偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ

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 イリアスたちが雨を降らせるために祈っている頃。
 スパーク王国の大聖堂では、今日も大勢の相談者が集まっていた。
 
「聖女様、子供が熱を出してしまったんです。もう三日もこの調子で……」
「安心してください。すぐに治しましょう」

 聖女は祈りを捧げるように手を組み、聖句を唱える。
 光が発せられ、子供の体調は回復する。

「ありがとうございます! 聖女様のおかげで、この子は救われました」
「いえ、私の力ではありません。主のお導きです」

 聖女として振る舞う彼女が、まさか偽者だとは誰も思わないだろう。
 本物の聖女であるイリアスの代わりに、聖女のフリをしているマリィ・ノーマン。
 彼女が大聖堂に立ってから、すでに五日が経過していた。
 誰一人として、彼女の正体には気づかない。
 それほど完璧に騙せるほど、彼女の容姿や態度は聖女イリアスと重なっていた。
 もっとも重要なのは、奇跡を起こせるかどうかだが、その問題は宮廷一の天才魔導具師によって解決している。
 彼女の首元には、天才魔導具師が作り出した「疑似聖女」が装着されていた。 

「聖女様! 私の悩みを聞いてくださいませんか?」
「はい、もちろん」

 元々ノーマン家で聖女の力を宿すはずだった彼女は、イリアスが養子に迎えられるまで、聖女になるための教育を受けていた。
 イリアスが聖女に選ばれて以降も、彼女は反発するように勉学に励んだ。
 その努力だけは、評価に値するだろう。
 だが、彼女はやり方を間違えた。

(……そろそろ……)

 偽装は完璧だった。
 しかし、決定的な問題があった。
 それは……。

(……魔力が……もう……)

 どこまで偽っても、彼女は聖女ではないということである。
 聖女でない彼女には、人々の祈りを神に届け、奇跡を起こす資格がない。
 それを補い、偽っているのは天才が作った魔導具だった。
 魔導具は使用者の魔力を消費して効果を発揮する。
 人間の身体に宿る魔力には限界があった。
 貴族として生まれたマリィは、一般人よりも多くの魔力を宿している。
 そのおかげで、疑似聖女の力を使い続けることができた。
 だが、次々に迷える人々が押し寄せ、その度に効果を使用していたことで、ついに彼女の魔力に限界を迎える。

「聖女様、この子の治療を……」
「申し訳ありません。少し休ませていただいてもよろしいですか?」
「あ、す、すみません。そうですよね。聖女様も、お疲れのようですし。えっと……」

 次は自分の番だと思っていた女性は困惑していた。
 戸惑う女性との間に騎士が入り、集まった人々に向けて、本日はここまでとアナウンスがされる。
 彼女の周囲を守る騎士たちは、ライゼン王子直属の騎士であり、今回の事情にも精通している。
 
「聖女様もお疲れのようだな」
「ああ、昨日もこのくらいの時間に終わったし、本当に疲れていらっしゃるのだろう」
「仕方ないことではあるが……せっかく足を運んだのに」
「よせ、聞こえるぞ」

 諦めて大聖堂を後にする人々の口から、かすかに不満が漏れ始めていた。
 その声はマリィの耳にも届いている。
 
「……」
「聖女様」
「わかっています。部屋に戻りますので、後のことはお願いできますか?」
「かしこまりました」

 マリィは大聖堂の裏手から、隠れるようにしてノーマン家へと向かう。
 その足取りは重く、彼女は唇をかみしめる。

「……なんなのよ。私じゃ不足だっていうの?」

 人々から向けられる不満に対して、彼女は怒りで返す。
 確かに彼女は努力していた。
 だが、努力の方向性を間違えたことに、未だ気づいていない。
 彼女が今いる場所は、本来イリアスの居場所である。
 それを奪い、人々を、神を欺いた代償が、徐々に彼女の身に天罰として降り注ぐ。
 最初は小さな綻びだった。

 それから間もなく――

「……あれは、僕が作った魔導具じゃ……」

 一人の天才が、スパーク王国を去ることに繋がる。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
【作者からのお知らせ】

アルファポリス版はこちらで完結となります。
小説家になろうにて、以降のお話は投稿中です。
もしよろしければ、なろう版も読んでみてくださいね!!

PC版の方は下にリンクが、それ以外の方はお手数ですが、あらすじ欄のURLをコピーしてお使いくださいませ。

今後とも本作をよろしくお願いします!
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みんなの感想(12件)

ろっく
2023.10.29 ろっく
ネタバレ含む
解除
こいぬ
2023.10.28 こいぬ
ネタバレ含む
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长纱
2023.10.26 长纱
ネタバレ含む
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