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12.意外なお仕事?
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「概念魔法は世界の法則を書き換えることが出来る。例えば生物が眠るという概念を消失させて、この世から睡眠を消し去ったり。種族そのものをなかったことにしたり。なんでもありな力……って伝わってるんだけど、合ってるかしら?」
姫様は私に確認を求めてくる。
彼女も実際に知っているわけではないようだ。
私は頷き肯定する。
「その認識で合っています」
「そう。なら概念魔法の力ならこういうこともできるわよね? 魔女と言う存在は悪ではない、という共通認識を世界に植え付けるとか」
「可能、だと思います。できたとしても、概念魔法を使うなんて無理です」
私はキッパリと言い切る。
彼女が概念魔法を実際に知っているわけじゃないと思った理由。
それは、魔女である私ですら、概念魔法については効果くらいしか知らないから。
発動方法やリスク、魔法の行使には条件が存在する。
その一つでも足りなければ正常に発動しない。
最低限、魔法式は知っておかなければ話にならないのだ。
私はそれすら知らない。
いや、私だけじゃないはずだ。
二千年前にこの国を作った偉大な魔女ですら、おそらく知らないだろう。
「概念魔法はもっとも古い時代の魔法です。その起源は一万年を超えると言われています。いかに長命な魔女でも、実際を知る者はいません。なにせ禁忌にさえなっていましたから、正しく伝わってすらいないでしょう」
「もちろん知っているわ。私たちも概念魔法について調べたもの」
「それなら――」
「ええ。使い方はわからなかった。だけど、使い方を知っている存在は突き止めたの」
「知っている存在?」
そんな人がいるのかと、心の中で声に出して驚く。
一体誰だろう?
この国に隠れ潜んでいるという他の魔女?
それとも全く別の誰か?
考えても浮かばない。
魔女でも一万年以上は生きられないし、人間はもっと短命だ。
わからなかった私は、彼女の言葉を待つことにした。
「その存在は特別よ。ある意味では、魔女たちよりも……この国にとってなくてはならない存在でもあるわ」
彼女は勿体ぶるように、長々と前置きを語る。
早く答えが知りたい私は、姿勢がどんどん前のめりに鳴っていった。
そんな私を見て、隣でアレクがクスリと笑う。
子供みたいだと思われたのだろうか?
気になったけど、今はそれよりも彼女の言葉が聞きたかった。
そして、ようやく彼女は口に出す。
「世界に四体しかいない最高位の存在にして、その一柱――その名は『赤』! レッドドラゴン」
「ド……ドラゴン!?」
思わず声に出てしまうほどの驚き、衝撃が全身を襲う。
思ってもみなかった答えだ。
いや、考えることすらなかっただろう。
ドラゴンなんて言葉が出てくるなんて……いや、確かに的を射ている。
種族の最上位に位置する存在、ドラゴン。
赤、青、黒、白の四体しかいないとされる最強の存在。
彼らは永遠に近い寿命を有している。
一万年前の禁忌、概念魔法について知っていても不思議じゃない。
「姫様はドラゴンがどこにいるのか知っているのですか?」
「ええ」
「ほ、本当に?」
「知っているわ。他の三体のことはわからないけど、レッドドラゴンの居場所なら知っている。なぜならレッドドラゴンこそ、この国の誕生に関わったもう一人だから」
そうか。
この国の始まりは、ドラゴンと魔女の出会いだったと聞く。
魔女は二千年前、この地で赤きドラゴンと出会ったんだ。
「私たち王族にはね? 先祖様が残したという日誌を代々受け継いでいるの。そこにはこう記されているわ。『私は我が友と共に眠る。この地で、先の世の繁栄を願いながら』」
我が友……はドラゴンのことか。
この地で?
どこを指して……
「王都?」
「ええ、私もそう思って探したのよ。この王都中を駆け回って何かないかって」
「まさか、見つけたんですか? その何かを」
「そうよ! こういうのを灯台下暗しっていうのね! ドラゴンが眠る場所はこの城の下! 地下には大迷宮が広がっていたの!」
姫様は真下を指さし、勝ち誇ったような堂々たる態度で言い放った。
地下の大迷宮、すなわちダンジョンがこの場所に?
