ワールドコントラクター ~辺境育ちの転生者、精霊使いの王となる~

日之影ソラ

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第一章 世界の精霊『  』

4.精霊使いの素質

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「はぁ……はぁ……もう無理」
「だらしないわね」

 素振り一万回に湖の周り十周。
 さらに筋トレメニューを休憩もなしでやられたら、誰でもこうなるでしょ。
 むしろ最後まで倒れなかったことを褒めてほしい。

「ふぅ、休憩」
「仕方ないわね」

 俺が湖の辺で座り込むと、その隣にリルが座った。
 吹き抜ける風が心地いい。
 汗もたくさんかいたし、風がより冷たく感じられる。

「これで少しは強くなれたかな?」
「どうかしら? まだまだじゃないの?」
「うっ、手厳しいなリルは」

 俺は大きくため息をこぼす。

「はぁ……俺にもリルみたいな精霊使いの素質があれば……」

 こんな方法じゃなくて、堂々とリルと一緒に戦えるのに。
 精霊使いは誰にでもなれるほどお手軽じゃない。
 素質があってスタートライン。
 そこから相性の良い精霊と出会えるかは運だ。
 帝国に精霊を呼び出す装置があるって聞いたけど、こんな田舎にそんな便利なものがあるはずもない。
 考えるだけ無駄だとわかっているから、余計に虚しい。

 すると、ドカドカが口を開く。

「う~ん、エル坊に素質はあると思うんだけどな~」
「本当?」
「おう。だってエル坊、お嬢との契約前から俺のこと見えてただろ? ってことはよぉ~ 精霊と契約できるだけの霊力は持ってるってことじゃねーか」

 普通の人間に精霊を見ることはできない。
 人間の内にある霊力。
 それの力が一定以上ないと、精霊を知覚することは出来ない。
 ドカドカのように契約した精霊は周囲にも見えるようになるが、それ以外の自然にいる精霊は見えない。
 本来精霊はどこにでもいるけど、見えないからいないように感じる。
 精霊を知覚するだけ霊力を保持していることこそ、精霊使いになる最低条件だ。
 ドカドカの言う通り、俺にはそれがあるらしい。

「でもな~ 前々から思ってたんだが、エル坊って変なんだよ」
「え、変?」
「変態ってことかしら」
「違うと思うよ! リル」
 
 違うよね?
 変態的なことなんてした記憶ないんだけど……

「エル坊さ~ 何かもう他の精霊と契約してたりしないか?」
「え?」
「どういうことよ」
「いやな? エル坊って俺が見た時点で、相当な霊力は持ってるはずなんだよ。それなのに~」

 ドカドカはリルの方から浮かび上がり、俺の周りをぐるっと飛び回る。
 
「こんなに近くで見てるのに、ほとんど感じねーんだよな」
「そ、そうなの?」
「おう。何なら精霊が見えない奴のほうがまだ感じ取れるってレベルだぜ」

 そ、それは……話だけ聞くとショックだな。

「でもそれがどうして、さっきの質問につながるんだ?」
「そいつはな~ 精霊使いの霊力は、契約した精霊の属性に寄るからだよ」
「属性に寄る? どういう意味?」
「う~ん、簡単に言うとな? 例えば炎の精霊と契約したとする。すると契約した奴の霊力は、炎みたいに熱く感じるんだよ」
「そうなの?」

 精霊と精霊使いについては本で調べたけど、そんなことは書かれていなかった。
 村にあった古い本だし、その辺りの情報がなかったかもしれない。
 真実を知って少しワクワクしている。

「ん? ってことはリルの霊力もドカドカに似てるってこと?」
「おう! そうなるな」
「ドカドカって大地の精霊だよね? じゃあリルの霊力は今、土とか石に近いってこと?」
「そういうこったな」

 隣から怒りを感じてビクッと身震いする俺とドカドカ。
 恐る恐る視線を向けると、リルはとても怒っている様子だった。

「ちょっと、誰が土と一緒ですって?」
「な、何でもないです」
「お嬢大丈夫だ! 土にまみれてんのは俺だけだからな」

 目が怖いです、目が。

「で、結局何で俺が他の精霊とって話になったの?」
「だからな。お前の霊力が感知できないのも、俺が知らねー精霊と契約済みなのかなって思ったんだよ」
「ああ、なるほど。でも生憎、そんな相手の心当たりは――」

 ふと、一人の少女を思い出す。
 この世界に生まれる直前に会話した彼女を。

「もしかしてあの子が?」
「んお? 何だよ心当たりあんのか?」
「いや心当たりって言うか……夢でさ、よく不思議な女の子と会うんだ」

 実はあれ以来、何度か彼女と夢の中で会っている。
 場所は同じ一本木の下。
 色々と話しているはずなのに、目が覚めると話の内容は大抵忘れてしまう。
 楽しい時間だったという感覚だけは覚えているけどね。

「へぇ~ 不思議な女の子ね~ どんな奴なんだ?」
「どんなって言われてもなぁ。歳はたぶん十二、三くらいで、髪はリルと同じくらいかな。あとは普通の人と雰囲気が違って……あっ! それにすごくかわいいんだよ」
「うっ」

 ドカドカが慌てた様子を見せる。

「おい馬鹿! 下手なこと言うんじゃねえよ!」
「まだ名前も知らないんだけど」
「くっそ、小声すぎて聞こえてねえ!」

 ドカドカの焦りの方向は、リルに向いていた。
 俺はそれに気づかないまま、彼女について話し続ける。
 
「そういえばあの子、雰囲気は違うけど、リルに似てたな」
「……え?」
「お? そいつはつまり、お嬢が可愛――ぐっ!」
「潰すわよ」
「だからもう潰れてるってお嬢!」
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