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10.不機嫌な彼
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月曜日は、職場の雰囲気も重い。
休日の余波を引きづり、アンニュイな空気が漂う。
しかし!
今日の凪紗は 違う。
幸せとやる気に満ちているのだ。
北川をみると、PCに向かい、難しい顔をしている。
(そういえば明日から出張だっていってたな…)
その資料作りをしているのだろうか。
眉間に皺を寄せて、珍しくイライラとした様子だった。
先週から煮詰まってるのかな…。
公園での様子を思い出して、ちょっと同情した。
上手くいかないときは全ての歯車が狂うんだよね…、よくわかるよ。
いつも助けてくれる北川に、今日は私がエールを送ろう!
「北川さん、コーヒーです」
凪紗は手が止まるタイミングをみて、コーヒーを差し出した。
少し驚いた顔をしたが、すぐに表情を緩ませて受け取ってくれた。
「…明日からの資料ですか?」
「ああ。あとはいない間の引き継ぎの資料とか、かな」
大変ですね~
気持ちが浮ついていると、言葉も軽くなるのかな。
軽薄な感じの物言いに、自分で驚いて口元を塞いだ。
「…すみません」
北川は苦笑いを浮かべ、手を横に振った。気にするな、ということだろう。
「出張先はどこでしたっけ?」
気まずい雰囲気を打破するべく、話題を変えてみた。
「博多だよ。お土産何がいい?」
「お土産ですか?博多は何が有名ですか?できれば美味しいものがいいです」
凪紗の言葉に、自分のスマホで検索してくれた。
ほら、と画面を向けられたので、屈んで覗き込んだ。
顔にかかる髪を耳にかける。
「…この香り…」
北川が呟いた。
凪紗はその呟きを耳元で聞いてしまい、バッと上体を起こした。
うわ、恥ずかしい…
きっと耳元まで真っ赤だ。
「…ねぇ、それは男性用の…?」
いつもより低い声。
心做しか声色も違う。
凪紗は反射的にブンブン首を横に振った。聞かれたって答えられないよ、妄想彼氏みたいなもんだし。恥ずかしすぎる。
「あ、もういきますね。頑張ってください」
凪紗は逃げるように自分のデスクに戻った。北川の視線がいつまでも自分を追ってきているようで、PCから顔を上げられなかった。
翌日から北川は出張にいった。
職場のボードには帰社は金曜日となっている。
3泊4日か。
博多ラーメンとか食べるのかな。
まだまだ凪紗のテンションは高いところをキープ中だった。
急接近なエピソードを思い出しから、次々に思い出してきたのだ。
なんで今まで思い出せなかったのか不思議なくらいだ。
思い出したくないことでもあったのだろうか…。
処刑エンドの自分にそれ以上の事実があるとは思えなかった。
まぁいいじゃない?
私もフィーナも幸せなんだから。
筆の進みも絶好調!
順調にウイリアスとフィーナの関係が深まっている。
甘い やり取りを書いていると、凪紗は不思議な感覚に襲われる。
もちろんフィーナは前世の自分。
追体験をリアルに感じてもおかしくない。
それなのに気持ちに違和感があるのだ。
不思議なことに そんなときはウイリアスではなくキースを目で追っているのだ。
キースは殿下が公爵邸を訪れるときは、必ず来るようになっていた。
ウイリアスとセットのようだった。
フィーナがウイリアスに接触しようと画策していると邪魔をする。
用事を言いつけたり、ウイリアスをつれていってしまったり。
今までおかしいとも思わなかったが、こうやってじっくり記憶を辿ると、違和感があった。
フィーナとキースは何かあったのだろうか…?
そこまで 辿り着いて、考えるのを放棄した。
どうしたって処刑エンドは変わらない。
フィーナは誰とも幸せになることはできないのだから。
せめて小説の中くらいいい思いしたっていいじゃない。
そして今晩も甘い時間を紡ぎ出すのだ。
PCを立ち上げて夢の世界と繋げる。
殿下とステファニアご歓談するテーブルの脇でお茶の用意をする。
今日はステファニアからの指名でフィーナが代わりを務めていた。
ステファニアはフィーナをことある事に打ち据えるようになっていた。
フィーナの腕は腫れ上がり、服が触れても激痛が走る。
今日の指名も、フィーナを打ち据える口実を作るためだろう。
いつもより慎重に茶器をセットする。
腕の震えが止まらない。
痛みに耐えながらティーポットを操作するが、思うように腕があがらない。
ステファニアの苛立ちが伝わってくる。
早くしなければ。
震える腕にさらに力を入れてティーポットを持ち上げようとしたとき、それを阻むように手が差し出された。
「殿下。久しぶりに私が入れても?」
その声にハッとする。
ウィリアスさま!?
彼の手が、そっとなぞるようにフィーナの手を掠め、流れるような手つきでお茶を入れていく。
「ウィリアスが入れるお茶は美味しんだ。ステファニアにも味わって欲しい」
殿下の笑顔に裏はない。
本当にお好きなんだろう。
「まぁ、楽しみですわ」
可憐な笑顔で返すステファニアの隠れた口元には悔しさが滲んでいた。
フィーナは命じられたままに退出する。
あぁ、また今夜も打たれるわね…
でも。
それが些細なことに思えるほど幸せだった。
ウィリアスさまが助けてくださった。
一瞬触れた手の感触を何度も思い返し、そっと自らの手で包み込む。
助けてくださったのも、触れたのも偶然かもしれない。
それでも いい。
ウィリアスさまの瞳に一瞬でも私が映ったのならば。
休日の余波を引きづり、アンニュイな空気が漂う。
しかし!
