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しおりを挟むソフィアがいなくなったリヒト王国の王城は、今日も慌ただしかった。
理由は一つ。
聖剣が抜けなくなってしまったからだ。
「どうするのだ?」
「どうもこうもないだろう! 勇者が戦力にならなくなった今、こちらが圧倒的に不利だ」
「帝国軍の侵攻は未だ続いている。このままでは……いっそ、領土を返還するのはどうか?」
「馬鹿を言うな! 苦労して手に入れた領土をみすみす渡してどうする? 絶対に渡してはならん! なんとしても死守するのだ!」
大臣たちも頭を悩ませていた。
ヴァールハイト帝国との戦争、表向きは帝国からの侵略を守る防衛戦だが、実際は違う。
かつて奪った土地を奪い返されぬよう死守する戦いである。
すでに奪った土地の半分を奪い返されたリヒト王国は、これ以上失態を重ねるわけにはいかなかった。
しかし、肝心の勇者が戦える状態ではない。
戦況がギリギリ拮抗していたのは、勇者と聖剣の存在があったからこそ。
魔王と呼ばれるグレン・ヴァールハイト率いる帝国軍の総力は、リヒト王国の戦力を大きく上回っている。
勇者エレインがいても敗北が続いているのに、聖剣を失った勇者など勝負にならない。
「他の聖剣は用意できないのか?」
「馬鹿な! 聖剣はそうやすやすと作れるものではないぞ!」
「だが、あの聖剣は一人の鍛冶師が作った物だと聞く。聖剣とは作れるものではないのか?」
「その鍛冶師が異常だっただけにすぎん! 今回の件も、その鍛冶師の離脱が原因だという話じゃないか! どうなっているのだ!」
彼らは知らなかった。
ソフィアの離脱は、勇者エレインと王女エレナの策略が原因だったことを。
そう、あれは独断だった。
二人が結託し、気に入らないソフィアを追い出しただけだった。
大臣や国王は同意していない。
故に、当然の結論に至る。
「その鍛冶師を連れ戻すしかないだろう」
「早急に捜索隊を結成し、見つけ次第連行する。抵抗するようなら……止むを得ん。多少手荒になっても構わない」
「うむ。重要なのは技術だ。最悪、洗脳してでも連れ戻すのだ」
「誰に任せる?」
「――そういうことでしたら、勇者エレイン様にお願いするのはどうでしょうか?」
そう提案したのはエレナ王女だった。
国の方針を決める大事な会議、当然王族である彼女も参加している。
自分たちの我儘が原因で招いた事態。
内心では焦っているが、それを一切表に出さず、彼女は淡々と提案する。
「エレイン様は彼女と面識がございます。戻ってくるように説得することも可能かと」
「そうなのですか。では、勇者を筆頭に捜索部隊を」
「いえ、部隊を結成せずとも、エレイン様一人で十分でしょう。いつまた帝国が攻めてくるかもわからない状況ですので」
「エレナ王女がそうおっしゃるなら」
エレナ王女としても、この失態を隠したかった。
下手に部隊を結成され、自分たちが原因だとバレないように、エレイン単独での捜索に誘導する。
大臣たちとしても、戦争のための人員は減らしたくない。
聖剣を失い戦えない勇者は戦力外だ。
鍛冶師の捜索へ勇者を回すことに、反対する理由がなかった。
「では、決まりですね」
「はい。エレイン様には私からお伝えします」
「よろしくお願いします」
会議が終了し、大臣たちが去っていく。
そんな中、エレナ王女は唇を噛みしめていた。
「こんなはずじゃ……」
なかったのに。
勇者エレイン同様に、彼女も理解していない。
自分がどれほど大きな存在を追い出してしまったのか。
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