「本当なんですね? 大迷宮なんて」
普通じゃない。
五百年生きた私でも、ダンジョンなんて出会ったことがない。
ドラゴンと同じく古に伝わる巨大施設ダンジョン。
偉大な者たちがその偉業と成果を隠し残すため、時間と力を使い果たし生み出した宝物庫。
古代の遺産がこの城の地下に……
「私たちが二人に望むのは、地下迷宮を攻略して、奥に眠るレッドドラゴンを目覚めさせることよ! 危険なお仕事だけど引き受けて……って確認するまでもなさそうね」
噂によれば、魔法に関する知識や道具も隠されているとさえ言われてる。
私ですら知らない魔法の知識が眠っているかも。
そうなら見たい。
ぜひ見て学びたい。
「アレクシス、貴方の先生はわかりやすいわね」
「はい。でも、そこも先生の素敵な所ですよ」
呆れる姫様と、微笑ましく見つめるアレク。
二人の視線に気づいたのは、興奮が落ち着いた後だった。
この時の私はドラゴンとは関係なく、ダンジョンへの期待に胸を膨らませていた。
姫様は私に確認を求めてくる。
彼女も実際に知っているわけではないようだ。
私は頷き肯定する。
「その認識で合っています」
「そう。なら概念魔法の力ならこういうこともできるわよね? 魔女と言う存在は悪ではない、という共通認識を世界に植え付けるとか」
「可能、だと思います。できたとしても、概念魔法を使うなんて無理です」
私はキッパリと言い切る。
彼女が概念魔法を実際に知っているわけじゃないと思った理由。
それは、魔女である私ですら、概念魔法については効果くらいしか知らないから。
発動方法やリスク、魔法の行使には条件が存在する。
その一つでも足りなければ正常に発動しない。
最低限、魔法式は知っておかなければ話にならないのだ。
私はそれすら知らない。
いや、私だけじゃないはずだ。
二千年前にこの国を作った偉大な魔女ですら、おそらく知らないだろう。
「概念魔法はもっとも古い時代の魔法です。その起源は一万年を超えると言われています。いかに長命な魔女でも、実際を知る者はいません。なにせ禁忌にさえなっていましたから、正しく伝わってすらいないでしょう」
「もちろん知っているわ。私たちも概念魔法について調べたもの」
「それなら――」
「ええ。使い方はわからなかった。だけど、使い方を知っている存在は突き止めたの」
「知っている存在?」
そんな人がいるのかと、心の中で声に出して驚く。
一体誰だろう?
この国に隠れ潜んでいるという他の魔女?
それとも全く別の誰か?
考えても浮かばない。
魔女でも一万年以上は生きられないし、人間はもっと短命だ。
わからなかった私は、彼女の言葉を待つことにした。
「その存在は特別よ。ある意味では、魔女たちよりも……この国にとってなくてはならない存在でもあるわ」
彼女は勿体ぶるように、長々と前置きを語る。
早く答えが知りたい私は、姿勢がどんどん前のめりに鳴っていった。
そんな私を見て、隣でアレクがクスリと笑う。
子供みたいだと思われたのだろうか?
気になったけど、今はそれよりも彼女の言葉が聞きたかった。
そして、ようやく彼女は口に出す。
「世界に四体しかいない最高位の存在にして、その一柱――その名は『赤』! レッドドラゴン」
「ド……ドラゴン!?」
思わず声に出てしまうほどの驚き、衝撃が全身を襲う。
思ってもみなかった答えだ。
いや、考えることすらなかっただろう。
ドラゴンなんて言葉が出てくるなんて……いや、確かに的を射ている。
種族の最上位に位置する存在、ドラゴン。
赤、青、黒、白の四体しかいないとされる最強の存在。
彼らは永遠に近い寿命を有している。
一万年前の禁忌、概念魔法について知っていても不思議じゃない。
「姫様はドラゴンがどこにいるのか知っているのですか?」
「ええ」
「ほ、本当に?」
「知っているわ。他の三体のことはわからないけど、レッドドラゴンの居場所なら知っている。なぜならレッドドラゴンこそ、この国の誕生に関わったもう一人だから」
そうか。
この国の始まりは、ドラゴンと魔女の出会いだったと聞く。
魔女は二千年前、この地で赤きドラゴンと出会ったんだ。
「私たち王族にはね? 先祖様が残したという日誌を代々受け継いでいるの。そこにはこう記されているわ。『私は我が友と共に眠る。この地で、先の世の繁栄を願いながら』」
我が友……はドラゴンのことか。
この地で?
どこを指して……
「王都?」
「ええ、私もそう思って探したのよ。この王都中を駆け回って何かないかって」
「まさか、見つけたんですか? その何かを」
「そうよ! こういうのを灯台下暗しっていうのね! ドラゴンが眠る場所はこの城の下! 地下には大迷宮が広がっていたの!」
姫様は真下を指さし、勝ち誇ったような堂々たる態度で言い放った。
地下の大迷宮、すなわちダンジョンがこの場所に?
「本当なんですね? 大迷宮なんて」
普通じゃない。
五百年生きた私でも、ダンジョンなんて出会ったことがない。
ドラゴンと同じく古に伝わる巨大施設ダンジョン。
偉大な者たちがその偉業と成果を隠し残すため、時間と力を使い果たし生み出した宝物庫。
古代の遺産がこの城の地下に……
「私たちが二人に望むのは、地下迷宮を攻略して、奥に眠るレッドドラゴンを目覚めさせることよ! 危険なお仕事だけど引き受けて……って確認するまでもなさそうね」
噂によれば、魔法に関する知識や道具も隠されているとさえ言われてる。
私ですら知らない魔法の知識が眠っているかも。
そうなら見たい。
ぜひ見て学びたい。
「アレクシス、貴方の先生はわかりやすいわね」
「はい。でも、そこも先生の素敵な所ですよ」
呆れる姫様と、微笑ましく見つめるアレク。
二人の視線に気づいたのは、興奮が落ち着いた後だった。
この時の私はドラゴンとは関係なく、ダンジョンへの期待に胸を膨らませていた。
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