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夏休み編
サンライズその7 夏休み編
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サンライズ その7 夏休み編3
見知らぬ天井。という謎のタイトルが浮かぶが、まさに今俺は見知らぬ家の天井を見ていた。記憶を巡らすと、なんでもなく、九尾に連れられて遠い東北の地にやってきたのだ。そしてこの家にやってきて、一夜を過ごした、というわけ。空は既に青かった。時計を探して見ると六時半を指していた。普段と同じくらいの時間で、習慣というものは強いのだなぁ、と感激しながら布団を出る。伸びをして部屋を出ると、何か、料理をしている音が聞こえる。その音のほうに向かってみると、昨日の巫女さん、荒海さんが味噌汁を煮ていた。
「おはよう荒海さん」
「おはよう」
荒海は振り返って挨拶をすると、何事もなかったかのように調理に戻った。何か手伝うことがあるかと聞いてみても、あっちで座っててとの返事。おとなしく座っていることにする。居間のようなところで座ってテレビをつける。普段と違う天気予報が映しだされる。聞いたことがあるような地名からまったく知らないところまで様々だ。今日は快晴の予報。
「へー、東海は早いねえ」
吹浦さんが起きてきた。珍しそうに俺を見る。ネボスケに見えたのだろうか。まあそんな感じもしているかもしれない。九尾はまだ起きてこないが、七時過ぎに先に朝食が運ばれてきた。
「冷めちゃうから食べちゃおうね、いただきます」
「いただきます」
吹浦さんが食べ始めたので俺と荒海さんもそれにつづく。焼き魚と味噌汁、そして白いご飯の古典的朝食。荒海さんの腕は確かなようで、この部門なら優勝、といったところ。あっという間に平らげてしまったところで九尾が起きてくる。
「私がビリかぁ」
そういって、ゆったりと朝食を食べ始める。時間がいつもよりゆったり流れていた。せわしい普段の朝とはまったく違う世界。姉さんとはるかは今頃何をしているかな、と頭をよぎる。姉さんはしっかりしているから起きているのだとは思うけど、もしかしたらすやすやと寝ているかもしれない。家族でも知らない側面があるのか、と疑問にも思ったりする。
九尾は朝食を食べ終わったあと、横になりだらっとしてテレビを見ているので、さっそく俺は手持ちぶさたになってしまった。何かしら用事なり仕事なり、そんなものがあるから呼ばれたのではと思っていたのに。
「九尾、おれはどうすればいいんだ」
「ん、なーに、人生相談?」
「違う、俺はここに連れてこられた以上、何かしら用事があるんだろう」
「あるけど・・・・・・今はないの、よこちゃんの買い物でも手伝ったら?」
ずいぶん適当な答えだが、何かしら用事があるのは間違いないらしい。少し安心した。荒海さんのところに手伝いに行く。
「買い物に行くのに、荷物を運んでほしい」
「まかせろ」
そんな成り行きで近くのスーパーに行く。まだ開店したばかりの早い時間で、こんな時間に行ったことないな、とか、見慣れない納豆や牛乳が売ってるな、とか、最近スイカバー食べてないな、とか余計なことを考えながらどんどん重くなる買い物かごを持つ。会計をすませて、二つのマイバッグを持って歩く。
「右手が私の家の分。左手が神社にもっていくぶん」
「神社にこんなにもっていって何があるんだこれ」
意外というか、ありえないことにというか、神社に持っていく分のほうが多い。供えるにしても、誰かひとりが食べるにしても多すぎる。
「ムダにしてるわけではないから大丈夫」
「よこちゃーーーん!!!」
推理してると後ろから元気のかたまりのような声が聞こえる。なんだなんだ。
「ひさしぶり、あれ、君は?そっか、例の彼氏だね」
「しーっ、余計なこと言わないの」
返答がおかしい。彼氏ってなんだ。
「あたし、湯田川しぐれ、っていうのよろしくね!」
「俺は東海ひので、よろしく」
