁ、と思いながら、九尾のあとをついていく。途中でバスをつかまえ、やって来たのは、さっきの浜辺の町から少し山に入った温泉街だった。郵便局前のバス停で降りると、九尾はとある家をさして
「ここに泊まるの」
と言う。どう見ても宿とかそういうのではない。少しだけ落胆したけど、とにかく疲れたからそこで休みたかった。
「こーんにーちはーー!!!」
「おじゃまします」
九尾はノリノリで挨拶をする。なんだこのテンション、全然疲れていないと言うのか。さすが妖怪。そして、家の中から出てきたのは、自分とちょうど同じくらいの年の女の子だった。
「よこちゃん久しぶり!大きくなったね、ところで吹浦ちゃんは?」
「用事で出掛けました。あと三十分で戻ってくるらしいです」
「そっか」
「そちらの方は」
「こっちは東海ひのでーっていうの」
「東海ひのでです。はじめまして」
「荒海よこです。はじめまして」
ほんの一言だけ挨拶して、それからは沈黙。荒海さんは表情が読み取れないから初対面だと何を考えているのかさっぱりわからない。どうしようかと考えていると、誰かが帰って来た。
「ただいまー」
「吹浦ちゃん久しぶり」
「九尾ちゃんもう着いてたんだ、久しぶり~」
九尾とめっちゃ仲がよさそうな感じの人が入ってきた。吹浦というらしい。下の名前は挨拶してもわからなかった。
夜ご飯は四人でお寿司の出前を取った。九尾と吹浦は異様にうまそうに食べている。俺はその勢いに押されあまり食べられていない。荒海さんはもともと少食なのかもしれないけど、あまり食べていない。無口、無表情が少食と結び付くわけではないのだけど、何故かそんな印象を持った。
「食べないの?ほら、あーん」
「しないよ」
「ノリが悪いねぇ、そういう男、モテないよ」
「そうそう」
九尾&吹浦はめっちゃ仲いいな、と思ったのはこういう会話での相槌の自然さだった。長年の付き合いがあるのだろう。しかもかなり離れた土地でなかなか会えないのだろうから、さらに凄い。
夜九時。だらだらと酒を飲み続けている九尾と吹浦は相変わらずだった。荒海さんはさすがに時間なのか一時間ほど前に帰っていったので、ひとり俺がシラフで残されている。
「ひのでくん、布団敷いてきて~」
「押し入れに入ってるよ~」
やはりここで寝ることになるらしい。別の部屋に適当に布団をしいて、その上でぐうたらする。今日は何もなかったが、明日から何かをさせられるのだろうか。わざわざ連れてきたのだからそうなのだろうけどいまだに知らされていない。
思えば今朝も早起きだったし、さっさと寝るか。騒がしかった酒飲み会場から急に出たせいで、耳が急な自然的情景に対応するまでに時間がかかる。あちこちから聞こえる多様な種類の虫の声。遠くを走る車の音。そして風の音。蚊の羽音。
蚊。蚊。蚊。蚊が多い。蚊取り線香を吹浦ならもらって、十分に設置してから眠りについた。明日はどうなることやら。
続きます。
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