短編秋・冬編/ゲーセンの巫女

湯殿たもと

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夢と幻

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高校のとある教室。学ランの男子が一人たたずんでいた。客観的には男子一人しかいない。しかし、男は誰かと話していた。

?「人を好きでい続けるってことは大変なのかな」

?「そりゃそうだ、人の心っていうのは揺れ動くからな。でも・・・一人の人をずっと思い続けられるっていうのは素敵なことなんだ」

「あなたは、一人の人をずっと好きでいられる?」

「・・・ああ。でもさ、もう二度と会えない人のことを思い続けるっていうのは大変なのさ。見返りを求める訳じゃないが」

「・・・そうだよね」

「俺はお前のことをよく知らない。でも同じつらい思いをしてるっていうのはなんとなく解るのさ。打ち明けあえば、少しでも楽になると思うんだ」

「・・・」

「俺が好きだったのは俺の従姉だ。ガキの頃から優しくしてくれて、ホントに好きだったんだ。親戚だから、かと思ったけど小学五年生くらいになるとなんとなくわかったんだ。これは恋だってね。そのあと変な男と駆け落ちしちゃってな・・・」

「従姉の名前は」

「安芸もみじ」

「・・・わかった」

「・・・?」

空間が揺らぎ、波紋が広がる。

「もみじ!?」

「久しぶり、何してるのさ、はとば君」

「もみじ、今どこにいるんだ、教えてくれ」

「遠い遠いところにいるよ」

「俺、もみじに伝えたいことがあるんだ。会って話したいんだ。会わせてくれ」

「それは無理なんだ。遠い遠いところにいるから」

「遠いところってどこなんだ?」

「地獄かな」

「なんでだよっ、駆け落ちしてどこかに暮らしてるんじゃないのかっ」

「知らなかったの、教えてもらわなかったんだ、私その途中で車の事故で死んだんだよ」

「そんなっ」

「だからね、私にはもう、会えないよ。だから、ばいばい」

「もみじっ」


「なぁ」

「なに」

「どうして、俺が知らなくてよかったことを教えたんだよ、知らなければよかったのに」

「会えなくても、好きでいられるって言った」

「それは言葉のあやだよ、会えなくてもいつか会えるかもしれないって、見返りっていうのはその僅かな希望なんだ。未練たらたらって言われるかもしれないけど!」

「あなたの言ってることは矛盾してる。一人の人を好きでい続けると言ったのに」 

「黙れっ、何がわかる!俺の気持ちがっ!」



「ほー、救急車だ、久保田、お前を迎えに来たんだぞ」

「んなわけあるかっ船引お前がだ」

「ンモー喧嘩しないでよ」

「うぐ、実際に救急車で運ばれた奴の説得力はあるな」

「かなめ君も救急車で運ばれたんじゃないの?」

「ん?そうか、記憶にないだけで乗ってるかもな」

「お前らずるいぞ」

「さっきと言ってること違うじゃねーか」


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