程々に働き、グータラしてたら神話になりました

Tkayuki 冬至

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八柱の神々

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 ロゴスはアルケーとアクアリウスと共に八つの器を作り出した。厳密にはアルケーが多い注文にロゴスとアクアリウスで作ったのだが……それを、それぞれの器にアルケー自身が加工した“8つの欠片”を入れたのである。


 【水色の欠片】には細かな鋭利な大剣程の刃如き鱗を全身に纏う大蛇だ。特徴的なのは、何よりもその大きさ。八つ器の中でも最も巨大である。名を【メルクリウス】を授けた。



 【金色の欠片】には黄金の鱗粉を纏う怪鳥。八つの器の中でも一際美しい芸術作品である。この器に関してはアルケーが最もお気に入りであり、アルケー自らが名を【ウェヌス】を授けた。



 【赤色の欠片】には身体から劫火の焔を纏う大狗である。靭やかな肉体を持つ、八つの器の中で最も小さいが、それでもロゴスやアクアリウスよりも何倍も大きい。名を【マルテ】を授けた。



 【茶色の欠片】は樹木を纏った巨人。その巨体故に、ただの一歩、歩くだけでその足跡に大きな池が出来てしまう程。名を【ユッピテル】を授けた。



 【土色の欠片】には透明なスライムだ。涼しさを感じさせる何処にでもいそうな至って普通のスライム。だが、アルケーが小細工をして大きさを自由自在に変形する万能生命体。名を【サトゥルノ】を授けた。



 【空色の欠片】は、山を巻き付ける程の長い身体を持つ雲龍。翼は無いものの、空を泳ぐ様に浮遊する天空の化身だ。アルケーが己の姿を更に大きく、格好良くした器。つまり、アルケーが自ら望む姿である。名を【ウラーノ】を授けた。



 【紺色の欠片】は、大きな鯱だ。鯱の三倍程の大きさであり、鋭利な牙は岩盤をもやすやすと噛み砕く程の強靭な牙と顎である。特徴的な名を【ネプトゥーン】を授けた。



 【黒色の欠片】は、まるで人型の騎士の様な蟲である。黒光りした鎧を全身纏う黒騎士であり、肩から更に肩から昆虫の腕が生えている。その先端はカマキリの様な鋭利なもの。名を【プルート】を授けた。





 “つ、つかれた……”


 「お疲れ様です、主様」


 『うんうんっ!いやぁ、サイコーな仕上がりだよねっ!』



 現在、疲れて寝そべっているロゴスに労うアクアリウス、そしてアルケーは満足気である。そして彼等の前には新しく誕生した八柱の神々がそれぞれ頭を垂れていたのである。

 が、残念ながら言葉は理解出来ているみたいだが言葉を発する。又はテレパシーで伝えるのはまだ時間が掛かりそうだ。

 疲れたロゴスを他所に、アルケーは八柱の神々に指示をする。



 大蛇【メルクリウス】、海底を守護せよ。



 怪鳥【ウェヌス】、雲上を守護せよ。



 大狗【マルテ】、火山地帯を守護せよ。



 巨人【ユッピテル】、大地を守護せよ。



 スライム【サトゥルノ】、山を守護せよ。



 雲龍【ウラーノ】、雲下を守護せよ。



 大鯱【ネプトゥーン】、海上を守護せよ。



 鎧蟲【プルート】、森を守護せよ。





 “テキトーじゃな”


 『む?そうか。しかし、浄化した世界だからな。やはり、一度支配者を決めるのが手っ取り早いだろう?今の世界に支配者は居ないのだからな』
 

 「昔は、いたの?」
 
 『うむ!支配者、というより数が最も多く世界に良し悪しに影響を大きく与えていたのは人間だ。姿は、今のアクアリウスみたいな……いや、アクアリウスの方が容姿としては最高だろう、な!ロゴスよ』


 “まぁ、わしが丹精込めて作ったからの”


 「!大好き、主様ー」


 『……え、我は?』


 「は?」


 『くすん』



 愛しきアクアリウスからの拒絶に、轟沈してしまったアルケーはその巨体を縮めて嘘泣きをするが効果無しとわかると不貞寝してしまう。


 八柱の神々は、不貞寝してしまったアルケーにオロオロしてしまうのだ。今産まれてきたばかりの八柱は完璧に近い存在だが、アクアリウスとは違いアルケーに忠誠心はある。既に降された命令によって、守護すべき場所に移動しようとするのだが、そこにロゴスがストップをかけた。



