サンライズ

湯殿たもと

文字の大きさ
17 / 20
神無月編

サンライズその17 神無月編

しおりを挟む
サンライズその17 神無月編その7



十月も半分を過ぎたそんなある日の朝。体が動かない、起き上がれない。いきなりそんな状況に陥った。ケータイの目覚ましの曲がループして、そして姉さんが部屋に入ってくる。

「ひーくん朝だよ、そろそろ起きないと」

「う・・・ああ・・・・・・」

「ひーくん?」

声がうまく出せない。うぐぐ・・・・・・これはまずいかも。

「ひーくん大丈夫!?」

はるかもやってくる。口すらろくに動かせず、もごもごとも喋れない。

「はるか、ここで見てて、私は救急車呼んでくる」

きぼう姉さんは部屋を出て電話しているらしい。はるかはぽろぽろ涙をこぼす。すまない・・・・・・原因はやはり幽霊なのだろうか。それとも普段の生活習慣で体がやられてしまったのか。幽霊だろうな。すぐ救急車が到着して、病院に運ばれた。記憶が途切れ途切れだが、医者が困った顔をしたのは覚えている。そして気がつけば既に午後二時。点滴を受けていた。

「ひので君、気がついた?」

近くには湯殿が座っていた。

「まさかこうなるとはね・・・・・・ひので君、意識はある?私テレパシー使えるから、なにか考えて私に伝えて」

テレパシーだと?あいつそんなのまで使えるのか。赤の他人に心を覗かれるなんて恐ろしいな。

「ずいぶん失礼なことを考えるんだね」

人の心を覗くほうが失礼だろう。

「普段から覗いてないよ、それより今日の詳しい状況を教えて」

俺は今日起きた記憶をすべて出来るだけ詳細に思い出した。それを聞いた湯殿はうんうんと頷く。

「幽霊に体を乗っ取られつつあるのかもしれないよ、でも大丈夫。それなら解決できるから」

湯殿はそう言って廊下に出ていった。しばらかして戻ってくる。

「九尾さんの知り合いの、除霊のスペシャリストを呼んでもらったから、もうすぐなおるよ」

まじか!頼りになる。出来たらもうすぐなおるのを家族に伝えてくれ。

「おっけー」

 

なんだかんだで二時間くらいたって、病室に湯殿が呼んだ、除霊のスペシャリストがやってきた。まだ幼い、子供の巫女さん。

「はじめまして、東海さん」

初めまして。・・・・・・まだ小学校低学年、もしかしたら幼稚園かもしれないが、ひとりで来るとは立派なものだ。

「ひので君は今、うまく喋れないんだ、憑いてる幽霊を追い払ってもらうために呼んだんだよ」

「わかりました、やります。東海さん目を閉じてください」

目を閉じて待っていると子供の巫女さんは呪文を唱える。そして・・・・・・

「目を開けてください、もう大丈夫ですよ」

「・・・・・・はろー。ないすとぅーみーちゅー」

「喋った!」

喋れる。腕も動かせる。体も動かせる。よっしゃあああああああっ!!!

「巫女さんありがとう」

「どういたしまして」

やっと復帰だあああああっ!と急に立ち上がって、点滴の台車がバランスを崩し倒れてきて竿の先が直撃し頭を抱えることになった。


治ってもすぐ退院とはいくわけもなく、「幽霊に取りつかれている」というのが原因なら科学ではわかりようもないし、それを話してみれば余計に長引きそうなので、大人しく病院で過ごすことになった。きぼう姉さんやはるかだって、単に幽霊の仕業だとは考えていないだろう。巫女さんに治してもらった俺と、湯殿や九尾の部下といった妖怪たちのみが解ることだった。

結局退院したのはそれから一週間もあと、十月も終わりに差し掛かっていた。九尾もそろそろ帰ってくるころだろう。敵もひとり撃破、ひとり祓ったわけだし、そんなに脅威でもあるまい。


続きます。次回神無月編完結です。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...