追放聖女と元英雄のはぐれ旅 ~国、家族、仲間、全てを失った二人はどこへ行く?~

日之影ソラ

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18.グレア国営大図書館

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 宿屋を出る手続きだけ済ませて、私たちは街へ繰り出す。
 ここは大陸の東にあるルーグレアという国。
 主要都市であるグレアの雰囲気は、少しエストワール王国に似ている。
 三階建て以上の高い建物が多くて、近代的な造りをした街並みだ。

「ノアは行きたい所があるんだよね?」
「うん、グレア国営大図書館。この国で一番大きな図書館で、なんと五千万を超える本が貯蔵されているんだよ」

 以前に話を聞いてから、ずっときてみたいと思っていた場所だ。
 私が知らない物語に出会えるかもしれない。
 そう思うと、今からワクワクが止まらないよ。

「はははっ、ノアは本当に本が好きだね」
「うん。特に童話とか冒険記が好き」
「前も聞いた気がするけど、どこがそんなに気にいるのかな? 僕はその辺り疎いしさっぱりだよ」

 街を歩きながら、ユーレアスが尋ねてきた。
 確かに前も似たよな質問をされた記憶がある。

「う~ん、何て言えばいいのかな」

 その時も悩んだっけ。
 好きな理由を聞かれて、すぐに回答できないのも変な話だ。
 上手く言葉に出来ないのは、私がまだまだ若いからなのかな。

「読んでいてワクワクするんだ。自分の知らない場所があって、いろんなことが起きている。登場人物の活躍とか、何を考えてるんだろうーってさ。想像すると楽しくなるよ」
「ふぅ~ん、そういうものか。僕はやっぱり直接見たいと思うけどね」
「それは私もそうだよ」

 五年という短い期間だけど、旅をして気付かされた。
 世界は私が思っている以上に広くて、知らないことがたくさんある。
 七百年も生きているユーレアスですら、まだ見足りないと言うほどに。

「そのうち私も、冒険記とか書いてみたいな」

 ふいに思ったことを口に出していた。
 ユーレアスが頷き言う。

「いいんじゃないかな? 旅には目的がつきものだからね」
「協力してくれる?」
「もちろんだとも。書くのは苦手だけど、感想を言うのは得意だぞ」

 ユーレアスは自信満々にそう言って、自分の胸をトンと叩いた。
 彼のようにユーモア溢れる登場人物がいると、物語も一層晴れやかになりそうだ。

「でも私、物語を書いたことなんてないし」
「それだったら丁度いいじゃないか」
「何が?」
「今向かっている場所は、それを知るのにおあつらえ向きだと思わないかい?」

 彼に言われてはっと気づく。
 我ながらすぐに気づけないなんて恥ずかしい。
 そうだ。
 私たちが向かっているのは、この国で一番たくさんの本が眠る場所。

「お勉強もかねて! いざ本の城へ向かおう」
「うん」

 図書館に行く新しい理由も出来た所で、歩いて五分が経過する。
 目の前にある大きくて立派な建物。
 看板にはでかでかと図書館という文字が刻まれていた。
 想像以上に立派な建物に、思わず感動してしまう。

「さすが五万の本を貯めた蔵だね」
「うん。今まで入った図書館では一番大きいと思う」
「これはこれは期待が出来そうで何よりだ」

 先に一歩を踏み出したのはユーレアスだった。
 私も遅れないように、彼に続いて図書館の中へと入る。
 中へ入ると受付が合って、必要な手続きを済ませたら入館許可証がもらえる。
 滞在時間も決められていた。

「最大三時間です。延長する場合は、再度こちらへお越しください」
「わかりました」

 受付嬢に話を聞いて、了承すると許可証がもらえた。
 許可証を首から下げて奥へと進む。
 すでに見えていたけど、改めて見渡して感動する。
 たくさん並んだ本棚。
 右にも本、左にも本、上を見てもまだ本が視界に入る。
 先へ進めばもっと多い。
 背の高い本棚ばかりで、大人でも梯子なしでは届かない。
 そんな光景を見つめながら、ユーレアスの言葉を思い出す。

「本の城」

 その言葉に相応しい場所だ。

「さぁさぁ、ぼーっと立っている時間が勿体ないよ」
「そうだね。時間は有限だ」
「その通り! お目当ての本たちを探そうじゃないか」

 私たちは本棚の道を歩いていく。
 探しているのは冒険記や旅日記だ。
 いろんな物語が眠っていて、私が知らない話もあるかもしれない。
 ついでに本を書くための参考になればとも思っている。

「この辺りだね」
「改めて見ても凄い数だな。この中から探すのは一苦労だぞ?」
「別に探さなくても良いよ。何となくで見渡して、気になったタイトルの本を取れば良い」
「そういうものか。じゃあこれなんてどうかな?」

 ユーレアスが手を伸ばし、一冊の古い本を取る。

「ヘレン・ウォーカーの旅日記?」
「知っている本だったかな?」
「ううん、初めて見る」

 見た目でもわかるくらい古い本だ。
 タイトルに書かれた名前も知らない。
 ユーレアスも知らない人だという。
 何気なくページをめくると、そこに書かれていたのは著者の旅の模様だった。
 
 ヘレン・ウォーカー。
 彼女は私たちと同じように世界中を巡る旅人だった。
 誰も知らない、見たことがない景色を見たい。
 その想いで旅を始め、旅の模様をこの本に書き記したようだ。

「なんと! この本の作者は、文字通りの世界一周を遂げたようだね」

 ユーレアスは驚いていた。
 永劫を生きる彼ですら、行ったことのない場所がある。
 世界はそれほど広くて果てしない。
 人間の限られた一生の中で、全てを見て回るなんて不可能に等しいはずだ。
 それを彼女は成し遂げていた。
 文字通り生涯をかけて。

「ねぇユーレアス、これ」
「ほうほう。これは興味深いね」

 その中でも、私たちの目に留まったものがある。
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