 “おいアルケー。先に約束ごとなど決めておいた方が良いのではないか。後々問題が起きぬ前にの”


 『約束ごと?例えば……?』


 “アルケー、お前はそれぞれの場所を守護とは言うがどの様にするのかを具体的に決めておけ。生まれて間もない子供じゃからな”


 『じゃあ、ロゴス――――――』


 “やじゃ。親であるお前が決めろ。親なんじゃからな”


 『ぶー』



 それぞれ八柱に具体的な指示を出すアルケー。しかし、指示とは言えそれほど難しくはない。ただ、支配と言う名の各場所の管理をしろということ。つまり、食物連鎖を保て、ということである。



 大蛇【メルクリウス】、海底の流れを維持し生命の誕生を育め。
 


 怪鳥【ウェヌス】、雲上にて外からの 侵略者・・・が侵入しないよう監視せよ。



 大狗【マルテ】、火山地帯にて定期的に火山活動を行い、大地に恵みを与え大地を作る。



 巨人【ユッピテル】、大地を耕し生命の土壌を作り恵みの地に変えよ。



 スライム【サトゥルノ】、山は浄化の拠点として、生命に降り注ぐ生命のエネルギーを満たし、拡散せよ。



 雲龍【ウラーノ】、雲下にて天災を降り注げ。全ての恵みを、天の恵みを。



 大鯱【ネプトゥーン】、海底から浮かび上がる生命の恵みを波や風に乗せて送れ。



 鎧蟲【プルート】、森を増やし生命の宝物庫へ、そして生命の循環をせよ。あと、美味しい食べものとかいっぱい作ってね。出来れば―――――――



 “――――って、まてぃ!”


 『何だロゴス』


 “プルートだけ酷くない?生命の循環とかまだわかるが、食べ物とか―――――”


 『だって、プルートの権能力は循環・・が飛び抜けて長けてるからな。他では、まず無理。あと、何か美味しいもの食べたいからよろしく』


 “めっちゃ大変じゃろ……”



 コソコソと話すアルケーとロゴスに八柱の神々は心配そうに眺めていた。それぞれアルケーから言い渡された事に、何一つ不満なく承っていたのだ。だが、簡単に言うと生まれたての存在というよりロボットにプログラムをインプットしただけ。恐らく、何年何百年何千年も経てばそれぞれ自我を確立するだろう。その際にどの様な変化が起こるのかは今はまだ分からない。



 “……暫く、プルートと共に行動するかのぅ”


 『む、何故ゆえに』


 “アルケー、お主が無造作に世界を浄化したのじゃ。八柱の中で最も難題がプルートの仕事じゃて。無造作に洗い流した大地に今すぐ草木を生やせ、食べ物作れなど……どれ程時間を費やすと思うておる。速くて50年以上はかかるぞ”


『ぇ……まじ?』


 “それを至るところを、じゃ。無理矢理植物を育て過ぎると大地が痩せてしまう。そうなると困るのが、ユッピテルとサトゥルノじゃ。至る所、大地が痩せ細れば、疲労で倒れるぞ”



 『…………時間をかけるのが得策、ね』



 “そうじゃ。気長に待て。わしも暇潰しに手伝うからの……はぁ、下手すれば何千年どころか何万何千年もかかるじゃろうが”


 『はぁ。わかったよロゴス。ならばプルートと共に森を増やし生命の循環を』


 “ほのぼのとやらせてもらうからの”



 こうしてロゴスはプルートと共に森を増やす事に決定した。つまり、ロゴスだけではなくアクアリウスも同伴する事になるのは言うまでもない。

 そうして、八柱の神々に指示を出した後にアルケーは眠りについた。身体が星屑の様に消え、大地に沈んでいったのだ。恐らくこの星の中心に眠りについたのだろう。

 八柱の内、七柱はそれぞれ持ち場に行動する。そしてロゴスはプルートとアクアリウスと共に途方も無い森を育てる旅へ出るのであった。

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