ワールドコントラクター ~辺境育ちの転生者、精霊使いの王となる~

日之影ソラ

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第一章 世界の精霊『  』

3.穢れ

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 村中に響き渡る鐘の音。
 綺麗な音だが、祝福の金ではなく、警告の音だ。
 村に迫る脅威を知らせている。
 村人に、そして……その脅威を退けられる力を持つ者に。

「いくわよ、ドカドカ」
「あいよ!」

 リルの後を俺も追う。
 鐘の音とは別に、荒々しい音が聞こえてきた。
 ルート村は森に囲まれていて、様々生き物が暮らしている。
 イノシシを超える動物も当然いるが、これだけ大きな音をまき散らすような生き物はいない。
 そう、穢れは生き物ではない。

「お嬢!」
「ええ、いたわね」

 それは木々をなぎ倒し、地面にひびを入れている。
 姿形は大きなクマだ。
 しかしクマではないことは、纏っているどす黒いオーラを見れば明白。
 目は血走ったように赤く、凶暴性はクマと比較にならない。
 
「来るわ!」
「リル!」
「エルは下がってて! あなたじゃ穢れは祓えないんだから!」
「っ……わかった」

 リルは穢れに向っていく。
 あの恐ろしい穢れが何なのか、どこで生まれたのかはわかっていない。
 ただハッキリしているのは、穢れが人類を害なす存在であるということ。
 姿形は動物や昆虫、時には人の形にすら見せることもあるが、穢れは生物ではない。
 よくない力の塊とでもいうべきだろうか。
 そして、穢れを祓うことが出来るのは、精霊使いだけだ。

「ドカドカ!」
「任せとけお嬢!」

 リルが地面を強く踏みしめると、クマの穢れの地面が盛り上がり、岩の柱が伸びて吹き飛ばす。
 イノシシの時と同じだ。
 大地の精霊と契約したリルは、周囲の地形を操って戦うことが出来る。
 続けて左右の地面から棘のような岩が伸び、クマの穢れの両腹を突きさす。

「グオオオオオオオオオオオオオオ」

 悲鳴をあげる穢れの頭上に、リルは移動していた。

「終わりね」

 最後は思いっきり頭を踏んで、クマの穢れは倒れる。
 倒れた穢れは黒い霧状になって消えていった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「今日も助かったよ、リルカ。怪我はなかったか?」
「大丈夫。全然余裕だったから」
「はははっ、頼もしいな」

 豪快に笑うのはドレガさん。
 その隣に座っているのは妻のミシェルさん。
 二人は変わらず優しくて仲の良い夫婦だ。

「エル君もありがとう。リルカと一緒にいてくれて」
「いや俺は一緒にいただけで、何もしてませんから」
「本当に何もしてなかったわね」
「うっ……」

 自分で言っておいてあれだけど、改めて言われるとやっぱり傷つくな。

「まぁいいじゃないか! 村も二人も無事でよかった」
「そうね。さぁ食べましょう」

 夕食にはさっき狩ったイノシシ肉の料理が並んでいる。
 肉厚でとても美味しそうだ。

「いただきます」

 四人で食卓を囲む風景も見慣れてきた。
 十年以上経っても、この時間の穏やかさは変わらない。
 やっぱりこの家は居心地がいい。
 でも……

 俺はリルを見つめながら思う。
 彼女は精霊使いになった。
 その力で何度も村を救っているし、俺も助けられている。
 対して俺は……何もできていない。
 何だか自分だけが取り残されている気分で……歯がゆかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 村の外れには湖がある。
 動物たちが水のみに訪れる様子が見えて、とてものどかな場所だ。
 そこで棒を振り回すのは、少し無粋かもしれない。

「よし! これで素振り千回終わりっ!」
「やっぱりここにいたのね」
「ようエル坊! 今日も精が出るな!」
「リル、ドカドカも」

 素振りを終えたところで、ちょうど二人がやってきた。
 リルは呆れ顔で、ドカドカは彼女の右からの上をふわふわ浮かんでいる。

「また特訓?」
「ああ。日課だからね」
「はぁ、そんなに毎日続けて飽きないの?」
「飽きるとかじゃないからな~ 強くなるためには、ちゃんと身体を鍛えないと」
「ふぅ~ん」

 素振り二セット目を開始した俺を、リルはじっと見つめる。
 
「ねぇエル、別にあなたが頑張らなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「だってそうでしょ? 穢れもイノシシ狩りも、私がいれば何とかなるわ。エルが身体を鍛えなくたって平気だと思うけど」
「それはまぁ……そうだけど。リルだけ危険な目に合って、俺だけ安全な場所から見ているなんて出来ないよ」
「心配いらないわよ。私、強いから」

 リルは堂々と答えた。
 確かにリルは強い。
 彼女が苦戦しているところなんて見たことがない。
 助けなんて不要と言われれば、そうなのだと思う。

「……でも駄目だ。やっぱり何も出来ないなんて嫌だよ。リルが強いことも、俺が弱いことも知っている。だけどそれは、何もしなくて良い理由にはならないから」
「エル……」

 大切な幼馴染が傷つくのは見たくない。
 あとはそう……ただの意地だ。

「それにほら! 体力と頑丈さが俺の取り柄だからさ。そこを磨いておいても損はないと思うんだよ」
「……そんなだから心配なのよ」
「え、何か言った?」
「何でもないわ。ほら、素振りの手が止まってるわよ? 罰として千回追加ね」
「えっ……」
「もう千回足して――」
「やります!」

 なぜかリルに指導されながら、俺は特訓を続けていた。
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