短編 春・夏編

湯殿たもと

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鉄研ガール

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始まり

「最近鉄道にはまってるんだ」

「ふーん、え、鉄道?」

「そうだよ、ひかりちゃんも一回はまると凄いよ!」

「鉄道?」

「ときわちゃんも行こうよ」

「どこに」

「列車乗りに」


鉄研ガール


3621D快速はまゆり1号 釜石行

「こまちちゃんどこ行ったのかなぁ」

「お待たせ~」

角館こまち、私の友達で今日の旅行に誘った人、は最後にやってきた。何か大きなカバンを肩からかけている。

「それには何が入ってるの」

「時刻表に地図に、カメラにスタンプ帳」

「すごい」

一言でときわちゃんが感想をのべると、切符を買って改札に入る。三両の列車の真ん中に乗り込む。ずらりと座席が並び、こまちちゃんは回転させて向かい合わせにする。

「今日は何処に行くの?」

「釜石でラーメンを食べるんだよ」

「釜石ラーメン?」

「私すき」

普段あまりしゃべらないときわが一言。私が知らなかっただけで有名らしい。

「もしかして私より詳しいかなときわちゃん」

「多分」

ときわは釜石ラーメンについての説明を始める。結構詳しい。ときわってもしかしてグルメなのかもしれない。

列車は結構な速度で飛ばして走る。だいぶ多くの人が花巻駅で降りてそれと同じくらいの人々が乗ってくる。宮沢賢治ゆかりの地なのを思い出し、少しだけ作品の内容に思いを馳せていると列車は今までと反対方向に動き出す。こまちちゃんの説明だと別の路線に入ったからだと言う。川を渡り森や田んぼの中を抜けていく。さらに進むと右には谷、左には山々。綺麗なのでつい写真を撮る。

民話の里、遠野を過ぎるといよいよ山道にかかり、列車はエンジンを唸らせ進んでいく。長いトンネルをいくつも抜けていく。

「この駅のそばに鍾乳洞があるんだよ」

「そうなんだ」

上有住(かみありす)という駅を列車は通りすぎていく。いよいよ谷のどん詰まりまできて、長いトンネルへ。それを抜けると古い鉱山の町のような雰囲気のところを抜けていく。いつの間にか雪も消えた。工場の煙突からもくもくと煙がそらへあがっているのがみえると釜石の駅。ここが終点。

「風が強いね~」

「海沿いだからね~きゃあ」

「・・・・・・」

「そうだときわちゃん、釜石で一番美味しいラーメン屋さん、教えてよ」

あまり表情を出さないときわが少しだけ笑みを浮かべて

「ついてきて」

という。


三人は仲良く話しながら、釜石の街に消えていった。

おしまい。

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