「よろしくね!」
湯田川さんは荒海さんの友達らしい。そんな雰囲気はやたらと漂っていて、荒海さんはさっきまでと違う人のように湯田川さんと喋り始めたのだ。それでねー、でさー、だよねー。さっきまでは大人びているように感じたが、やはり自分と変わらない年なんだな、と思う。
「またね」
「ばいばーい」
分かれ道で湯田川さんと別れると、再び静かな荒海さんが戻ってきた。 すごい二面性を見て自分まで静かになる。
「ここが、私の家」
そう言って、荷物の少ない方の袋を持って家に入っていった。俺は外で待ちぼうけ。蝉の声が頭上から降り注ぐなか、だらーっとぼーっと待つ。あの山の向こうはどんなところなのだろうか、この川を上るとどんな町があるのだろうか、などと考えていると荒海さんが戻ってきた。神社の敷地内の謎の家に戻ってくる。
「ただいま」
荒海さんがただいまと言っているので結構出入りしてるのだろう。九尾はだらだらとテレビを見ていた。そろそろお昼。日差しもかなり強く、部屋の中にいるのは懸命な判断かもしれない、と涼しい部屋で休もうと体が動くなか、吹浦さんに「ちょっと外でやってほしいことがあるんだけど」などと声をかけられたからたまったもんじゃない。しかし、どんなことをやらされるのだろうか、と暑さから気を紛らわせるように興味を少し持って外に出る。
「ここの花に水を上げて、あとこっちの洗濯物を干して、それから・・・・・・」
別に九尾についてきて、特別なことは無いんだなとか思いながらもくもくとこなす。終えたあと遅いお昼を一人で食べて、町に出掛けてみる。
見知らぬ町角を、迷わないように注意しながら進む。川沿いに出る俳句の碑を見たり、珍しいとんぼが横切ったりしていくのを見たりして、ますます異郷の地に来てしまったのだと思う。温泉旅館が立ち並ぶ地域を抜けて、ひとまわりして神社に戻ってきた。
「この町いいところでしょ、気に入った?」
吹浦さんがにこにこして言う。
「気に入りましたよ、雰囲気がいいところですね」
「でしょ?」
その日の晩は荒海さんの作ったカレーだった。姉さんの作るカレーとも、俺が作るカレーとも違う不思議な味がした。
続きます。
見知らぬ天井。という謎のタイトルが浮かぶが、まさに今俺は見知らぬ家の天井を見ていた。記憶を巡らすと、なんでもなく、九尾に連れられて遠い東北の地にやってきたのだ。そしてこの家にやってきて、一夜を過ごした、というわけ。空は既に青かった。時計を探して見ると六時半を指していた。普段と同じくらいの時間で、習慣というものは強いのだなぁ、と感激しながら布団を出る。伸びをして部屋を出ると、何か、料理をしている音が聞こえる。その音のほうに向かってみると、昨日の巫女さん、荒海さんが味噌汁を煮ていた。
「おはよう荒海さん」
「おはよう」
荒海は振り返って挨拶をすると、何事もなかったかのように調理に戻った。何か手伝うことがあるかと聞いてみても、あっちで座っててとの返事。おとなしく座っていることにする。居間のようなところで座ってテレビをつける。普段と違う天気予報が映しだされる。聞いたことがあるような地名からまったく知らないところまで様々だ。今日は快晴の予報。
「へー、東海は早いねえ」
吹浦さんが起きてきた。珍しそうに俺を見る。ネボスケに見えたのだろうか。まあそんな感じもしているかもしれない。九尾はまだ起きてこないが、七時過ぎに先に朝食が運ばれてきた。
「冷めちゃうから食べちゃおうね、いただきます」
「いただきます」
吹浦さんが食べ始めたので俺と荒海さんもそれにつづく。焼き魚と味噌汁、そして白いご飯の古典的朝食。荒海さんの腕は確かなようで、この部門なら優勝、といったところ。あっという間に平らげてしまったところで九尾が起きてくる。
「私がビリかぁ」
そういって、ゆったりと朝食を食べ始める。時間がいつもよりゆったり流れていた。せわしい普段の朝とはまったく違う世界。姉さんとはるかは今頃何をしているかな、と頭をよぎる。姉さんはしっかりしているから起きているのだとは思うけど、もしかしたらすやすやと寝ているかもしれない。家族でも知らない側面があるのか、と疑問にも思ったりする。