今日の凪紗は 違う。
幸せとやる気に満ちているのだ。
北川をみると、PCに向かい、難しい顔をしている。
(そういえば明日から出張だっていってたな…)
その資料作りをしているのだろうか。
眉間に皺を寄せて、珍しくイライラとした様子だった。
先週から煮詰まってるのかな…。
公園での様子を思い出して、ちょっと同情した。
上手くいかないときは全ての歯車が狂うんだよね…、よくわかるよ。
いつも助けてくれる北川に、今日は私がエールを送ろう!
「北川さん、コーヒーです」
凪紗は手が止まるタイミングをみて、コーヒーを差し出した。
少し驚いた顔をしたが、すぐに表情を緩ませて受け取ってくれた。
「…明日からの資料ですか?」
「ああ。あとはいない間の引き継ぎの資料とか、かな」
大変ですね~
気持ちが浮ついていると、言葉も軽くなるのかな。
軽薄な感じの物言いに、自分で驚いて口元を塞いだ。
「…すみません」
北川は苦笑いを浮かべ、手を横に振った。気にするな、ということだろう。
「出張先はどこでしたっけ?」
気まずい雰囲気を打破するべく、話題を変えてみた。
「博多だよ。お土産何がいい?」
「お土産ですか?博多は何が有名ですか?できれば美味しいものがいいです」
凪紗の言葉に、自分のスマホで検索してくれた。
ほら、と画面を向けられたので、屈んで覗き込んだ。
顔にかかる髪を耳にかける。
「…この香り…」
北川が呟いた。
凪紗はその呟きを耳元で聞いてしまい、バッと上体を起こした。
うわ、恥ずかしい…
きっと耳元まで真っ赤だ。
「…ねぇ、それは男性用の…?」
いつもより低い声。
心做しか声色も違う。
凪紗は反射的にブンブン首を横に振った。聞かれたって答えられないよ、妄想彼氏みたいなもんだし。恥ずかしすぎる。
「あ、もういきますね。頑張ってください」
凪紗は逃げるように自分のデスクに戻った。北川の視線がいつまでも自分を追ってきているようで、PCから顔を上げられなかった。
翌日から北川は出張にいった。
職場のボードには帰社は金曜日となっている。
3泊4日か。
博多ラーメンとか食べるのかな。
まだまだ凪紗のテンションは高いところをキープ中だった。
急接近なエピソードを思い出しから、次々に思い出してきたのだ。
なんで今まで思い出せなかったのか不思議なくらいだ。
思い出したくないことでもあったのだろうか…。
処刑エンドの自分にそれ以上の事実があるとは思えなかった。
まぁいいじゃない?
私もフィーナも幸せなんだから。
筆の進みも絶好調!
順調にウイリアスとフィーナの関係が深まっている。
甘い やり取りを書いていると、凪紗は不思議な感覚に襲われる。
もちろんフィーナは前世の自分。
追体験をリアルに感じてもおかしくない。
それなのに気持ちに違和感があるのだ。
不思議なことに そんなときはウイリアスではなくキースを目で追っているのだ。
キースは殿下が公爵邸を訪れるときは、必ず来るようになっていた。
ウイリアスとセットのようだった。
フィーナがウイリアスに接触しようと画策していると邪魔をする。
用事を言いつけたり、ウイリアスをつれていってしまったり。
今までおかしいとも思わなかったが、こうやってじっくり記憶を辿ると、違和感があった。
フィーナとキースは何かあったのだろうか…?
そこまで 辿り着いて、考えるのを放棄した。
どうしたって処刑エンドは変わらない。
フィーナは誰とも幸せになることはできないのだから。
せめて小説の中くらいいい思いしたっていいじゃない。
そして今晩も甘い時間を紡ぎ出すのだ。
PCを立ち上げて夢の世界と繋げる。
殿下とステファニアご歓談するテーブルの脇でお茶の用意をする。
今日はステファニアからの指名でフィーナが代わりを務めていた。
ステファニアはフィーナをことある事に打ち据えるようになっていた。
フィーナの腕は腫れ上がり、服が触れても激痛が走る。
今日の指名も、フィーナを打ち据える口実を作るためだろう。
いつもより慎重に茶器をセットする。
腕の震えが止まらない。
痛みに耐えながらティーポットを操作するが、思うように腕があがらない。
ステファニアの苛立ちが伝わってくる。
早くしなければ。
震える腕にさらに力を入れてティーポットを持ち上げようとしたとき、それを阻むように手が差し出された。
「殿下。久しぶりに私が入れても?」
その声にハッとする。
ウィリアスさま!?
彼の手が、そっとなぞるようにフィーナの手を掠め、流れるような手つきでお茶を入れていく。
「ウィリアスが入れるお茶は美味しんだ。ステファニアにも味わって欲しい」
殿下の笑顔に裏はない。
本当にお好きなんだろう。
「まぁ、楽しみですわ」
可憐な笑顔で返すステファニアの隠れた口元には悔しさが滲んでいた。
フィーナは命じられたままに退出する。
あぁ、また今夜も打たれるわね…
でも。
それが些細なことに思えるほど幸せだった。
ウィリアスさまが助けてくださった。
一瞬触れた手の感触を何度も思い返し、そっと自らの手で包み込む。
助けてくださったのも、触れたのも偶然かもしれない。
それでも いい。
ウィリアスさまの瞳に一瞬でも私が映ったのならば。
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