九尾は朝食を食べ終わったあと、横になりだらっとしてテレビを見ているので、さっそく俺は手持ちぶさたになってしまった。何かしら用事なり仕事なり、そんなものがあるから呼ばれたのではと思っていたのに。
「九尾、おれはどうすればいいんだ」
「ん、なーに、人生相談?」
「違う、俺はここに連れてこられた以上、何かしら用事があるんだろう」
「あるけど・・・・・・今はないの、よこちゃんの買い物でも手伝ったら?」
ずいぶん適当な答えだが、何かしら用事があるのは間違いないらしい。少し安心した。荒海さんのところに手伝いに行く。
「買い物に行くのに、荷物を運んでほしい」
「まかせろ」
そんな成り行きで近くのスーパーに行く。まだ開店したばかりの早い時間で、こんな時間に行ったことないな、とか、見慣れない納豆や牛乳が売ってるな、とか、最近スイカバー食べてないな、とか余計なことを考えながらどんどん重くなる買い物かごを持つ。会計をすませて、二つのマイバッグを持って歩く。
「右手が私の家の分。左手が神社にもっていくぶん」
「神社にこんなにもっていって何があるんだこれ」
意外というか、ありえないことにというか、神社に持っていく分のほうが多い。供えるにしても、誰かひとりが食べるにしても多すぎる。
「ムダにしてるわけではないから大丈夫」
「よこちゃーーーん!!!」
推理してると後ろから元気のかたまりのような声が聞こえる。なんだなんだ。
「ひさしぶり、あれ、君は?そっか、例の彼氏だね」
「しーっ、余計なこと言わないの」
返答がおかしい。彼氏ってなんだ。
「あたし、湯田川しぐれ、っていうのよろしくね!」
「俺は東海ひので、よろしく」
「よろしくね!」
湯田川さんは荒海さんの友達らしい。そんな雰囲気はやたらと漂っていて、荒海さんはさっきまでと違う人のように湯田川さんと喋り始めたのだ。それでねー、でさー、だよねー。さっきまでは大人びているように感じたが、やはり自分と変わらない年なんだな、と思う。
「またね」
「ばいばーい」
分かれ道で湯田川さんと別れると、再び静かな荒海さんが戻ってきた。 すごい二面性を見て自分まで静かになる。
「ここが、私の家」
そう言って、荷物の少ない方の袋を持って家に入っていった。俺は外で待ちぼうけ。蝉の声が頭上から降り注ぐなか、だらーっとぼーっと待つ。あの山の向こうはどんなところなのだろうか、この川を上るとどんな町があるのだろうか、などと考えていると荒海さんが戻ってきた。神社の敷地内の謎の家に戻ってくる。
「ただいま」
荒海さんがただいまと言っているので結構出入りしてるのだろう。九尾はだらだらとテレビを見ていた。そろそろお昼。日差しもかなり強く、部屋の中にいるのは懸命な判断かもしれない、と涼しい部屋で休もうと体が動くなか、吹浦さんに「ちょっと外でやってほしいことがあるんだけど」などと声をかけられたからたまったもんじゃない。しかし、どんなことをやらされるのだろうか、と暑さから気を紛らわせるように興味を少し持って外に出る。
「ここの花に水を上げて、あとこっちの洗濯物を干して、それから・・・・・・」
別に九尾についてきて、特別なことは無いんだなとか思いながらもくもくとこなす。終えたあと遅いお昼を一人で食べて、町に出掛けてみる。
見知らぬ町角を、迷わないように注意しながら進む。川沿いに出る俳句の碑を見たり、珍しいとんぼが横切ったりしていくのを見たりして、ますます異郷の地に来てしまったのだと思う。温泉旅館が立ち並ぶ地域を抜けて、ひとまわりして神社に戻ってきた。
「この町いいところでしょ、気に入った?」
吹浦さんがにこにこして言う。
「気に入りましたよ、雰囲気がいいところですね」
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